継続企業監査論―ゴーイング・コンサーン問題の研究

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林 隆敏

定価(紙 版):3,960円(税込)

発行日:2005/04/11
A5判 / 306頁
ISBN:978-4-502-25110-8

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本の紹介
継続企業を前提に無限定監査意見が表明された会社であっても、破綻の可能性はある。企業存続の不確実性をめぐる期待ギャップについて史的・理論的に、また制度分析により考察。

目次


継続企業監査論
―ゴーイング・コンサーン問題の研究
目次

第1章 ゴーイング・コンサーン問題の史的考察⑴
     ―ゴーイング・コンサーン問題の胎動―

 第1節 史的考察の目的

 第2節 未確定事項に関する監査報告基準の整備
  1. 未確定事項の識別
  2. 監査報告基準の整備
  3. 偶発事象の会計

 第3節ゴーイング・コンサーン問題の胎動
  1. ゴーイング・コンサーン問題の識別
  2. 理論研究の始まり
  3. 監査基準への登場
  4. リスク・不確実性に関する開示要求
  5. 研究の動向

 第4節期待ギャップの顕在化とコーエン委員会報告書
  1. 企業倒産,訴訟と期待ギャップ
  2. コーエン委員会報告書
  3. 偶発事象会計の見直し

第2章 ゴーイング・コンサーン問題の史的考察⑵
     ―条件付限定意見論争と早期警告システムの導入―

 第1節 条件付限定意見論争
  1. SAS 第34号の公表
  2. 条件付限定意見への期待

 第2節 期待ギャップ問題の再燃と議会の介入
  1. 期待ギャップ問題の再燃
  2. ディンゲル委員会による公聴会の開催
  3. リスク・不確実性情報の開示強化
  4. 研究の動向

 第3節 早期警告システムの導入と整備
  1. SAS 第59号の公表
  2. 関連規定の整備
  3. 新たな方向の模索
  4. 研究の動向

 第4節史的考察からの示唆

第3章 未確定事項の監査問題―カーマイケルの研究―
 第1節 カーマイケル研究の意義

 第2節 未確定事項の性質と評価
  1. 異常な未確定事項の性質
  2. 未確定事項の評価
  3. 条件付限定意見廃止の提言

 第3節 波及的未確定事項
  1. ゴーイング・コンサーン問題への監査人の対応
  2. 継続企業の前提に対する反証と緩和要因
  3. 監査報告要件
  4. 意見差控に関する考察

 第4節 未確定事項に対する監査人の役割
  1. 情報リスクとビジネス・リスクの峻別―監査人の役割―
  2. 条件付限定意見に対する批判

 第5節 結び

第4章 未確定事項の本質とゴーイング・コンサーン問題
 第1節 問題意識

 第2節 未確定事項の概念
  1. アメリカの監査基準における概念規定の変遷
  2. 未確定事項の本質

 第3節リスク・不確実性の源泉
  1. 会計上の見積り
  2. 偶発事象
  3. ゴーイング・コンサーン問題
  4. その他のリスク・不確実性―SOP94-6―

 第4節情報の信頼性とゴーイング・コンサーン問題

第5章 企業存続能力に関するリスク情報の開示と監査
 第1節 研究の視点

 第2節 リスクおよびリスク情報の概念
  1. 倒産リスクの概念
  2. GC リスクと個別リスク
  3. GC リスク情報の内容

 第3節 GC リスクの評価主体
  1. 継続企業の前提の成立判断
  2. GC リスクの評価主体

 第4節 開示と監査の概念的枠組み
  1. GC リスク非対応主義
  2. GC リスク開示主義
  3. GC リスク評価主義

 第5節 結び

第6章 企業存続能力に関する経営者の主張と監査目的
 第1節 問題意識

 第2節 経営者の主張と監査目的
  1. 経営者の主張
  2. 監査目的
  3. 適正性命題の細分化

 第3節 企業存続能力に関する経営者の主張
  1. GC リスク非対応主義
  2. GC リスク開示主義
  3. GC リスク評価主義

 第4節 企業存続能力に関する監査目的
  1. GC 前提成立判断に関する監査目的
  2. GC リスク評価に関する監査目的
  3. GC リスク情報の開示に関する監査目的

 第5節 今後の課題

第7章 継続企業の前提の妥当性―ボリッツの研究―
 第1節 研究の背景

 第2節 企業倒産プロセスと継続企業の前提の妥当性

 第3節 会計基準に対する提言
  1. 不確実性の認識基準
  2. 開示の時期
  3. 開示場所と開示内容

 第4節 監査基準に対する提言
  1. 監査の性質および範囲
  2. 報告責任

 第5節『1991年報告書』の特徴と最近の動向

第8章 アメリカにおけるゴーイング・コンサーン問題への
      制度対応

 第1節 はじめに

 第2節 経営者および監査人の役割
  1. 経営者の役割
  2. 監査人の役割

 第3節 継続企業としての存続能力の評価
  1. 評価方法
  2. 監査手続
  3. 評価要因

 第4節 監査報告

 第5節 G C リスク評価主義の特徴

第9章 アメリカにおけるゴーイング・コンサーン問題の実態分析
 第1節 分析の目的と対象

 第2節 G C 説明区分記載会社の分析
  1. GC 説明区分の記載状況
  2. 株式上場取引所
  3. 設立後経過年数

 第3節 G C 説明区分の分析

 第4節 財務諸表注記の分析
  1. 注記の記載場所
  2. 注記内容
  3. 重大な疑念をもたらす状態・事象の記載状況
  4. 重大な疑念が解消された場合の開示
  5. 注記以外での開示

 第5節 注記開示および監査報告の特徴的な事例
  1. 典型的な財務諸表注記およびGC 説明区分
  2. 積極的開示
  3. 曖昧な説明区分
  4. 監査意見を表明しない場合
  5. 会社更生後のフレッシュ・スタート・リポーティング
  6. 会社清算の決定と清算基準での財務諸表の作成
  7. 情報開示の回避とSEC による提訴

 第6節 分析から得られた示唆

第10章 わが国におけるゴーイング・コンサーン問題への
      制度対応

 第1節 はじめに

 第2節 歴史的経緯

 第3節 経営者および監査人の役割

 第4節 継続企業の前提にかかわる評価と開示
  1. 継続企業の前提の評価
  2. 重要な疑義を抱かせる事象・状況の識別
  3. 経営計画等の策定と検討
  4. 継続企業の前提の適切性判断
  5. 注記開示

 第5節 継続企業の前提にかかわる監査実施

 第6節 継続企業の前提にかかわる監査報告
  1. 継続企業の前提の適切性判断
  2. 無限定適正意見
  3. 開示限定・不適正
  4. 監査範囲の制約
  5. 経営者確認書
  6. 未確定事項

 第7節 G C リスク開示主義の特徴

第11章 ゴーイング・コンサーン問題に関する特記事項の
      実態分析

 第1節 分析の目的と対象
 第2節 事業の継続性
 第3節 実質的な経営破綻
 第4節 財政状態・経営成績への重要な影響
 第5節 経営計画
 第6節 金融機関等の支援
 第7節 分析から得られた示唆

第12章 継続企業の前提に関する注記および追記情報の
      実態分析

 第1節 分析の目的と対象

 第2節 継続企業の前提に関する注記の分析
  1. 重要な疑義を抱かせる事象・状況
  2. 記載事例

 第3節 追記情報の分析
  1. 経営者の言明と監査人の言明
  2. 意見差控の事例

 第4節 前中間決算における特記事項との関係

 第5節 分析から得られた示唆

  <英語参考文献>

  <日本語参考文献>

  索引


著者プロフィール 林隆敏(はやしたかとし)
1966年10月愛媛県生まれ
1989年3月関西学院大学商学部卒業
1991年3月関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了
1994年3月関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課程単位
        取得満期退学
1994年4月甲子園大学経営情報学部専任講師
1999年4月関西学院大学商学部助教授現在に至る

【主要業績】
『ベーシック監査論』伊豫田隆俊・松本祥尚・林隆敏共著,同文舘,2004年
『監査論の基礎知識(四訂版)』石田三郎編著,東京経済情報出版,2003年
『監査のコスト・パフォーマンス―日米欧国際比較―』加藤恭彦編著,同文舘出版,2003年
『監査問題と特記事項』盛田良久編著,中央経済社,2002年
『ゴーイング・コンサーン情報の開示と監査』八田進二編著,中央経済社,2001年

























著者紹介

林 隆敏(はやし たかとし)
[プロフィール]
関西学院大学商学部教授
1989年関西学院大学商学部卒業,1994年関西学院大学大学院商学研究科単位取得満期退学。
同年甲子園大学経営情報学部専任講師,1999年関西学院大学商学部助教授,2005年4月より現職。博士(商学)。
現在,日本監査研究学会理事,国際会計研究学会理事,日本経済会計学会理事,金融庁企業会計審議会委員。

[主な著作]
『継続企業監査論』中央経済社,2005年
『国際監査基準の完全解説』(共編著)中央経済社,2010年
『わが国監査報酬の実態と課題』(共著)日本公認会計協会出版局,2012年
「監査報告の変革―欧州企業のKAM事例分析―」(編著)中央経済社,2019年
『ベーシック監査論(9訂版)』(共著)同文舘出版,2022年