資本制度の会計問題―商法・会社法に関連して
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- 大正期と戦後の創業者利得論争から自己株式の取得・保有を緩和した近年の商法改正、さらに会社法の資本制度まで、多数の文献研究により資本制度の変遷と会計問題について論究。
目次
資本制度の会計問題
―商法・会社法に関連して
目次
序 章 研究課題と本書の概要
第?部 株式プレミアムと資本準備金制度の研究
第1章 大正期の株式プレミアム=「利益説」の検討
―プレミアムに対する課税問題に関連して
? プレミアム=「利益説」とその課税に関する難点
? 株式プレミアムの生じる三つのケ−スの検討
─主として東五郎氏の見解を中心として
1.(公示)積立金の存在する設例について
2.秘密積立金を有する場合の設例について
3.特殊の利益金を予想し得る場合の設例について
? 中村継男氏の株式プレミアム=「利益説」
1.中村氏の株式会社観と株式プレミアム=利益説の内容
2.中村氏の見解をめぐる考察
? 東・中村両氏の見解にみられる肯定的側面
第2章 大正期の株式プレミアム=「非利益説」の検討
―下野直太郎・上田貞次郎両教授の見解を中心に
? 株式プレミアムに関する会計学上の性格と課税をめぐる問題
? 株式プレミアム=「預かり金(旧株主の利益)説」
─下野直太郎教授の見解
1.「純資産>資本金」の状態にある企業の増資による
株式プレミアム
2.将来性ある事業で高配当が見込める企業の増資による
株式プレミアム
? 株式プレミアム=「非利益説」
─上田貞次郎教授の見解
1.未公示の評価益が新株発行時に顕現した株式プレミアム
2.プレミアム課税に関する上田教授の批判
? 旧商法上の利益と税法上の課税所得についての相違
第3章 プレミアム課税論争の検討
―昭和初期までの課税肯定論と否定論をめぐって
? 問題の所在
─法人所得計算規定の解釈
? 商法依存のプレミアム課税肯定論
1.渡辺善蔵氏の肯定論の概要
2.商法依存の難点
3.商法依存に対する批判的見解
? プレミアム課税否定論
─その論拠と難点
1.烏賀陽然良教授の見解
2.田尻常雄教授の見解
3.高瀬荘太郎教授の見解
? 当時の商法規定の功罪
─第143条と第194条第2項
第4章 ヒルファディング創業者利得論をめぐって
―主として
『金融資本論』(第2編)第7章「株式会社」の検討
? 創業者利得概念と創業者利得の取得をめぐる問題
? 創業時の資本調達と創業者利得の取得主体
? 利益の内部留保と株式会社観
? 増資時における創業者利得の取得者
? 創業者利得とキャピタルゲインおよび額面超過金の区別
第5章 「株式プレミアム論争」に関する批判的見解
―寺田稔教授の所説を中心に
? 株式プレミアムの性格をめぐる問題と本章の課題
? 拠出資本説と創業利得説
─両説に対する寺田教授の的確な批判
1.拠出資本説とその批判
2.創業利得説とその批判
? 寺田教授の見解に関する検討
1.株式会社の資本と種々な資本概念
2.利益と区別する意味での「資本」の曖昧性
? 株式プレミアム=資本説の否定的側面
─資本準備金規定と株式消却特例法の改正にかかわって
第6章 所要機能資本説の検討
―別府正十郎教授の所説をめぐって
? 問題の所在
─所要機能資本説の意義と限界
? 株式プレミアムと創業者利得に関する別府教授の例示
? 所要機能資本説に関する諸見解
─藤田昌也,生駒道弘両教授の見解を中心に
1.藤田昌也教授の見解124
2.生駒道弘教授の見解128
? 馬場克三教授の機能資本家規定と株式プレミアム観
? まとめにかえて
─機能資本家概念と株式プレミアムに関する整理
第7章 資本会計をめぐる主要問題
―2001(平成13)年商法改正に関連して
? 問題の所在
─会社設立時の株式発行価額規制の廃止と
法定準備金規制の緩和
? 株式会社の資本制度の変遷とその影響
1.戦前の資本金規定
2.1950(昭和25)年と1981(昭和56)年の商法改正による
資本金・法定準備金規定
3.2001(平成13)年商法改正前における論議の概要
? 資本制度に関する2001(平成13)年の商法改正批判
─株式発行価額規制の廃止による配当可能限度額の
不当な増大可能性
1.株式発行価額規制をめぐって
2.配当可能限度額の不当な増大可能性
? 資本準備金取崩のケ−スについて
─欠損填補と資本的損失補填に限定する必要性
第8章 最低資本金制度の撤廃と払込資本の検討
―2005(平成17)年会社法に関連して
? 問題の所在
─最低資本金制度の意図とその否定
? 最低資本金制度の撤廃の功罪
1.撤廃のメリット
2.撤廃の影響
? 会社法上の資本金・準備金に関する規定
1.資本金・準備金の組入れ額─会社法第445条
2.資本金・準備金の増減
3.純資産の区分に関する会計上との相異
? 払込資本と株式発行費用等の問題
1.株式発行費用等の払込資本からの控除
2.株式発行費用等の会計処理
? 資本準備金に関する解釈の曖昧性
第?部 自己株式会計論の研究
第9章 自己株式会計論の検討
―わが国における自己株式取得の規制緩和に係わって
? 問題の所在
─従来の規制に対する自己株式の資本減少説
? 自己株式の取得と自己株式に関する諸説
1.アメリカの自己株式会計論概観
2.わが国における自己株式取引の会計問題
? 規制緩和にともなう自己株式取引の会計処理と表示
─日本公認会計士協会・会計制度委員会報告書第2号
を中心に
1.自己株式取得の例外的許容の緩和
2.使用人譲渡等のための自己株式
3.利益消却のための自己株式
?.自己株式の会計処理と財務諸表上の表示のあり方について
第10章 自己株式に関する商法と会計上の問題
―併せて2001(平成13)年改正商法の
配当可能利益概念の検討
? 自己株式取得規制の変遷と本章の課題
? 自己株式取得の原資
1.アメリカのNY州会社法とわが国の改正商法
2.剰余金(準備金)の区別に関する法律上の見解
? 自己株式取得の会計処理と保有自己株式の資産性軽視
1.自己株式取得の会計処理
2.保有自己株式の資産的側面
? 自己株式の処分差益の吟味
? まとめにかえて
─株式会社の資本制度をめぐって
第11章 「剰余金」概念と自己株式をめぐる問題
―2005(平成17)年の会社法に関連して
? 問題の所在
─資本(純資産)の部の複雑化による新たな分配規制
? 剰余金額と分配可能額の算定方法
1.剰余金額の算定方法
2.配当等の制限と分配可能額の算定方法
3.剰余金分配規制をめぐる諸見解
? 自己株式の資産説と資本減少(控除)説の比較検討
1.自己株式に関する従来の支配的見解と取得規制の変遷
2.自己株式の処理法としての原価法と資本減少説
3.自己株式の資産説の内容
? まとめにかえて
─剰余金概念にみる自己株式の資本減少説の否定
終 章 商法の資本制度の変遷と株式会社観
? 問題の所在
─商法の資本・利益概念の変化と会計主体論争
? 戦前と戦後(1950年)の資本金規定等の変化
─株式プレミアム(額面超過金)の利益から資本へ
1.戦前の商法(1950年改正前商法)
2.1950年の商法改正
? 1981年と1994年の商法改正
─資本金規定の払込価額主義と自己株式取得の規制緩和
1.1981年の商法改正
2.1994年の商法改正
? 2001年の商法改正と2005年の会社法制定
1.2001年の商法改正
2.2005年の会社法
? まとめにかえて
主要参考文献
索 引
著者プロフィール
酒井治郎(さかい じろう)
1976年4月〜1985年3月 立命館大学経営学部助教授
1985年4月〜2001年3月 立命館大学経営学部教授
1994年10月 博士(経営学・立命館大学)
2001年4月 立命館大学名誉教授
2001年4月〜2002年3月 羽衣学園短期大学教授
2002年4月〜現在 羽衣国際大学産業社会学部教授
[主要著書]
『簿記論の基礎』(共著)税務経理協会,1987年
『現代会計の基礎』(分担執筆)法律文化社,1990年
『会計主体と資本会計──会計学基本問題の研究』中央経済社,1992年
『詳説財務諸表論講義(三訂版)』税務経理協会,1998年
『簿記会計学入門講義』税務経理協会,2001年