非営利組織体の簿記研究―浸透する複式簿記の原理

小野 正芳 編著

定価(紙 版):6,930円(税込)

発行日:2025/02/06
A5判 / 420頁
ISBN:978-4-502-52021-1

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本の紹介
損益計算を本来必要としない非営利組織体にとって、複式簿記がどのように利用され、役立っているのか。公益法人や学校法人、医療法人など11の組織体を取り上げて検討する。

目次

第1章 非営利組織体における複式簿記の必要性
第1節 はじめに
第2節 非営利組織体
第3節 非営利組織体に複式簿記の導入が求められる理由
第4節 複式簿記の導入で強化が図られる機能と検討課題
第5節 複式簿記により新たに導入される要素
第6節 本書における研究の目標
(大塚 成男)

第1部 企業会計に近い形で出資額の維持を行うグループ
第2章 農業協同組合の簿記

第1節 農業協同組合会計の導入経緯
第2節 農業協同組合会計における計算書類
第3節 取引要素の結合関係
第4節 農業協同組合に特徴的な簿記処理
第5節 農業協同組合における複式簿記の役割と必要性
(望月 信幸)

第3章 医療法人の簿記
第1節 医療法人会計の導入の経緯
第2節 医療法人会計における計算書類
第3節 取引要素の結合図
第4節 医療法人会計における簿記処理
第5節 医療法人会計における複式簿記の役割と必要性
(舩津丸 仁)

第4章 地方外郭団体の簿記―地方三公社―
第1節 地方三公社会計の導入経緯
第2節 地方三公社会計における計算書類
第3節 取引要素の結合関係
第4節 地方三公社会計における簿記処理
第5節 地方三公社会計における複式簿記の役割と必要性
(市川 紀子)

第5章 法人間の比較分析―農業協同組合,医療法人,地方外郭団体(三公社)の比較分析―
第1節 比較する視点
第2節 比較分析
第3節 考察
(望月 信幸/舩津丸 仁/市川 紀子)

第2部 貸方項目だけで使途制限を表すグループ
第6章 独立行政法人の簿記

第1節 独立行政法人会計の導入経緯
第2節 独立行政法人会計における財務書類
第3節 取引要素の結合関係
第4節 独立行政法人会計における簿記処理
第5節 独立行政法人会計における複式簿記の役割と必要性
(丸岡 恵梨子)

第7章 国公立大学法人の簿記
第1節 国公立大学における法人会計の導入経緯
第2節 国公立大学法人の特徴
第3節 国公立大学法人会計
第4節 設例による簿記処理の理解
第5節 結語
(中村 文彦)

第8章 法人間の比較分析―独立行政法人と国公立大学法人―
第1節 制度の比較:所轄省庁と適用される会計基準
第2節 使途制限のある資金の簿記処理の比較
第3節 損益処理の比較
(中村 文彦/丸岡 恵梨子)

第3部 借方項目・貸方項目の両者で使途制限を表すグループ
第9章 公益法人の簿記

第1節 はじめに:公益法人会計の導入経緯
第2節 公益法人会計における計算書類
第3節 簿記処理の特徴と取引要素の結合関係
第4節 公益法人会計における簿記処理
第5節 収益・費用と収入・支出の関係
第6節 公益法人会計基準における複式簿記の定義と意義
(佐藤 恵)

第10章 特定非営利活動法人(NPO法人)の簿記
第1節 NPO法人会計基準の導入経緯
第2節 NPO法人会計における計算書類
第3節 取引要素の結合関係
第4節 NPO法人会計における簿記処理
第5節 NPO法人会計における複式簿記の役割と必要性
(山下 修平)

第11章 法人間の比較分析―公益法人と特定非営利活動法人(NPO法人)―
第1節 比較する視点
第2節 簿記処理・会計処理の比較・考察
第3節 複式簿記の特徴の比較
第4節 おわりに
(佐藤 恵/山下 修平)

第4部 貸方項目だけで維持すべき金額を表すグループ
第12章 学校法人の簿記

第1節 はじめに:学校法人会計の導入経緯
第2節 学校法人会計における計算書類
第3節 簿記処理の特徴と取引要素の結合関係
第4節 学校法人会計における簿記処理
第5節 学校法人会計における複式簿記の役割と必要性
(小野 正芳)

第13章 社会福祉法人の簿記
第1節 社会福祉法人会計の導入の経緯
第2節 社会福祉法人会計における計算書類
第3節 社会福祉法人の簿記処理
第4節 社会福祉法人における複式簿記の役割と必要性
(石田 万由里)

第14章 法人間の比較分析―学校法人と社会福祉法人―
第1節 基本金の簿記処理
第2節 寄附による固定資産取得の簿記処理と比較分析
第3節 国庫補助金等による固定資産取得の簿記処理と比較分析
第4節 借入れによる固定資産取得の簿記処理と比較分析
第5節 引当資産・積立金の充当による固定資産取得の簿記処理と比較分析
第6節 複式簿記の必要性
(小野 正芳/石田 万由里)

第5部 複式簿記の導入過程にあるグループ―あるべき処理(展望)―
第15章 非営利組織会計検討プロジェクトにおける簿記

第1節 非営利組織会計への会計枠組みの導入経緯
第2節 非営利組織会計検討プロジェクトにおける財務諸表
第3節 取引要素の結合関係
第4節 非営利組織会計検討プロジェクトにおける簿記処理
第5節 非営利組織会計検討プロジェクトにおける複式簿記の役割と必要性
(青木 孝暢)

第16章 宗教法人の簿記
第1節 はじめに:宗教法人会計の現状
第2節 宗教法人会計における決算書類
第3節 宗教法人会計における簿記手続きと取引要素の結合関係
第4節 宗教法人会計における簿記処理
第5節 宗教法人会計における複式簿記の役割と必要性
(中野 貴元)

第17章 地方自治体の簿記―「地方公会計マニュアル」における複式記入―
第1節 はじめに
第2節 「地方公会計マニュアル」における複式簿記
第3節 まとめに代えて
(????田 智也)

第6部 非営利組織体における簿記研究の展開
第18章 非営利組織体への複式簿記導入の特徴

第1節 非営利組織体への複式簿記導入の経緯
第2節 非営利組織会計検討プロジェクト
第3節 非営利組織体に求められる財務書類
第4節 非営利組織体における複式簿記の現状と特徴
第5節 資金の性格と複式簿記の意義・役割
第6節 非営利組織体間の比較分析
(小野 正芳)

第19章 業務類似性と簿記処理―国公立大学法人と学校法人の比較―
第1節 国公立大学法人と学校法人の業務類似性と簿記処理の違い
第2節 資本金と基本金
第3節 減価償却
第4節 結び
(中村 文彦/中野 貴元/小野 正芳)

第20章 取引要素の結合関係の比較分析―非営利組織体における取引要素の結合関係の諸相―
第1節 はじめに
第2節 グループごとの取引要素の結合関係
第3節 おわりに
(????田 智也)

第21章 非営利組織体における純資産の意味
第1節 はじめに
第2節 純資産の形成プロセス
第3節 非営利組織体における純資産の機能
第4節 純資産の意義に基づく複式簿記の必要性
(大塚 成男)

第22章 モデル会計基準のその後の展開
第1節 モデル会計基準の普及
第2節 財務三基準
第3節 課題整理の提案
第4節 公益法人にモデル基準を導入した場合の簿記処理
第5節 非営利組織会計基準の共通化
(青木 孝暢)

第23章 非営利組織会計の多様性と簿記会計
第1節 はじめに
第2節 非営利組織体に対する会計規制の現状
第3節 会計管理のための簿記と決算中心の簿記についての考察
第4節 簿記会計一体説と簿記会計独立説についての考察
第5節 XBRLの視点からの考察
第6節 おわりに
(坂上 学)

結章 本研究のまとめと今後の課題・展望
(小野 正芳)

著者紹介

小野 正芳(おの まさよし)
[プロフィール]
日本大学商学部教授 博士(経済学)千葉大学

1975年 長崎県生まれ
1997年 長崎大学経済学部卒業
2004年 千葉大学大学院社会文化科学研究科修了
2005年 千葉経済大学経済学部専任講師,准教授,教授を経て,
2022年 日本大学商学部教授
2024年 税理士試験委員

日本簿記学会簿記実務部会部会長(2018~2021年)を通じて簿記実務の側面から簿記の機能を研究するとともに,日本簿記学会簿記教育部会(2008年~2010年)をきっかけに設立された簿記教育研究会にて,よりよい簿記教育についての研究を進める。

[主な著作]
『現場で使える簿記会計』(上野清貴編著)分担執筆(第1章:会社の活動と会計記録),中央経済社,2017年。
『ビジネスセンスが身につく会計学』(成川正晃編著)分担執筆(第4章:負債項目),中央経済社,2018年。
『27業種別 簿記・会計の処理と表示』編著,中央経済社,2021年。