- 本の紹介
- 前近代的と批判されてきた日本的経営は、じつは多面評価や実力主義など今日見直されるべき長所を数多く備える。現在の経営環境にこそ適応する日本的なあいまいさを生かす人事管理論を展開。
目次
日本的人事管理論
■組織と個人の新しい関係
目次
まえがき
序章 なぜ今、個人尊重か?
1 「個人尊重なくして繁栄なし」
顧客満足より、従業員満足を優先する企業
自発的なモチベーションが不可欠な時代に
より高次の「個人尊重」へ
2 日本的経営と個人尊重
日本的経営の光と影
「近代化」が残した負の側面
今こそ日本的経営の再評価を
第1章 知識社会か?知恵社会か?変わる仕事と能力観
1 「ポスト工業化」で問われる能力
「優等生離れ」
ポスト工業化社会の能力観
消えた「デジタル・デバイド」
知識、学力は不要になるのか?
2 能力開発に対する二つの誤解
「企業特殊的能力より、一般的能力」?
「OJTよりOFF‐JT」?
日本型人材育成の再評価
年功制復権の可能性も
第2章 「評判」は非合理的か?―人事評価のあり方―
1 評価の厳格化と、その問題点
日本企業における人事考課
人事考課に内在する問題点
新たな評価手法とその効果
2 選別主義の限界
強まる選別主義
動機づけの質が問題に
選別に無関心な従業員の増加
コア能力を評価できない時代に
「プロセス重視」は両刃の剣
「人間性評価」の非人間性
3 選別から適応へ
適応主義の考え方
「評価」より「評判」
健全な「評判」を形成するために
第3章 職務は厳格に定義すべきか?―処遇と配属のポリシー―
1 制度化の弊害
職務給の失敗
職能資格制度の功と罪
職務主義を超える82
2 「草の根的実力主義」の復活を
形式上は年功でも、実質は実力主義
制度は独り歩きする
「組織の論理」からの脱却を
中国企業から学べること
日本企業にも登場
3 人事異動の改革
真の内部労働市場をつくるには
インセンティブの活用をタブー視しない
日本的経営の潤滑油として
第4章 金銭で〞やる気〝を引き出せるか?
―モチベーション戦略の見直し―
1 成果主義の功罪
理念には賛成だが、運用には不満
一律的な制度の限界
2 処遇と動機づけの切り離し
処遇の目的は公平感・納得感を高めること
例外のみを特別扱いする
受動的な動機づけが通用しない時代に
3 金銭から承認へ
隠れた承認欲求
「日常の承認」への偏り
「楽しい」「面白い」だけでよいのか
立身出世主義はよみがえる?
4 認められる職場づくり
「ほめる文化」と表彰制度
三種類の表彰制度
大部屋の長所を生かす
外の世界で認められるには
個人名を出すか否かの判断基準
キャリア支援策としての「のれん分け」
第5章 「全社一丸」は可能か?―組織と個人の関係―
1 自立型経営とは
「一体化」をどこまで求めるか
市場・顧客が仲介する関係
専門的な職種では「間接統合」が有効
日本的な「ゆるさ」を生かす
2 新しいチームワーク
「集団主義がチームワークを良くする」という固定観念
ダイバーシティと職人型チームワーク
3 変わる組織の役割
機械的組織と有機的組織―それぞれの功罪
組織は仕事をするための「場」
日本型組織をどう変えるか?
終章 日本的経営再生のために
1 21世紀に生かせる日本的経営のエートス
「あいまいさ」の再評価を
成果主義を超えて
「あいまいさ」を生かすシステム
2 再生への課題
ルールによる権利保障
オープン化
あとがき
著者プロフィール
太田肇(おおたはじめ)
1954年,兵庫県但東町生まれ。
神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。
京都大学経済学博士。
三重大学人文学部助教授,滋賀大学経済学部教授などを経て2004年より同志社大学政策学部教授。
専門は組織論,人事管理論。
とくに個人を生かす組織について研究。
著書(単著):
『プロフェッショナルと組織』(同文舘,1993年,組織学会賞)
『日本企業と個人』(白桃書房,1994年)
『個人尊重の組織論』(中公新書,1996年)
『仕事人の時代』(新潮社,1997年)
『仕事人と組織』(有斐閣,1999年,経営科学文献賞)
『「個力」を活かせる組織』(日本経済新聞社,2000年)
『ベンチャー企業の「仕事」』(中公新書,2001年,中小企業研究奨励賞本賞)
『囲い込み症候群』(ちくま新書,2001年)
『選別主義を超えて』(中公新書,2003年)
『ホンネで動かす組織論』(ちくま新書,2004年)
『認められたい』(日本経済新聞社,2005年)
『「外向きサラリーマン」のすすめ』(朝日新聞社,2006年)
『お金より名誉のモチベーション論』(東洋経済新報社,2007年)
『承認欲求』(東洋経済新報社,2007年)
分担執筆:
『ME 技術革新下の労働』(中央経済社,1989年)ほか多数