格付機関の役割と民事責任論―EU法・ドイツ法の基本的視座
- 本の紹介
- 格付機関の歴史的生成過程から説き起こし、EU法・ドイツ法上を参照しながら、格付けの失敗に起因する投資損失に対する民事上の責任について、その法的根拠を検討する。
目次
格付機関の役割と民事責任論
―EU 法・ドイツ法の基本的視座
目次
はしがき
第1編 序 論
第1章 本書の出発点
第2章 本書の構成
第3章 小 括
第2編 格付機関の歴史的生成過程
第1章 はじめに―本編の目的
第2章 格付機関の前身
―いわゆる信用興信所(Kreditauskunfteien)の起源(第一期)
1 資本市場の生成と信用興信所の発生
2 格付機関の前身
3 ドイツにおける信用興信所の生成
第3章 格付機関による格付の発生と拡大
―格付に係る批判も含めて(第二期)
1 格付機関の台頭(1910年代以降)
2 「投資家支払型」から「発行者支払型」への事業モデルの移行
(1970年代)
3 格付の国際化(1980年代以降)
4 いわゆる「格付スキャンダル」と立法措置(1990年代以降)
5 2010年以降の格付とユーロ通貨圏の国債危機
第4章 本編の要約
第3編 格付機関の役割と法的規制
第1章 はじめに―本編の目的
1 格付機関の法的規制の背景
2 わが国の金融商品取引法における規制
第2章 格付機関の役割と格付の経済的意義
1 3社の大規模格付機関
2 格付の経済的意義
3 格付の品質および透明性の確保
第3章 格付の方法
1 依頼格付(solicited rating)
2 勝手格付(unsolicited ratings)
3 格付の予測(Prognose)的性質と格付見通し
4 国別格付(Landerratings)
5 外部格付への依存の軽減
第4章 格付機関の法的規制
―利益相反問題への対応と競争の促進
1 発行者支払モデル(Issuer-pays Modell)
2 EU 格付機関規則による利益相反規制
3 格付市場の競争の促進
第5章 本編の要約
1 格付機関の役割(格付の経済的意義)―情報の非対称性の
解消および格付の証明書付与機能の側面
2 利益相反に係る格付機関の法的規制
3 格付機関の民事責任
第4編 EU 法における格付機関の民事責任規制の法的根拠
第1章 はじめに―本編の目的
1 格付の経済的意義および格付機関の機能
2 民事責任規制の創設の経緯
3 本編の目的
第2章 格付機関に対する民事責任の根拠
1 第二次変更規則35a 条にいたる格付機関に対する民事責任の
立法過程
2 小 括
第3章 第二次変更規則35a 条に基づく格付機関の損害賠償責任の
法律要件
1 国際私法および国際民事訴訟法上の要件
2 責任成立要件
3 証明責任の分配
4 法律効果としての損害賠償
5 格付機関の民事責任の制限:免責条項(disclaimer)の有効性
6 小 括
第4章 本編の要約―今後の課題と展望
1 法政策的課題
2 EU における格付機関の民事責任の展望
第5編 EU の主要構成国における格付機関に対する
民事責任規制
第1章 はじめに―本編の目的
第2章 投資家の格付機関に対する契約責任追及の可能性
1 民事責任追及の可能性―フランス法の場合
2 民事責任追及の可能性―イギリス法の場合
3 民事責任追及の可能性―ドイツ法の場合
4 民事責任追及の可能性―オーストリア法の場合
5 小 括
第3章 わが国における格付機関の契約責任論
1 判例・裁判例の動向
―「第三者のための保護効を伴う契約」法理の萌芽
2 名古屋高判平成17年6月29日
3 格付機関の契約責任追及の可能性
第4章 本編の要約
第6編 格付機関に対する損害賠償の訴えと国際裁判管轄
第1章 はじめに―本編の目的
第2章 瑕疵ある格付に対する国境を超える責任の問題
第3章 格付機関の民事責任体系
1 ドイツ法における格付機関の民事責任
2 EU 法における格付機関の民事責任
第4章 EU の格付機関規則および国際裁判管轄
1 EU に所在する子会社に対する損害賠償の訴え
2 米国に所在する親会社に対する賠償責任の訴え
3 フランクフルト上級地方裁判所2011年11月28日判決
4 小 括
第5章 準拠法決定の原則
1 ローマⅠ規則に基づく契約責任
2 ローマⅡ規則に基づく不法行為責任
第6章 本編の要約
第7編 格付機関の格付に対する信頼と金融機関の取締役の
責任
―ドイツにおける経営判断原則との関係において―
第1章 はじめに―本編の目的
第2章 格付機関による格付の機能および意義とその問題点
1 格付の機能および意義
2 格付プロセス
3 金融商品の格付の機能―投資家の視点
4 格付に対する信頼の問題点
第3章 取締役の責任―経営判断原則と格付の信頼
1 取締役の一般的注意義務
2 セーフハーバーとしての経営判断原則
3 経営判断原則の諸要件
4 デュッセルドルフ上級地方裁判所2009年12月9日決定
(IKB DeutscheIndustriebank AG 事件)と学説の反応
5 取締役による外部の格付の信頼の射程
6 小 括
第4章 本編の要約
第8編 結 語
第1章 格付機関の役割
第2章 格付機関の民事責任論
第3章 今後の課題
あとがき
索 引
著者プロフィール
久保 寛展(くぼ・ひろのぶ)
1973年生まれ
1996年 京都産業大学法学部卒業
2000年 ドイツ学術交流会(DAAD)の奨学生としてドイツ・ハンブルク大学法学部に留学(2001年₉月まで)
2003年 同志社大学大学院法学研究科博士後期課程修了 博士
(法学)(同志社大学)
現在 福岡大学法学部教授
【主著】
『ドイツ現物出資法の展開』(成文堂・2005年)
『プリメール会社法〔新版〕』(共著)(法律文化社・2016年)
「ヨーロッパ資本市場同盟構想における中小企業の資金調達の多様化および簡易化措置」
福岡大学法学論叢61巻₄号1037頁(2017年)
『企業取引法』(共著)(中央経済社・2018年)
他