非営利組織における情報開示―英国チャリティ会計からの示唆

兵頭 和花子

定価(紙 版):4,400円(税込)

発行日:2019/01/29
A5判 / 220頁
ISBN:978-4-502-29171-5

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本の紹介
研究や制度設計が先行しており、かつ類似性のある英国チャリティ会計の成立・変遷と特徴をヒントに、日本の非営利組織における情報開示のあり方を考察する研究書。

著者紹介

兵頭 和花子(ひょうどう わかこ)

担当編集者コメント
1.本書の趣旨
現在、日本の非営利組織においては、公益法人、社会福祉法人、学校法人、医療法人、NPO法人などが存在し、それぞれの法人に適用される会計基準が定められています。このように多様な会計基準にもとづく情報は、利害関係者にとって理解容易性や比較可能性が低いのが現状です。
近年、日本の社会において、非営利組織が果たすべき役割はますます大きくなっています。したがって、非営利組織の情報開示の充実は、日本社会の発展のため喫緊の課題といえるでしょう。
そこで、本書では、日本よりも研究や制度設計が先行している英国チャリティ会計、特に実務指針である「会計実務勧告書(SORP)」の成立・変遷とその特徴を究明しています。英国チャリティ会計の特徴は、主に発生主義会計、ファンド会計を採用していることとナラティブ情報(非財務情報)の提供が行われていることであるといえますが、これらの考え方を糸口として、日本の非営利組織における情報開示のあり方を考察しています。

2.なぜ英国チャリティ会計の研究が日本のあり方に示唆を与えるのか?
①英国チャリティの会計制度は1980年代に整備され始めたが、それ以前は多様な会計実務であり統一化が図られておらず,現在の日本との類似性が見いだせること。
②チャリティ会計は営利組織会計の導入から始まり、その後,非営利組織会計の考え方をより前面に押し出す形で確立された。日本の現状も企業会計との乖離が少なくこの点類似していること。
③英国では企業会計基準が適用されつつも、概念フレームワークを反映した実務指針のSORPはチャリティに固有の論点を保持し、企業会計基準と異なる点が含まれていること。

3.目次
序 章 本書の問題意識と構成
第1章 日本と英国における非営利組織会計の現状と課題
第2章 英国チャリティ会計の特質とそれを構成する基礎概念
第3章 英国チャリティ法(Charities Act)と英国チャリティ委員会(Charity Commission)
第4章 英国チャリティ会計の歴史的構築‐1988年SORP公表以前‐
第5章 英国チャリティSORPの変遷と特徴‐英国チャリティSORPの意義と台頭‐
第6章 現在の英国チャリティ会計の起点‐SORP1995における変革‐
第7章 現在の英国チャリティ会計(FRS102SORP)‐『チャリティの会計と報告書(Accounting and Reporting by Charities: SORP(FRS 102))』‐
終 章 日本の非営利組織会計への展望

4.執筆者紹介(執筆当時)
2004年 神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学
      兵庫県立大学経営学部講師
2005年 神戸大学博士(経営学)
2007年 兵庫県立大学経営学部准教授(現在に至る)
<主要著作等>
「政府・自治体の公会計‐アメリカ公会計の起源と特徴‐」(川崎紘宗氏と共著)、中野常男・清水泰洋編著『近代会計史入門』同文舘出版,2014年。
「事業費および管理費の区分について」『非営利組織会計の研究(最終報告書)』,非営利法人研究学会 公益法人研究委員会,2017年。
「非営利組織における純資産の拘束性について‐日本と英国を対比して‐」『商大論集(兵庫県立大学)』,第70巻第1号,2018年。

これまで十分に明らかにされてこなかった内容ですので、非営利組織の関係者、制度設計に携わる方には、よい示唆を与える内容ですね。

是非ご覧ください。