経営者はどこに行ってしまったのか―東芝 今に続く混迷
- 本の紹介
- 高度かつ巧妙な粉飾決算が行われた東芝事件。本書では、舞台裏で何が行われていたのか、そしてこれを教訓として、ガバナンス機能を発揮させるため経営者は何をすべきかを解説。
目次
第1章 東芝劇場「粉飾決算」― 会計基準の弱点を突く慣習的な粉飾手法
第2章 東芝劇場「粉飾決算」(続)― 経営者の猛烈なプレッシャーと高度かつ巧妙な粉飾手法
第3章 東芝劇場「粉飾決算」観劇記
第4章 東芝 失われた15年 ― ウェスチングハウス社
第5章 東芝 脆弱な財務基盤 ― 粉飾決算の一因か
第6章 東芝 ガバナンスの崩壊 ― “Where have the executive gone ? ”
第7章 コーポレート・ガバナンス ― 企業の持続的な成長と発展のための仕組み
第8章 代表取締役社長 ―“美しい”経営者とは
第9章 社外取締役 ―「保険説」と「引導説」
第10章 内部統制 ―「攻めのガバナンス」と「守りのガバナンス」
- 担当編集者コメント
- 今問われる“経営者のガバナンス力”
かつて日本を代表する企業といわれた“東芝”は、2015年の不正会計の問題(東芝事件)発覚後から、今日にいたるまで迷走を続けています。
この東芝事件について、2015年の事件発生当時公認会計士・監査審査会の会長として監査に対する検査の陣頭指揮をとられ、また会計・監査研究の第一人者である千代田邦夫先生が、第三者委員会報告書や新聞等の報道資料を詳細に分析し、事件の背景・原因とそこから何を学ぶべきかについて提言をされています。
●東芝事件に対する考察
①東芝の粉飾決算はどのようにして行われたのか? 巨大企業の絶対的な権力を有する社長の強烈なプレッシャーの下、「慣習的な手法」と「高度かつ巧妙な手法」による組織的な粉飾決算の実態を見ることができる。
②今なお出口が見えない東芝混迷の最大の原因は、2006年に買収し子会社化した米国原子力関連会社ウェスチングハウス社にある。東芝が“社運” を賭けた同社は2017年に経営破綻した。なぜか?
③実は、東芝の財務基盤は脆弱であった。東芝が粉飾決算に奔(はし)らざるを得なかった一因は、金融機関から課せられた「財務制限条項」への抵触を避けるためではなかったのか?
④東芝の “ガバナンス” は機能しなかった。東京電力福島第一原子力発電所事故後の危機において、経営者は何をしていたのか? 取締役会は “ムラ化” した海外原子力事業をなぜコントロールできなかったのか?
これらの考察の結果、東芝事件の根本的な欠陥は、「コーポレート・ガバナンス」にあったと結論づけています。
●そして東芝事件から何を学ぶか―著者の問題意識とメッセージ
①地球環境を保護し平和で豊かな生活を維持していくための「企業の社会的責任」(CSR)とは一体何だろうか?
②そもそも“コーポレート・ガバナンス”とは何か?
③“ミッション”、“ビジョン”、“バリュー”、“ESG”、“SDGs”、“CSV”とは何か?
④ガバナンスの中核に位置する社長の理想像とは?
⑤ガバナンス体制を支える社外取締役の役割は? 彼らはその期待に応えているのか?
⑥健全なガバナンスには健全な内部統制が不可欠であるが、変容する内部統制に落とし穴はないのか?
経営者の皆さんは、東芝事件を「他山の石」として、本書の知見を自社の経営に活かしていただければと思います。
また、会計士・税理士をはじめ会計に関わる仕事をしている方々にとっても、会計不正やガバナンスの機能不全のメカニズム等がくわしく解説されており、自らの実務に大きくかかわり非常に興味深く読める内容です。
ぜひご覧ください!