中小企業買収の法務〈第2版〉―事業承継型M&A・スタートアップM&A

柴田 堅太郎

定価(紙 版):4,180円(税込)

発行日:2024/08/06
A5判 / 424頁
ISBN:978-4-502-50441-9

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本の紹介
事業承継型M&A・スタートアップM&Aの法務上の問題を50の事例を通じて検討。第2版では、スタートアップへの戦略投資に関して記述を拡充するなど大幅に加筆している。

目次

第1編 本書の目的と前提知識
第1章 本書の目的

1.本書で取り扱う検討対象
2.買主側の視点での検討

第2章 M&A取引法務の概要
1.M&A取引法務一般に関する参考文献
2.M&A取引の流れ
3.法務デュー・ディリジェンスの概要
4.最終契約(株式譲渡契約)の概要

第2編 事業承継型M&Aの法務
第1章 事業承継型M&Aの特色

1.所有と経営の一致
2.人的・物的リソースの限界
3.事業承継型M&Aを担うプレイヤーの特色

第2章 対象会社の会社支配に関する諸問題
1.複数の少数株主の存在
2.株主の契約締結能力に疑義がある場合
3.株式の相続人の確定(遺言・遺産分割協議)
4.準共有株式の取扱い
5.所在不明株主
6.株券交付を欠く株式譲渡
7.株券紛失の場合
8.名義株主の存在
9.経営者以外の親族が支配株主となっている場合
10.従業員持株会が保有する株式の取扱い

第3章 会社資産と個人資産の不分別
1.対象会社の事業上必要な資産を支配株主またはその親族が所有している場合
2.対象会社がその事業にとって不要な資産を所有している場合
3.対象会社と経営株主またはその親族との間に債権債務がある場合
4.経営株主親族との間の不相当・不必要な取引
5.従業員に親族が存在する場合の取扱い
6.兄弟会社との取引
7.不動産M&A

第4章 経営株主個人への依存に関する諸問題
1.経営株主の譲渡後の経営関与
2.経営株主の経営関与へのインセンティブ維持の仕組み
3.経営者保証の取扱い

第5章 頻出のコンプライアンス問題
1.株主総会・取締役会の不開催
2.労務コンプライアンス上の問題
3.コンプライアンス上の問題を理由とする買主内部での反対論への対応

第6章 法務デュー・ディリジェンス実施上の問題点
1.箝口令が敷かれている場合の対応
2.限られた予算内での法務デュー・ディリジェンスの実施
3.デュー・ディリジェンスプロセスにおける売主感情への配慮
4.デュー・ディリジェンス資料・情報の開示における留意点

第7章 最終契約交渉上の問題点
1.売主が最終契約を適切に検討していない場合のリスク
2.支配権の移転による取引先による契約解除の懸念
3.対象会社従業員の雇用保障
4.売主に対する補償請求権の保全
5.譲渡対価の金額を超える損害が発生するおそれがある場合の対応
6.契約交渉プロセスにおける売主感情への配慮
7.債務超過・潜在債務が懸念される対象会社の買収

第3編 スタートアップ投資・M&Aの法務
第1章 スタートアップ案件の特殊性

1.本編の問題意識
2.検討にあたっての視点

第2章 投資契約実務の基礎
1.はじめに
2.投資時期
3.投資契約の構造
4.投資契約の目的
5.スタートアップ投資の際の法務デュー・ディリジェンス
6.タームシート交渉
7.投資契約の重要規定

第3章 事業会社によるスタートアップ投資の留意点
1.はじめに
2.ベンチャーキャピタルなど純投資家による投資との違い
3.ベンチャー投資と一般の事業会社同士のジョイントベンチャーとの違い
4.事業会社によるスタートアップとの資本業務提携の目的
5.出資ストラクチャー
6.出資比率決定におけるスタートアップ投資の特殊性
7.事業会社株主の取締役指名権
8.重要事項に関する事前同意権
9.投資家による保有株式譲渡に関する問題点
10.経営株主による保有株式譲渡に関する問題点
11.先買権
12.事業会社株主の売渡請求権(コール・オプション)の可能性
13.業務提携契約

第4章 ファンドを通じたスタートアップ投資
1.ファンドを通じたスタートアップ投資
2.ベンチャーキャピタルファンドへのLP出資に関する留意点
3.ベンチャーキャピタルに運用を委託したCVCファンドの組成

第5章 スタートアップM&Aにおけるデュー・ディリジェンス
1.スタートアップM&Aの視点
2.株式・株主構造
3.ビジネスモデルの分析
4.キーパーソンの離職リスク
5.コンプライアンス
6.事業会社株主との業務提携

第6章 スタートアップM&Aにおける最終契約交渉
1.買主による株式取得割合の検討
2.株主からの株式買取交渉
3.表明保証および補償責任に関する問題
4.株式対価M&A

第7章 スタートアップM&Aにおける経営株主との経営委任契約・株主間契約
1.経営株主との株主間契約または経営委任契約
2.経営株主のインセンティブプラン

第8章 スタートアップ創出型カーブアウト
1.意義
2.ストラクチャー
3.スタートアップ創出型カーブアウトのメリット
4.カーブアウトの問題点

第4編 M&A仲介事業者と中小M&Aガイドライン
第1章 はじめに
第2章 中小M&Aガイドライン

1.概要
2.構成
3.M&A支援機関登録制度
4.ガイドラインの法的拘束力
5.ガイドラインの目的と保護の対象
6.業規制との関係

第3章 仲介者の善管注意義務・忠実義務と職業倫理
1.善管注意義務と忠実義務
2.仲介者が負う善管注意義務・忠実義務の内容
3.職業倫理の遵守と支援の質の確保・向上
4.仲介者の義務と業界自主規制ルール

第4章 プロセスごとの仲介者のあるべき行為規範および仲介契約上の留意点
1.仲介契約締結時の重要事項説明義務
2.マッチング支援
3.企業概要書の正確性・完全性とDD不実施
4.DD対応
5.バリュエーション
6.最終契約
7.直接交渉の制限
8.交渉の場面における中立性・公平性
9.成功報酬の明確性と合理性

第5章 当事者にとっての今後の課題
1.仲介者─行為規範のさらなる具体化を
2.当事者─アドバイザー登用の啓蒙

著者紹介

柴田 堅太郎(しばた けんたろう)
[プロフィール]
1998年 慶応義塾大学法学部法律学科卒業
2001年 弁護士登録(第一東京弁護士会),長谷川俊明法律事務所入所
2006年 Northwestern University. School of Law卒業(LL.M.)
同年  長島・大野・常松法律事務所入所
2007年 ニューヨーク州弁護士登録
2014年 柴田・鈴木・中田法律事務所開設.現在に至る

主要取扱分野:M&A,ジョイントベンチャー,エクイティファイナンス,同意なき買収への対応などのコーポレート案件を中心として,企業法務全般を取り扱う。また,コーポレートガバナンスの知見を生かし,企業の社外役員を務める。

[主な著作]
『ストーリーで理解するカープアウトM&Aの法務』(編著,中央経済社,2022年12月。第17回(2022年度)M&Aフォーラム賞正賞「RECOF賞」受賞)