- 本の紹介
- 政府調達の中でも、多くの予算が割かれ、かつ国の安全保障を左右する「防衛調達」。本書は、この防衛調達の現状、そしてあるべき姿を組織論と管理会計の立場から検証する。
目次
はしがき
第1章 問題設定と研究背景
今,何が起こっているのか
学術的な研究対象としての「防衛調達」
防衛調達に関する多様な論点
本書の研究課題
本書の構成
第2章 防衛調達の歴史と現況
防衛調達における歴史的経緯の概観
警察予備隊・海上警備隊の創設
保安庁の設置
防衛庁への改編
「調達物品の予定価格算定に関する訓令」と予定価格算定
方法の確立
調達改革の実施
その後の展開と防衛省への移行
「事案」の多発
4社事案の発覚に端を発する過大請求事案
G社事案
事案からのインプリケーション
まとめ─防衛調達の背景と現状
第3章 調達契約の理論的検討
「取引」の理論的背景
新古典派経済学における市場観
Coaseの取引コスト理論
Williamsonの取引コスト理論
取引コスト理論を裏付ける実例
自動車産業のサプライチェーン
パラレル・ソーシング(併社発注)
自動車産業の実例と取引コスト理論
競争入札拡充の失敗事例
まとめ─競争入札は「是」か「非」か?
第4章 防衛調達における価格決定構造
「原価計算方式」の価格決定構造
契約価格の構成要素
利子率の計算構造
利益率の計算構造
防衛調達における原価計算の特徴と課題
「原価計算方式」のインセンティブ問題
「工数」という難敵
コスト・シフティング仮説(cost-shiftinghypothesis)
コスト・シフティング仮説の概要
コスト・シフティング仮説に関する先行研究
まとめ─原価に基づく価格決定の課題
第5章 インセンティブを誘引する契約
防衛省の現行の取り組み
恒常的業務としての制度調査
コスト・データベースの整備
コスト・データベースの潜在的役割期待
インセンティブを誘引する契約形態の検討
インセンティブの本質とは?
現行のインセンティブ制度の思考
共同履行管理型インセンティブ契約制度
インセンティブを含む契約制度の検討
コスト・プラス・インセンティブ・フィー契約
非対称性の緩和とインセンティブの関係性
まとめ─インセンティブを創出する契約形態に向けて
第6章 適切な調達形態を求めて
防衛調達における「効率性」
民間調達からのインプリケーション
クロスファンクショナル(職能横断型)組織の概要
クロスファンクショナル組織の実効的役割
クロスファンクショナル組織の活用例
トヨタ自動車の事例
日産自動車の事例
先進諸外国の防衛調達の基本姿勢と取り組み
まとめ─クロスファンクショナル組織からの示唆
第7章 調達プロジェクトの一貫した管理
英国におけるスマート・プラクティス政府化
スマート・プロキュアメント政策
IPT(integrated project team)の導入
英国防調達におけるIPTの導入経緯
英国防調達におけるIPTの基本的な概念
英国防省の主要なプロジェクトにおけるIPTの成果
IPTの果たした役割の分析
産業界とのパートナリング
その他の諸外国におけるIPT
まとめ─各国IPTからの示唆
第8章 日本の防衛調達におけるプロジェクト管理
日本の防衛調達におけるIPT導入の経緯
IPT導入の契機と各種委員会報告書における議論
トヨタ自動車への人員派遣
試験的なIPTの設置
防衛装備庁の新設
防衛装備庁新設の背景
防衛装備庁の機能と意図
日本におけるIPTの今後の役割期待
まとめ─日本におけるプロジェクト管理への取り組みとIPT
第9章 防衛調達における原価企画の適用可能性
原価企画の概要
原価企画の基本概念
原価企画に関する先行研究
防衛調達における原価企画
防衛調達における原価企画の有用性
防衛調達における原価企画の適用可能性
原価企画におけるクロスファンクショナル組織の役割
まとめ─防衛調達における原価企画
第10章 より良い調達に向けて
本書の総括
第1~2章
第3~5章
第6~9章
本書での検討から得られた知見
一律な競争入札拡充への批判
一般産業界の慣行と「資産の特殊性」
先進諸外国の取り組み
情報の非対称性の緩和
インセンティブを創出する契約形態の追求
防衛調達特有の制約
まとめ─より良い調達に向けて