コーポレート・ファイナンスの法務

天野 正人 編著
山岸 哲平
瓜生 容
植木 悠介

定価(紙 版):4,950円(税込)

発行日:2023/12/14
A5判 / 400頁
ISBN:978-4-502-46891-9

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本の紹介
各成長ステージにおける企業のエクイティ・ファイナンス法務と組織再編に伴う論点を押さえる。8月31日公表の企業買収における行動指針にも言及。事例分析も豊富に掲載。

目次

序章 コーポレート・ファイナンスの基礎

Ⅰ コーポレート・ファイナンスとは

Ⅱ 企業価値評価の諸概念の整理
 1 企業価値
 2 現在価値、将来価値、割引率と期待収益率
 3 資本コスト
 4 負債コスト
 5 株主資本コスト
 6 WACC(加重平均資本コスト)
 7 ROIC/ROE
 8 企業価値評価の諸概念の整理:補足

Ⅲ 企業価値評価の手法
 1 インカムアプローチ/Discount Cash Flow(DCF)法
 2 マーケットアプローチ:類似会社比較法
 3 マーケットアプローチ:市場株価法/類似取引法

Ⅳ 資本構成の理論
 1 MMの無関連命題
 2 レバレッジと資本コスト
 3 資本構成のトレードオフの理論
 4 ペッキング・オーダー理論
 5 エージェンシー・コスト問題
 6 負債による規律づけ
 7 資産代替の問題
 8 エクイティ・ファイナンスによる希釈化

Ⅴ M&Aにおける価値創造
 1 価値創造のフレームワーク
 2 M&Aにおける価値創造の要因
 3 価値創造を伴わないM&A
 4 M&Aにおける企業価値評価方法

第1章 スタートアップ企業の成長ステージとファイナンス手段

Ⅰ コンバーティブル投資手段(J-KISS型新株予約権・CB)によるファイナンス
 1 コンバーティブル投資手段の全体像
 2 コンバーティブル投資手段の商品設計
 3 コンバーティブル投資手段の契約書類
 4 コンバーティブル投資手段の法律問題
 5 コンバーティブル投資手段によるファイナンス:結語

Ⅱ 種類株によるファイナンス
 1 種類株の全体像と概要
 2 スタートアップ企業の種類株の商品設計(主要な条項の具体的内容)
 3 種類株のファイナンスのプロセスとドキュメンテーション
 4 種類株によるファイナンス:結語

第2章 エクイティ・キャピタルマーケットの法務の基礎

Ⅰ エクイティ・キャピタルマーケットの全体像と基礎概念
 1 企業の資金調達活動と資本市場の鳥瞰
 2 エクイティ・キャピタルマーケットの定義
 3 本書第2章から第4章までの使用用語の定義
 4 基本実務用語の解説
 5 アナリスト・レポートとの関係性
 6 アナリスト独立性の問題

Ⅱ 金商法上の発行開示規制の概要
 1 発行開示規制の趣旨と基本枠組み
 2 有価証券届出書の効力発生の時間軸
 3 金商法上の発行開示民事責任体系

Ⅲ グローバル・オファーリングと米国証券法の規制枠組み
 1 Rule 144A Offering
 2 Reg S Offering
 3 グローバル・オファーリング
 4 米国法上の開示書類のMaterial Misstatement/Material Omissionについての民事責任
 5 旧臨報方式/旧臨時報告書方式
 6 グローバル・オファーリング:結語

第3章 IPOの法務

Ⅰ IPOの概観
 1 本章の射程のIPO
 2 株式上場のメリット
 3 株式上場の負担
 4 IPOの時間軸
 5 新規上場基準
 6 引受・上場審査
 7 IPOのドキュメンテーション
 8 上場のためのガバナンス体制構築
 9 上場と資本政策
 10 上場前の株式の移動規制

Ⅱ IPOのプライシング
 1 IPOにおけるプライシングのメカニズム
 2 IPOのUNDERPRICING問題

Ⅲ IPOに関する法務的諸留意点
 1 期越え上場
 2 開示書類における定性的開示
 3 プレIPOロードショウ
 4 プレディール・リサーチ
 5 複数議決権株式とIPO

Ⅳ 参考資料:IPOの具体的案件の時間軸と国内・海外株数内訳

第4章 上場企業のエクイティ・ファイナンスの法務

Ⅰ 上場企業のエクイティ・ファイナンスの法務:全体像

Ⅱ 普通株式のPO/公募・売出し
 1 普通株のPO/公募・売出しの留意点
 2 情報管理・適時開示
 3 ディールのタイミングⅠ:組織再編M&A等の潜在案件が進行している場合
 4 ディールのタイミングⅡ:決算情報への配慮
 5 継続開示情報と後発事情

Ⅲ 普通株式の第三者割当て
 1 有価証券届出書の第三者割当ての開示特記事項
 2 上場規程・上場規則上の規制
 3 TSEの第三者割当適時開示規制の主な開示内容
 4 自主規制法人によるエクイティ・ファイナンスプリンシプル

Ⅳ ユーロCB
 1 ユーロCBの特徴
 2 ユーロCBの主なドキュメンテーション
 3 ユーロCBの商品設計
 4 ユーロCBを活用したリキャピタリゼーション(Recapitalization/資本再構築)/リファイナンス

Ⅴ 種類株式によるエクイティ・ファイナンス
 1 AA型種類株式
 2 TRACKING STOCK
 3 無議決権株式
 4 救済型種類株式(業績不振の会社に対する資本的支援としての種類株式)

Ⅵ MSCB/MSW
 1 グローバルなキャピタルマーケット法務から見たMSCB等の法的論点
 2 MSCB等に関する規制

Ⅶ ライツ・オファーリング

第5章 公開買付規制

Ⅰ 公開買付けの規制の概要
 1 公開買付けとは
 2 公開買付規制の趣旨
 3 公開買付規制の3本柱
 4 公開買付規制改正の動き

Ⅱ M&A 関係の本書での主な使用用語の定義および公開買付規制上の重要概念の整理
 1 本書第5章から第7章のM&A関係の主な使用用語の定義
 2 金商法上の公開買付規制の概念の整理

Ⅲ 強制的公開買付け
 1 強制的公開買付けの規制枠組み
 2 強制的公開買付けの適用除外

Ⅳ 開示規制と公開買付けの手続の流れ
 1 概要
 2 公開買付届出書(金商法27条の3第2項)
 3 公開買付開始決定のプレスリリース
 4 意見表明報告書
 5 意見表明決定プレスリリース
 6 友好的買収における公開買付開始決定と賛同意見表明の決定の同時公表と相互参照
 7 公開買付けの手続の流れ

Ⅴ 実体法上の規制
 1 買付予定の株券等の数
 2 公開買付価格
 3 公開買付期間
 4 公開買付条件等の変更
 5 公開買付者による公開買付けの撤回
 6 別途買付けの禁止

Ⅵ インサイダー取引規制等に関する留意点
 1 概要
 2 公開買付者等関係者のインサイダー取引規制
 3 対象会社の会社関係者としてのインサイダー取引規制
 4 公開買付開始公告後のインサイダー規制
 5 第三者による公開買付け等の実施に関する事実に基づくインサイダー取引規制

第6章 会社法上の組織再編の基礎

Ⅰ 吸収合併

Ⅱ 新設合併

Ⅲ 株式交換

Ⅳ 株式移転

Ⅴ 吸収分割

Ⅵ 新設分割

Ⅶ 組織再編の手続
 1 会社法上の手続
 2 会社法以外の法令に基づく主要な手続

Ⅷ 簡易組織再編、略式組織再編
 1 簡易組織再編
 2 略式組織再編

Ⅸ 組織再編対価の相当性
 1 「公正な価格」

Ⅹ 組織再編に係る開示規制の主な開示事項

XI 事業譲渡

XII スクイーズ・アウト
 1 株式等売渡請求
 2 現金対価株式交換
 3 株式併合
 4 全部取得条項付種類株式

第7章 M&A取引の対象会社取締役の善管注意義務・忠実義務

Ⅰ 本章の全体像

Ⅱ 判例・通説による取締役の善管注意義務・忠実義務と経営判断原則の理論
 1 取締役の善管注意義務
 2 取締役が善管注意義務・忠実義務に違反した場合の責任
 3 善管注意義務・忠実義務に違反した取締役に対する責任追及
 4 取締役の善管注意義務・忠実義務が問題となる主な場面

Ⅲ 経営判断原則における審査基準
 1 下級審実務における審査基準
 2 アパマン事件
 3 日本興亜損保ジャパン事件
 4 裁判例を踏まえた経営判断原則の審査基準

Ⅳ M&Aの価格評価における取締役の善管注意義務の判例・通説の判断枠組み
 1 独立当事者間のM&Aの価格評価
 2 会社法上の利益相反取引に該当するM&Aの価格評価
 3 構造的利益相反M&Aその他の価格評価

Ⅴ M&A指針の概要
 1 M&A指針とは
 2 M&A指針の全体像
 3 M&A指針の基本原則と基本的な視点
 4 公正性担保措置(実務上の具体的対応)

Ⅵ 米国の判断基準
 1 はじめに
 2 Business Judgement Rule(経営判断原則)
 3 レブロン基準
 4 完全なる公正性の基準

Ⅶ レブロン基準と日本法上のM&A対象会社の善管注意義務・忠実義務の分析・考察
 1 はじめに
 2 レブロン基準に関連する日本法の取締役の善管注意義務・忠実義務の議論

Ⅷ 島忠・富士通ソレキア・日立金属の事例分析
 1 島忠DEAL
 2 富士通・ソレキア・佐々木ベジDEAL
 3 日立金属DEAL

著者紹介

天野 正人(あまの まさひと)
[プロフィール]
増田パートナーズ法律事務所 シニアアドバイザー 弁護士

1981年3月 早稲田大学法学部 卒業
   10月 司法試験合格
1984年3月 最高裁判所司法研修所修了/弁護士登録36期(第一東京弁護士会)
   4月 西村・真田(現西村・あさひ)法律事務所所属,主に国際資本市場・企業金融・資産金融取引の実務に従事(~1992年9月)
1988年5月 米国留学・勤務(~1991年5月)
1989年6月 ワシントン大学(シアトル)ロースクール卒業 法学修士号(LLM)取得
   9月 ニューヨークHughes, Hubbard & Reea法律事務所勤務(~1991年5月)
1990年2月 ニューヨーク州弁護士登録
1992年11月 メリルリンチ日本証券(現BOFA証券)にシニアカウンセルとして入社
1996年1月 メリルリンチ日本証券ジェネラルカウンセル
2001年12月 メリルリンチ日本証券取締役(~2009年7月)
2009年1月 パンク・オブ・アメリカグループ日本拠点(メリルリンチ日本証券を含む)の法務部門統括責任者(~2019年2月)
2019年6月 増田パートナーズ法律事務所シニアアドバイザー(現職)

山岸 哲平(やまぎし てっぺい)
[プロフィール]
増田パートナーズ法律事務所 シニアアソシエイト 弁護士

2006年3月 早稲田大学法学部 卒業
2009年3月 横浜国立大学法科大学院
   9月 司法試験合格
2010年12月 最高裁判所司法研修所修了/弁護士登録63期(第二東京弁護士会),都内法律事務所所属
2017年3月 ウェルネット株式会社入社
2019年1月 曙ブレーキ工業
2022年2月 増田パートナーズ法律事務所シニアアソシエイト(現職)

瓜生 容(うりゅう よう)
[プロフィール]
増田バートナーズ法律事務所シニアアソシエイト弁護士

2008年3月 東北大学法学部 卒業
2010年3月 一揺大学法科大学院修了
   9月 司法試験合格
2011年12月 最高裁判所司法研修所修了
2012年1月 判事補任官(新64期)/千葉地方裁判所(刑事部)判事補
2015年4月 仙台法務局訟務部付検事
2017年4月 仙台家庭裁判所判事補
2019年4月 大阪地方裁判所(民事部)判事補
2020年10月 増訂パートナーズ法律事務所シニアアソシエイト(現職)
   11月 弁護壬登録(第一東京弁護士会)

植木 悠介(うえき ゆうすけ)
[プロフィール]
増田パートナーズ法律事務所 シニアアソシエイト 弁護士

2009年3月 早稲田大学法学部 卒業
2012年3月 中央大学法科大学院 修了
2012年9月 司法試験合格
2013年12月 最高裁判所司法研修所修了(66期)東京弁護士会登録/西中• 宮下法律事務所勁務(~2015年9 月)
2015年9月 タイラカ総合法律事務所勤務(~2020年3月)
2020年4月 増田パートナーズ法律事務所シニアアソシエイト(現職)