ERMは進化する―不確実性への挑戦

後藤 茂之

定価(紙 版):3,080円(税込)

発行日:2018/12/21
A5判 / 252頁
ISBN:978-4-502-28931-6

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本の紹介
サイバーやデジタル化などにより経営環境は激変し、経験したことがないほどの不確実性にさらされている。不確実性にどう向き合うべきかを著者の知見をもとに解説した意欲作。

目次



ERMは進化する― 不確実性への挑戦

目次

第1章 ■ ERMの発展と強化の方向性
1 リスク管理発展の流れ
  1.経営管理としてのリスク管理の意義
  2.リスクへの科学的アプローチ
  3.リスク評価モデルの意義
2 戦略的意思決定とリスク管理の関係
  1.リスクと戦略と意思決定
  2.ERMとビジネスモデル
3 ERM強化の方向性
  1.リスクへの挑戦,失敗,規制強化
    ⑴ 環境変化と企業の盛衰
    ⑵ 金融・保険業の規制とERM
    ⑶ パラダイムシフトの意味
  2.金融危機後の規制強化
    ⑴ 規制強化の概要
    ⑵ 監督当局の変化
    ⑶ ERM強化の方向性
  3.中長期の不確実性へのアプローチ
    ⑴ デジタル革命と不確実性
    ⑵ 気候変動と不確実性
  4.中長期的不確実性対応のERM上の意義

第2章 ■ 不確実性へのアプローチとリスク化
1 リスクの変質,不確実性の高まり
  1.ERM強化の方向性
  2.リスクと不確実性の相違
  3.想定外の意味
  4.リスク社会という視点
2 不確実性に対するアプローチ
  1.リスクマネージャーのアプローチ
  2.科学的方法論
3 不確実性下の意思決定
  1.不確実性の度合い
  2.不確実性と動態性
  3.不確実性と意思決定
4 不確実性のリスク化の意味
  1.不確実性の意義
  2.リスクパーセプションとアセスメント
  3.リスク化の意味

第3章 ■ 事例にみる不確実性のインパクト
1 事例検討に先立つ着目点
  1.先行知見の整理
  2.ERMの視点からの分類
2 事例検討と教訓
  1.戦略的意思決定と不確実性
    ⑴ 米国貯蓄金融機関の破綻
    ⑵ エンロンの破綻
    ⑶ 検討後のまとめ
  2.システミック・リスクと不確実性
    ⑴ ベアリングス銀行の破綻
    ⑵ ヘッジファンドLTCMの破綻
    ⑶ 検討後のまとめ
  3.オペレーショナル・リスクと不確実性
    ⑴ JCO臨界事故
    ⑵ 三菱重工長崎造船所大型客船火災事故
    ⑶ チェルノブイリ原子力発電所事故
    ⑷ 検討後のまとめ
    ⑸ リスクカルチャーへの展開
  4.エマージングリスクと不確実性
    ⑴ 自然災害リスクと不確実性
    ⑵ サイバー脅威と不確実性
3 不確実性への対処における留意点

第4章 ■ 不確実性をマネージするためのERM
1 不確実性に向き合うための視点
2 リスクと不確実性の峻別と投資判断基準の設定
  1.リスクと不確実性の峻別
    ⑴ ERMの枠組みの変化
    ⑵ 業務への展開
  2.不確実性への投資基準
    ⑴ リスクアペタイトと不確実性
    ⑵ 不確実性への投資の判断基準
    ⑶ 不確実性の評価
3 バイアス管理の強化
  1.不確実性への対処の枠組み
    ⑴ 不確実性の特定・評価
    ⑵ 不確実性の処理
    ⑶ 不確実性の検証・改善
  2.不確実性のカルチャーの醸成
4 想定外のマネジメントの強化
5 不確実性に対する戦略的思考
6 新技術の応用とERMの進化
  1.新技術の特徴
  2.人工知能(AI)利用の可能性
  3.不確実性に対する合理的対処
    ⑴ 予測の変更
    ⑵ 戦略の変更
    ⑶ 想定外への対応
7 ERMの進化への期待
あとがき
索引




著者プロフィール
後藤 茂之(ごとう しげゆき)
有限責任監査法人トーマツ リスク管理戦略センター ディレクター
これまで,大手損害保険会社及び保険持株会社にて,企画部長,リスク管理部長を歴任。日米保険交渉,合併・経営統合に伴う経営管理体制の構築,海外M&A,保険ERMの構築,グループ内部モデルの高度化,リスクアペタイト・フレームワーク,ORSAプロセス整備に従事。IAIS,Geneva Association,EAICなどのERM関連パネルへの参加。現職にて,ERM経営高度化,ガバナンス強化,規制変化への対応支援などのコンサルに従事。関連セミナー・講演の実施。
大阪大学経済学部卒業,コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所・客員研究員,中央大学大学院総合政策研究科博士課程修了。博士(総合政策)。専修大学大学院客員教授,中央大学大学院非常勤講師

















著者紹介

後藤 茂之(ごとう しげゆき)
[プロフィール]
専修大学大学院客員教授,中央大学大学院非常勤講師,静岡大学非常勤講師。商学実務特論,経営リスクマネジメントの講座,環境リスク・環境バイオにおける金融リスクを担当。

2015年3月まで大手損害保険会社及び保険持株会社にて,企画部長,リスク管理部長を歴任。損保•生保経営管理業務に従事。その間,日米保険交渉,合併・経営統合,海外M&A,保険ERMの構築などに参画。2015年4月より,大手監査法人にてリスクアドバイザリーサービスに従事。主として金融・保険会社に対し,経済価値ベースの管理(ERM高度化,IFRS導入),ガバナンス,リスクカルチャー,気候変動リスク,ESG要素の経営へのインテグレーションなどにかかわるサービスに従事,現在に歪る。
大阪大学経済学部卒業,コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所客員研究員(1996~1997), 中央大学大学院総合政策研究科博士課程修了。博士(総合政策),企業危機管理士。

[主な著作]
『気候変動時代の「経営管理」と「開示」』中央経済社(2022年,共同編著)
『リスク社会の企業倫理』中央経済社(2021年)
『気候変動リスクヘの実務対応』中央経済社 (2020年,編著)
『ERMは進化する-不確実性への挑戦』中央経済社(2019年)
『最新IFRS保険契約J保険毎日新聞社(2018年,第14章執筆)
『保険ERM基礎講座』保険毎日新聞社(2017年)
ERM経営研究会『保険ERMの理論と実践』金融財政事情研究会(2015年,第3章共同執筆)
Insurance ERM for New Generations, The Geneva Association, Insurance and Finance Newsletter, No.13 February 2014. P.25,26.
Building up capital buffers and recognizing judgemental risk, Asia Insurance Review, January 2013. P.76,77.
Behavioral Risk Management for Improper Risk Taking, Advaces In Management Vol.2 (4) April 2009. P.7-15.
The Bounds of Classical Risk Management and the Importance of a Behavioral Approach, Risk Management and Insurance Review, Vol.10, 2007. No.2, 267-282

担当編集者コメント
サイバーやデジタル化などにより経営環境は激変し、
経験したことがないほどの不確実性にさらされている。
不確実性にどう向き合うべきかを著者の知見をもとに解説した意欲作。


「今ERMは大きな壁にぶつかっている。企業を取り巻く環境が激変しているからである。
例えば、科学技術の発展の副産物として生み出されたリスク社会や、
デジタル革命が主導するビジネスチャンスの裏で拡大するサイバー空間上の脅威など、
かつて経験したことのないほど、経営は不確実性にさらされている。
換言すれば、不確実性の急拡大にERMの発展が追いつかない。
かつて、リスクへの挑戦を旗印にして発展してきたERMは、リスクの根源である不確実性によって脅かされている。
このような次世代の課題に対して実効性を発揮すべくERMは進化していかなければならない。」(はじめにより)


●本書の構成●

第1章 ERMの発展と強化の方向性
リスク管理発展の流れ/戦略的意思決定とリスク管理の関係/ERM強化の方向性
第2章 不確実性へのアプローチとリスク化
リスクの変質、不確実性の高まり/不確実性に対するアプローチ/不確実性下の意思決定/不確実性のリスク化の意味
第3章 事例にみる不確実性のインパクト
事例検討に先立つ着眼点/事例検討と教訓(戦略的意思決定と不確実性、システミック・リスクと不確実性、
オペレーショナル・リスクと不確実性、エマージングリスクと不確実性)/不確実性への対処における留意点
第4章 不確実性をマネージするためのERM
不確実性に向き合うための視点/リスクと不確実性の峻別と投資判断基準の設定/バイアス管理の強化/
想定外のマネジメントの強化/不確実性に対する戦略的思考/新技術の応用とERMの進化/ERMの進化への期待