- 本の紹介
- わが国法人税は確定決算主義、公正処理基準に特徴づけられるが、法人税の課税所得計算は企業会計を基底とし、影響を受けるので、本書では、収益認識の問題について検討する。
目次
法人税における収益認識の研究
目次
はしがき
初出一覧
第1章 企業会計における2つの利益観の分析
1 収益費用中心観と資産負債中心観の特徴
(1) 問題の所在
(2) FASB討議資料による説明
(3) 資産負債中心観と財産法との違い
2 収益費用中心観と資産負債中心観の相違点
(1) 収益認識対象の差異
(2) 評価益の取扱い
(3) 「取引」の範囲の違い
3 収益費用中心観の収益認識
(1) 収益費用中心観におけるアウトプットとインプットの存在
(2) 収益認識における決定的事象の抽出
(3) 収益費用中心観と取引の法形式
4 資産負債中心観の収益認識
(1) 資産負債中心観におけるストックの変動
(2) 資産負債中心観における原初的認識の特徴
(3) 資産負債中心観における原初的認識の課題
(4) 資産負債中心観における保有資産・負債の再評価
(5) 企業会計における経済的実質優先の議論
第2章 企業会計における利益観の変化と法人税法への影響
1 現行法人税法の収益認識構造
(1) 実現主義と権利確定主義
(2) 判例における収益認識基準の考え方
(3) 利益観の観点からの検討
(4) 実現主義と権利確定主義の関係についての検討
(5) 現行法人税法の収益認識の特徴
2 資産負債中心観による収益認識が与える影響
(1) 分析の視点
(2) 収益認識の範囲に与える影響
(3) 取引の法形式と収益認識との関係
(4) 租税回避行為と利益観の関係
(5) 管理支配基準と利益観の関係
3 資産負債中心観による収益認識の問題点
(1) 資産負債中心観に内在する問題点
(2) 未実現利益への課税
第3章 IFRS15号と法人税法における収益認識の比較
1 はじめに
2 IFRS15号設定の背景と経緯
(1) IFRS15号設定の目的
(2) IFRS15号設定の背景
(3) IFRS15号設定の経緯
3 配分アプローチを採用したIFRS15号の概要
(1) 収益認識の基本的な考え方
(2) 5つのステップによる収益認識
(3) 配分アプローチに対する批判
4 法人税法における収益認識の概要
(1) 法人税法の規定の確認
(2) 収益認識に関する判例の立場
(3) 収益認識の特徴
5 設例を用いた両者の比較
6 おわりに
第4章 IFRS15号の公正処理基準該当性の検討
-主として利益計算構造に着目して-
1 はじめに
2 利益計算構造の違いによる収益認識の差異
(1) 収益費用中心観における収益認識
(2) 資産負債中心観における収益認識
3 IFRS15号における収益認識構造
(1) IFRS15号の基本原則について
(2) IFRS15号における履行義務の充足について
4 法人税法における収益認識とIFRS15号との比較
(1) 法人税法の規定
(2) 法人税法の収益認識に関する判例・課税実務の立場
(3) IFRS15号との比較
5 おわりに
第5章 対価の前払いがある取引の収益計上時期について
-有料老人ホームの入居一時金の収益計上-
1 はじめに
2 判例研究:東京高等裁判所平成23年3月30日判決の概要
(1) 事実の概要
(2) 原告の主張
(3) 課税庁の主張
(4) 判 旨
3 判決に対する検討
(1) 収益認識の一般的基準の検討
(2) 権利確定主義適用にあたっての問題点
(3) 終身入居契約・一時入居金の法的性格の検討
(4) 公正処理基準による検討
4 おわりに
第6章 新株有利発行課税の問題点
-東京高裁平成22年12月15日判決の検討-
1 はじめに
2 判例研究:東京高裁平成22年12月15日判決
(1) 事実の概要
(2) 争 点
(3) X社の主張
(4) 判 旨
3 新株有利発行課税に関する法文上の規定
4 新株有利発行取引の構造・性質の検討
(1) 法人株主間取引の構造
(2) 新株有利発行取引の法律関係
(3) 新株有利発行取引に伴う経済的成果
5 判決に対する評価
6 最高裁平成18年判決(オウブンシャホールディング事件)
との関係
(1) オウブンシャホールディング事件の概要
(2) 最高裁平成18年1月24日判決
(3) 判決に対する若干の検討
7 おわりに
第7章 法人税における過年度損益修正の問題点
-TFK事件とクラヴィス事件の検討を中心に-
1 はじめに
2 過年度損益修正に係る諸規定
(1) 国税通則法における過年度損益修正の規定
(2) 公正処理基準の解釈による過年度損益修正
(3) 上記解釈論の問題点
3 結論の異なる過年度損益修正に関する2つの裁判例
(1) TFK事件(東京高判平成26年4月23日)
(2) クラヴィス事件(大阪高判平成30年10月19日)
(3) 両判決の比較と問題点
4 公正処理基準の解釈と前期損益修正
(1) 判例における公正処理基準の解釈
(2) 前期損益修正の公正処理基準該当性
(3) 「取引時にわかりえたか」論の検討
(4) 継続企業の公準と前期損益修正
5 更正の請求制度と過年度損益修正
(1) 更正の請求制度の本質
(2) 更正の請求の要件
(3) 経済的成果の喪失
6 おわりに
■文献一覧
■索 引
著者プロフィール
《著者紹介》
岩 武 一 郎(いわたけ いちろう)
1964年 福岡県生まれ
1989年 青山学院大学経営学部卒業
2011年 熊本学園大学大学院経営学研究科博士後期課程修了(経営学博士)
現在,熊本学園大学会計専門職大学院教授,岩武一郎税理士事務所所長
【主な業績】
『税務会計と租税判例』(共著),中央経済社,2019年
『「租税特別措置」の総合分析』(共著),中央経済社,2012年
『基礎簿記入門』(共著),中央経済社,2010年