鉄道ほとんど不要論

福井 義高

定価(紙 版):1,980円(税込)

発行日:2023/09/05
四六判 / 232頁
ISBN:978-4-502-46281-8

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本の紹介
最新データからみえてくる衰退産業・鉄道の現状。リニア、整備新幹線、貨物、閑散路線、皆不要である。ほとんど先がない鉄道が生き残るための「すき間」市場とは何なのか。

目次

まえがき
第1部 未完の国鉄改革と鉄道の窮状
第1章 国鉄改革は未完である―JRは同じ轍を踏むのか
国策に反した国鉄独自の改革案
地域分割を主張した「改革3人組」
改革派が目論んだ「JR東日本ハブ会社」構想
JR各社を一体運営しようとした改革派
政権は改革派の「焼け太り」を許さなかった

第2章  都市「圏」輸送に鉄道の強みがある
―1日の移動時間と列車運行の関係
移動は1日1時間
「福井定数」:JR
キロ法則
コロナ後の鉄道利用

第3章  旅客輸送量データが当てにならない
―「史上最高」の陰に数字のトリック
鉄道のシェアが激増?
私鉄は輸送人キロがお嫌い?
上場に向けてデータを隠すJR貨物?

第2部 地域交通手段としての鉄道の限界
第4章  地域交通の主役は「鉄道やバス」ではなく「自家用車」でよい!
地域での交通は「公共」でなければいけないのか
ほとんどいない乗合交通の利用者 
EBPMはどこへ
地域交通政策は自家用車中心で

第5章  ローカル線の維持・廃止論
―利用者以外の負担を正当化するにも限度がある
動き始めたJRローカル線廃止の議論
データに基づかない現状認識
「成功例」は成功していない
ローカル線廃止は国鉄の悲願
半世紀以上前に提示されていた解決策
国鉄ローカル線対策への不十分な理解
分割反対派も共有していたローカル線廃止
都会の住民の負担はいつまで続くのか
「欧州では論」のまやかし
国民の視点で効率的な地域交通の構築を

第6章 どの路線に住むかで生じる不公平な運賃格差
低価格弾力性が可能にする運賃格差
ローカル線運賃格差の謎
JR東日本から「御用金」調達
首都圏通勤路線の運賃格差

第7章 インフラ老朽化に対処できない中小鉄道・整備新幹線
深刻な公的インフラ老朽化
中小鉄道の今そこにある危機
サステナブルではない整備新幹線

第3部 さらば鉄道貨物
第8章 JR貨物の隠された「相当な赤字」
貨物輸送のトラック依存度は高くない
鉄道が運ぶべき貨物は日本に存在しない
最後の栄光の日々だった1960年代
交差した新幹線と貨物輸送
輸送量は最盛期の3分の1に
貨物輸送はビジネスベースがコンセンサス
それでも貨物継続にこだわった国鉄
批判のなか分離独立して再出発
黒字化という「奇跡」が起きた
「奇跡」を起こした本当の理由
年以上に及んだ「当分の間」
再び交差した新幹線と貨物輸送
JR貨物に必要なのは「終活」
ローカル線廃止論議の妨げにも

第9章 有事に鉄道貨物輸送は必要なのか
安全保障の観点からの貨物維持論登場
北海道に鉄道貨物は必須ではない
危険物もトラックで運べると確認済
あれば使われる程度の有事鉄道輸送
自動車大国にとって鉄道頼みはナンセンス
青函トンネルの上に原子力潜水艦
国民の安全より虚構の維持を優先する政府
それでも鉄道貨物を維持するのなら

第4部 新幹線幻想とJR6社の現実
第10章 JR九州は新幹線を自力で維持更新できるのか
―最後は税金頼み?
新幹線が負の遺産になる前に
予想を裏切ったJR九州の成功
上場の「メリット」
将来は新幹線廃止?
在来線は価値ゼロ?
鉄道廃業への道?

第11章 JR四国は「新幹線を持たない強み」を活かせ
―大きな「中小私鉄」へ
国鉄改革時の予想どおり衰退
万遍なく低利用
鉄道ににほとんど「すき間」のない四国
新幹線がない幸運
報われない努力
困難な再生プランの策定
それでも生き残る余地あり

第12章  JR北海道を三分割せよ
―ローカル線・新幹線・貨物という三重苦からの脱却
明暗を分けた北海道と四国の鉄道
輸送内容の劇的変化
鉄道は堅調なのに、経営は危機
JR北海道分割による再生案
分割3社の収支を試算する

第13章 JR本州3社の生きる道―コロナ後の旅客鉄道 204
コロナ後の輸送動向
本州3社の今後
東海道・山陽以外の新幹線は各社の重荷になっていく
JR本州3社の生きる道は
終章 鉄道の老後―一輸送手段へ回帰せよ
分割民営化のおかげで生き残ったローカル線
分割のメリット
不透明な裏口からの支援
ソフトな予算制約と組織の自己目的化
国家の暴力団性
おわりに

著者紹介

福井 義高(ふくい よしたか)
[プロフィール]
1962年 京都府生まれ
1985年 東京大学法学部卒業
1998年 カーネギーメロン大学大学院博士課程修了(Ph.D.)
日本国有鉄道、東日本旅客鉄道株式会社、東北大学大学院経済学研究科を経て、現在、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授、CFA
専門は会計情報・制度の経済分析
著書に『会計測定の再評価』、『鉄道は生き残れるか』『たかが会計』(以上、中央経済社)、『日本人が知らない最先端の「世界史」』、『同2』(以上、祥伝社)、『教科書に書けないグローバリストに抗したヒトラーの真実』(ビジネス社)など