- 本の紹介
- 建物の一部除却は、既に導入済の企業もあるが、理論研究の日は浅く、未導入企業が遙かに多い。本書は、減価償却を補完するため、一部除却が欠かせないことを理論的に導く。
目次
建物の一部除却会計論
目次
はじめに
謝 辞
図表
1 建物償却の問題点
1.1 一部除却理論構築の必要性
1.1.1 建物における減価償却の限界と除却理論の現状
1.1.2 減価償却の理論性を確保するための
一部除却理論の必要性
1.1.3 内部統制における一部除却理論の必要性
1.2 建物の大規模修繕工事時の会計処理の問題点
1.2.1 現在の建物の会計処理
1.2.2 大規模修繕工事における架空資産の発生メカニズム
1.2.3 有形固定資産台帳の役割とその限界
1.3 逆基準性としての減価償却の歴史とペイトン教授の除却法
1.3.1 建物の償却における逆基準性としての減価償却の歴史
1.3.2 ペイトン教授と番場教授の除却法
1.3.2 ペイトン教授と番場教授の除却法
2 償却理論としての一部除却の意義
2.1 財産法から考える一部除却の意義
2.1.1 静態論に基づく建物大規模修繕工事の考え方
2.1.2 財産変動の結果と原因の対照から見る建物の会計処理
2.1.3 減価償却の補完としての一部除却の意義
2.2 会計理論から考察する一部除却の償却理論
2.2.1 減損会計・資産除去債務・その他の償却等との相違点
2.2.2 建物における会計学の「測定」の誤り
2.2.3 減価償却の見積耐用年数を是正するための一部除却の
意義 ……ほか
3 建物の物量計算と実務としての一部除却の考え方
3.1 工事内訳書の基になる建物の構成要素の考え方
3.1.1 建物の構成要素としての部位別分類の考え方
3.1.2 工種別内訳書と部分別内訳書の建物の構成要素の考え方
3.1.3 改修内訳書標準書式における撤去科目の重要性
3.2 建物における物量計算の根拠
3.2.1 工事内訳書から見た建物の物量計算
3.2.2 改修工事の場合における物量計算
3.2.3 撤去項目と一部除却の対象資産の把握
4 建物の架空資産が及ぼす経営指標等の分析手順
4.1 大規模修繕工事における工事金額と撤去費の比率の考察
4.1.1 大規模修繕工事の工事金額
4.1.2 大規模修繕工事における撤去費の比率
4.2 全産業から見る建物の架空資産が及ぼす経営指標と
受託責任の問題点
4.2.1 モデルの概要
4.2.2 主たる経営指標から見る大規模修繕時の架空資産
4.2.3 建物に架空資産が発生する際の受託責任の問題点
5 業種別から見る建物の架空資産が及ぼす経営指標と
受託責任の問題点
5.1 製造業における建物の架空資産が及ぼす経営指標と
受託責任の問題点
5.1.1 モデルの概要
5.1.2 主たる経営指標から見る大規模修繕時の架空資産
5.1.3 建物に架空資産が発生する際の受託責任の問題点
5.2 生命保険業における建物の架空資産が及ぼす経営指標と
受託責任の問題点
5.2.1 モデルの概要
5.2.2 主たる経営指標から見る大規模修繕時の架空資産
5.2.3 建物に架空資産が発生する際の受託責任の問題点
5.3 宿泊業における建物の架空資産が及ぼす経営指標と
受託責任の問題点
5.3.1 モデルの概要
5.3.2 主たる経営指標から見る大規模修繕時の架空資産
5.3.3 建物に架空資産が発生する際の受託責任の問題点
結 論
参考文献
著者プロフィール
土屋 清人(つちや きよと)
税理士,博士(政策研究),租税訴訟学会 理事,危機管理システム研究学会 常任理事。
東京都出身。駒澤大学大学院商学研究科修了,コンサルティング会社・税理士法人を経て,現在,土屋税理士事務所 所長(東京税理士会 目黒支部),建物タックス・コンサルティング㈱代表取締役。産能短期大学で非常勤講師などを歴任。
著書:
『地震リスク対策 建物の耐震改修・除却法』(共著)中央経済社,
『建築士・会計士・税理士の災害FAQ』(共著)中央経済社,
「企業会計」「税務弘報」「税理」などに論文多数。
[受賞著作]
•(財) 日本ファシリティ-マネジメント協会,功績賞
『建築士・会計士・税理士の災害FAQ』(共著)中央経済社
•(社) 日本経営管理協会,協会賞「建物の架空資産と工事内訳書との関連性」(単著)
- 担当編集者コメント
- 一部除却という概念が、建物の償却理論から抜け落ちているとしたら、それは一大事とばかりに、本企画に飛びつきました。
果たして・・・。著者の思いの強さが本を作る最大の原動力なることを実感した1冊です。
- 著者から
- 建物の一部除却は、既に一部の大手ゼネコンがエクセレントカンパニーに導入している会計処理である。それにもかかわらず、一部除却は会計学の教科書はもとより専門書でも深く研究されてこなかった領域である。
深く研究されてこなかった理由は、建物一部除却は建物工事内訳書を分解して会計処理するものであるが、この建物工事内訳書は、会計・税務の実行を行わないと決して出会うことのない代物であるため、学術研究の世界では問題視されてこなかったのではなかろうか。ましてや、建物工事内訳書は工学部建築学科でも授業科目として存在しないため、なおさら会計学でも研究対象にすることは難しかったのではなかろうか。その結果、会計学では一部除却は重要視されてこなかったといえる。