

香川大学経済研究叢書/37 サステナビリティ関連財務情報開示の新展開
- 本の紹介
- 気候変動問題を中心とするサステナビリティ関連財務情報の開示の理論を整理し、基準および枠組みの動向と特徴、さらに企業・経営者への影響と対応を提示する研究書。
目次
第1章 問題意識の所在
第1節 本書の背景
第2節 本書の目的
第3節 本書の意義
第4節 本書の構成
第2章 サステナビリティ情報の展開
第1節 財務情報と非財務情報
第2節 財務情報の有用性と限界
第3節 サステナビリティ情報の拡大
第4節 サステナビリティ情報開示の意義と展開
第5節 結び
第3章 気候関連財務情報開示(TCFD提言)の意義
第1節 TCFD提言の問題意識と必要性
第2節 TCFD提言への関心と義務化の動向
第3節 TCFD提言の義務化の背景
第4節 TCFD開示の義務化の影響
第5節 結び
第4章 TCFD枠組みの有用性
第1節 気候関連リスクと機会および財務的影響
第2節 中核要素と推奨項目
第3節 シナリオ分析とその意義
第4節 結び
第5章 TCFD開示の仕組みの有効性と国際的動向
第1節 仕組みの有効性
第2節 国連の動向
第3節 各国の動向
第4節 結び
第6章 IFRS財団によるサステナビリティ基準開発の準備
第1節 気候関連基準の統合に向けた国際的組織の協同
第2節 IFRS財団による対応と信頼
第3節 IFRS財団とISSB基準の動向
第4節 重要性とマテリアリティの概念
第5節 結び
第7章 IFRSサステナビリティ開示基準(ISSB基準)の展開
第1節 ISSB基準の公表
第2節 ISSB基準の概要
第3節 IFRS S2号をめぐる動向
第4節 サステナビリティ開示の保証に関する動向
第5節 結び
第8章 日本におけるサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の公表
第1節 日本におけるISSB基準の導入とSSBJ基準の公表
第2節 SSBJ基準の概要
第3節 ISSB基準とSSBJ基準の差異
第4節 結び
第9章 IFRS会計基準(IFRS基準)によるISSB基準への対応
第1節 IFRS基準の準備作業
第2節 IFRS基準による公開草案の公表
第3節 結び
第10章 サステナビリティ関連財務情報開示の課題と提言
第1節 サステナビリティ関連財務情報開示の課題
第2節 サステナビリティ関連財務情報における経営者への提言
第3節 結び
- 担当編集者コメント
- 気候変動問題への企業の対応を財務情報開示の視点から考究
現在、気候変動問題について、グローバルな合意のもと、世界レベルでの対応が急がれています。日本でも、とくにSDGsをとおして、この問題に対する関心が高まっているものの、その危機意識が企業行動にどの程度結実しているかは、必ずしも肯定的な意見ばかりではありません。
本書は、気候変動問題を含むサステナビリティ情報の開示からサステナビリティ関連財務情報の開示に至る移行に注目し、TCFD提言およびISSB基準の役割と急展開する義務化に関する背景を理論的に整理しています。そのうえで、サステナビリティ関連財務情報の開示を企業に要請することが企業の経済活動を変容させるプロセスをとおして、当該開示の経済的な意義を明らかにします。
第2次トランプ政権によりこの問題は後退している向きもありますが、昨今の気候変動問題が経済社会に重要な影響を及ぼしており、喫緊の課題であることは間違いありません。
朴先生は、環境情報開示で博士論文を執筆されており、それ以来長年このテーマに取り組まれてきました。
本書は、世界の動向をふまえ、長年の研究を蓄積されたことから今考えるべき視点を提示されています(10章)。
研究者はもちろんですが、経営者・サステナビリティ関連担当者にもぜひお読みいただきたい研究書です。