経営者はどこに行ってしまったのか―東芝 今に続く混迷

千代田 邦夫

定価(紙 版):2,750円(税込)

発行日:2022/08/26
A5判 / 196頁
ISBN:978-4-502-43661-1

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本の紹介
高度かつ巧妙な粉飾決算が行われた東芝事件。本書では、舞台裏で何が行われていたのか、そしてこれを教訓として、ガバナンス機能を発揮させるため経営者は何をすべきかを解説。

目次

第1章 東芝劇場「粉飾決算」― 会計基準の弱点を突く慣習的な粉飾手法
第2章 東芝劇場「粉飾決算」(続)― 経営者の猛烈なプレッシャーと高度かつ巧妙な粉飾手法
第3章 東芝劇場「粉飾決算」観劇記
第4章 東芝 失われた15年 ― ウェスチングハウス社
第5章 東芝 脆弱な財務基盤 ― 粉飾決算の一因か
第6章 東芝 ガバナンスの崩壊 ― “Where have the executive gone ? ”
第7章 コーポレート・ガバナンス ― 企業の持続的な成長と発展のための仕組み
第8章 代表取締役社長 ―“美しい”経営者とは
第9章 社外取締役 ―「保険説」と「引導説」
第10章 内部統制 ―「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」

著者紹介

千代田 邦夫(ちよだ くにお)
[プロフィール]
1966年 早稲田大学第一商学部卒業
1968年 早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了
1968年 鹿児島経済大学助手,講師,助教授(~1976年)
1976年 立命館大学経営学部助教授(~1984年)
1984年 立命館大学経営学部教授(~2006年)
2006年 立命館大学大学院経営管理研究科教授(~2009年)
2009年 熊本学園大学大学院会計専門職研究科教授(~2012年)
2012年 早稲田大学大学院会計研究科教授(~2014年)
2013年 公認会計士・監査審査会会長(~2016年)
現 在 立命館大学大学院経営管理研究科客員教授
    立命館アジア太平洋大学(APU)客員教授
    MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社監査役
    寺崎電気産業株式会社取締役監査等委員
    星和電機株式会社取締役監査等委員
    経営学博士・公認会計士

[主な著作]
単著
『新版会計学入門―会計・監査の基礎を学ぶ』(第8版),中央経済社,2024年
『経営者はどこに行ってしまったのか―東芝 今に続く混迷』中央経済社,2022年
『現場力がUPする課長の会計強化書』中央経済社,2019年
『財務ディスクロージャーと会計士監査の進化』中央経済社,2018年
『闘う公認会計士―アメリカにおける150年の軌跡』中央経済社,2014年
『監査役に何ができるか?』(第2版),中央経済社,2013年
『現代会計監査論』(全面改訂版),税務経理協会,2009年
『会計学入門―会計・税務・監査の基礎を学ぶ』(第9版),中央経済社,2008年
『貸借対照表監査研究』中央経済社,2008年
『日本会计』李敏校閲・李文忠訳,上海財経大学出版社,2006年
『課長の会計道』中央経済社,2004年
『監査論の基礎』税務経理協会,1998年
『アメリカ監査論―マルチディメンショナル・アプローチとリスク・アプローチ』中央経済社,1994年(日経・経済図書文化賞,日本会計研究学会太田賞,日本内部監査協会青木賞)
『公認会計士―あるプロフェッショナル100年の闘い』文理閣,1987年
『アメリカ監査制度発達史』中央経済社,1984年(日本公認会計士協会学術賞)
共編著
『体系現代会計学第7巻 会計監査と企業統治』中央経済社,2011年
共訳
『ウォーレスの監査論―自由市場と規制市場における監査の経済的役割』同文舘出版,1991年

担当編集者コメント
今問われる“経営者のガバナンス力”

かつて日本を代表する企業といわれた“東芝”は、2015年の不正会計の問題(東芝事件)発覚後から、今日にいたるまで迷走を続けています。
この東芝事件について、2015年の事件発生当時公認会計士・監査審査会の会長として監査に対する検査の陣頭指揮をとられ、また会計・監査研究の第一人者である千代田邦夫先生が、第三者委員会報告書や新聞等の報道資料を詳細に分析し、事件の背景・原因とそこから何を学ぶべきかについて提言をされています。

●東芝事件に対する考察
①東芝の粉飾決算はどのようにして行われたのか? 巨大企業の絶対的な権力を有する社長の強烈なプレッシャーの下、「慣習的な手法」と「高度かつ巧妙な手法」による組織的な粉飾決算の実態を見ることができる。
②今なお出口が見えない東芝混迷の最大の原因は、2006年に買収し子会社化した米国原子力関連会社ウェスチングハウス社にある。東芝が“社運” を賭けた同社は2017年に経営破綻した。なぜか?
③実は、東芝の財務基盤は脆弱であった。東芝が粉飾決算に奔(はし)らざるを得なかった一因は、金融機関から課せられた「財務制限条項」への抵触を避けるためではなかったのか?
④東芝の “ガバナンス” は機能しなかった。東京電力福島第一原子力発電所事故後の危機において、経営者は何をしていたのか? 取締役会は “ムラ化” した海外原子力事業をなぜコントロールできなかったのか?
これらの考察の結果、東芝事件の根本的な欠陥は、「コーポレート・ガバナンス」にあったと結論づけています。

●そして東芝事件から何を学ぶか―著者の問題意識とメッセージ
①地球環境を保護し平和で豊かな生活を維持していくための「企業の社会的責任」(CSR)とは一体何だろうか?
②そもそも“コーポレート・ガバナンス”とは何か?
③“ミッション”、“ビジョン”、“バリュー”、“ESG”、“SDGs”、“CSV”とは何か?
④ガバナンスの中核に位置する社長の理想像とは?
⑤ガバナンス体制を支える社外取締役の役割は? 彼らはその期待に応えているのか?
⑥健全なガバナンスには健全な内部統制が不可欠であるが、変容する内部統制に落とし穴はないのか?

経営者の皆さんは、東芝事件を「他山の石」として、本書の知見を自社の経営に活かしていただければと思います。
また、会計士・税理士をはじめ会計に関わる仕事をしている方々にとっても、会計不正やガバナンスの機能不全のメカニズム等がくわしく解説されており、自らの実務に大きくかかわり非常に興味深く読める内容です。

ぜひご覧ください!