- 本の紹介
- 長期的企業価値の最大化を想定したうえで、財務論の基礎的な部分を割愛し、企業の財務意思決定のより本質的な問題に焦点をあてて解説。ガバナンスや戦略リスク評価も論じる。
目次
戦略財務マネジメント
目次
まえがき
第1章 企業の財務目的と財務をめぐる諸問題
1 企業の財務目的
2 現実の資本市場と財務問題
3 エージェンシー問題と情報の非対称性
(1)エージェンシー問題
(2)情報の非対称性の問題
4 財務目的の再考
(1)資本市場の効率性
(2)市場のプレイヤーの行動様式
(3)長期的企業価値の最大化 ……ほか
5 本書の構成
第2章 財務マネジメントにおけるガバナンス問題
1 経営財務論における制度的議論の位置づけ
(1)不完全市場の問題と情報開示の限界
(2)不完全市場におけるガバナンス問題
2 株主による規律付け
(1)退出による規律付け:敵対的買収による規律付け
(2)発言による規律付け:株主行動主義
3 効果的な取締役会の運営
(1)取締役会の役割と現実:取締役会の独立性の問題
(2)取締役会における諸問題
4 経営者報酬
(1)経営者の報酬体系
(2)基本給と短期ボーナスの設定
(3)ストック・オプション
5 米国型ガバナンスに対する日本企業の反応
(1)日本における株主による規律付け
(2)日本企業の取締役会改革
(3)日本企業の経営者の報酬体系
6 ガバナンス問題の論点整理
第3章 債券と株式の価格評価
1 投資意思決定の基本
(1)貨幣の時間価値(time value of money)
(2)多期間にわたるキャッシュ・フローと資産価値
(3)複利概念
2 債券価格と利回りの評価
(1)債券の評価
(2)利回りの評価
(3)フォワード・レート
3 債券価格と金利の関係
(1)金利変化に伴う債券価格の変化
(2)デュレーションと修正デュレーション
(3)価格変化率を補正するコンベクシティ
4 株式の評価
(1)配当割引モデル(dividend discount model : DDM)
(2)一定成長率配当割引モデル
(3)サスティナブル成長率
第4章 資本市場における価値評価モデル
1 ポートフォリオ選択理論
(1)ポートフォリオ選択理論の基礎となる前提条件
(2)ポートフォリオのリターンとリスク
(3)最適ポートフォリオの選択
2 市場モデル
(1)最適ポートフォリオの導出における問題と市場モデル
(2)市場モデルの解釈
(3)市場モデルにみる分散投資の効果
3 資本資産評価モデル(CAPM)
(1)ポートフォリオ選択理論から資本資産評価モデルへの展開
(2)資本市場線(CML)
(3)証券市場線(SML)
4 オプションの基本構造
(1)オプションの基本構造
(2)プット−コール・パリティ
(3)複製アプローチによるオプションの評価
5 オプション価格モデル(OPM)
(1)二項過程モデル
(2)ブラック=ショールズ・モデル(BSOPM)
(3)オプション価値に影響を与える要因
補論 最適ポートフォリオにおける各証券の投資比率の導出
(1)最適ポートフォリオ中の各証券の投資比率の導出プロセス
(2)最適ポートフォリオ中の各証券の投資比率の導出例
第5章 投資案の価値評価手法と企業の資本配分問題
1 正味現在価値法の意義
(1)正味現在価値法とは
(2)増分キャッシュ・フロー
(3)割引率=機会費用=資本コスト
2 経営の柔軟性を考慮した投資案の評価〜BSOPMの適用〜
(1)投資案に内在する経営の柔軟性
(2)拡張オプションが内在する投資案の評価:BSOPMの適用
3 二項過程モデルによる経営の柔軟性の評価
(1)拡張オプションが内在する投資案の評価:二項過程モデルの
適用
(2)BSOPMと二項過程モデル
4 内部資本市場の効率性
(1)内部資本市場とその効率性
(2)内部資本市場の非効率性
5 資本配分プロセスに対する戦略論研究の示唆
(1)漸進的な資本配分プロセス
(2)資本配分プロセスに影響を及ぼす要因
(3)資本配分プロセス研究からの示唆
第6章 資本構成問題?
1 完全競争下における資本構成理論
2 法人税を考慮に入れたMM命題
(1)MMの修正命題
(2)数値例にもとづくMMモデルのグラフ表示
(3)MM命題の下での株価の変化
3 資本コスト
(1)資本コストの意義
(2)調達源泉別資本コストの計算
4 倒産コストと資本構成問題
第7章 資本構成問題?
1 エージェンシー・コストとは
2 資本構成に関わるエージェンシー問題
(1)株主と負債権者の間の利害の対立
(2)経営者と株主の間の利害の対立
3 情報の非対称性と資本構成問題
(1)仮設例
(2)ペッキング・オーダー理論の含意
4 経営戦略と資本構成問題
(1)前節までのまとめ
(2)資本構成問題に対する戦略的視点
第8章 配当政策
1 企業成長との関連
2 最適配当政策をめぐる論争
(1)ゴードン・モデル
(2)配当政策の無関連性−MMモデル
3 仮設例による説明
4 不完全性を考慮に入れた場合の配当政策論議
〜低配当を支持する議論〜
(1)所得税の影響
(2)取引費用の影響
(3)経営者と投資家の情報の非対称性
5 高配当を支持する議論と顧客効果
(1)配当および自社株買いのメリット
(2)自社株買いが優位性を持つ場合
(3)配当の顧客効果
6 配当の安定性
第9章 企業価値評価〜バリュエーション〜
1 企業価値評価の枠組み
2 企業価値評価のプロセス
3 企業価値評価の実際〜T社を例にして〜
(1)見積財務諸表の作成
(2)将来FCFの計算
(3)資本コストの測定 ……ほか
4 修正現在価値法にもとづく企業価値評価
(1)修正現在価値法とは
(2)修正現在価値法が推奨される状況
(3)修正現在価値法による企業価値の算定例〜T社を例にして〜
第10章 デリバティブによるリスク・ヘッジ
1 リスク・ヘッジの意義
2 フォワードと先物
(1)フォワード
(2)先物
(3)無裁定条件にもとづく先物価格の決定
3 スワップ
(1)スワップの仕組みと成立要件
(2)フォワードとしてのスワップ
(3)スワップの特殊性
4 オプション
5 デリバティブを用いたリスク・ヘッジ
(1)仮設例
(2)フォワード・先物によるヘッジ
(3)オプションによるヘッジ ……ほか
第11章 オプションの評価事例と新株予約権
1 金融オプションの価値評価
(1)権利行使価格の設定
(2)金融オプションの評価
(3)オプションの価値評価
2 ストック・オプション
(1)ストック・オプションとは
(2)ストック・オプションの評価
(3)ストック・オプションにまつわる問題
3 コール・オプションとしての新株予約権とCB
(1)新株予約権
(2)転換社債型新株予約権付社債
(3)MSCBの登場
第12章 企業価値創造におけるリスク・マネジメント
1 企業を取り巻くリスク
2 企業価値とリスク・マネジメント
(1)リスク・マネジメントがもたらす企業価値への影響
(2)企業価値ベースのリスク分類とマネジメント
3 戦略リスクへのアプローチ
(1)投資方針と戦略的判断による負わざるリスクの選別
(2)戦略リスクの評価
(3)戦略リスクへの対応
4 リスクにもとづく戦略財務マネジメントへ
(1)資本構成への影響
(2)投資評価への影響
(3)企業価値創造におけるリスク・マネジメント
参考文献
索 引
著者プロフィール
鳥邊晋司
川上昌直
赤石篤紀