- 本の紹介
- 辛口の語り口に支持者の多いベテラン研究者が、企業法務担当者のために行政との「争い方」を伝授。法治国家を実現するために、役所を説得するための法的理論武装を提言する。
目次
対行政の企業法務戦略
目次
はしがき
プロローグ1
第1節 行政関連法務戦略の重要性
1 行政規制を知り,違法がないようにコンプライアンス体制を構築
する必要性
2 行政相手の理論闘争の必要性
3 行政相手の訴訟の増加 ……ほか
第2節 企業の側から見た行政法戦略
第3節 法と経済学とリスクマネジメントの視点,ノーアクションレター
1 リスクマネジメント
2 ノーアクションレターの活用と対策
第4節 行政から漏れる企業情報―導入的事例
1 非公開のつもりの情報が公開される!!―企業情報公開への対応
2 障害者雇用率の公開
3 三六協定の定める残業協定情報 ……ほか
第1章 守られない法治行政の大原則
第1節 法治行政の原則
1 権利義務に関することには法律の根拠が必要
2 行政活動には法律の具体的かつ合理的な根拠が必要
3 具体例を精査する必要
第2節 ある開発許可をめぐる紛争―2つの開発許可を得た工事で,
隣の開発地を通って土砂を搬出してはならないなどの規制
1 2つの開発許可を分離せよとの命令
2 都計法に照らして精査すれば
3 国家賠償,職権濫用罪は?
第3節 規制根拠の不明確さ―ラブホテルを建基法で規制できるのか
1 風営法上のラブホテル
2 「類する」との規定で規制?
第4節 およそ合理的な根拠のない規制―パチンコ店進出を阻止する
診療所の設置
1 先手必勝の出店妨害
2 パチンコ店は診療所の環境を害する?
第5節 無理難題の同意取得・指導行政への対応,行政手続法
1 同意行政は法治行政違反
2 高層建築阻止の指導に対する対処方法
3 産廃処分場の設置と住民同意 ……ほか
第6節 行為時に施行されていなかった法律が適用!!
―法律の遡及適用
1 事業着手直前規制は行きすぎ
2 土壌汚染と宅建業法―三菱地所の土壌汚染隠し
3 地下水汚染と浄化命令 ……ほか
第2章 法令の適用順序―行政法規の適用関係は複雑
第1節 行政手続法と道交法の免許取消・停止
第2節 不服申立前置主義
第3節 異議申立てと審査請求の優先順位
第4節 法定受託事務か自治事務か
第5節 行政訴訟
第6節 附則を見よ
第7節 生活保護を例として
第3章 行政手続法を活用せよ
第1節 行政手続法違反対策
1 行政手続法のシステム
2 審査基準の不設定
3 理由附記の不備は聴聞手続で適法化されるか
第2節 ある開発許可事件を例に
1 弁明手続の瑕疵
2 処分の理由附記義務違反
第4章 役所からの情報収集方法と民訴法92条による閲覧制限
第1節 労基署の災害調査復命書―文書提出命令
1 文書提出命令制度の改正
2 最高裁の判断
3 行政文書提出の枠が広まる ……ほか
第2節 不起訴事件の供述調書,民事訴訟へ転用可能
1 不起訴記録不開示の原則
2 法務省の限定的公開方針
3 法務省の部分的公開も一歩前進
第3節 最高裁:刑事裁判の非公開資料,「民事で利用可能」
1 刑事訴訟法47条但書の裁量権濫用論
2 高裁の判断
3 最高裁の判断 ……ほか
第4節 記録閲覧の制限
1 記録閲覧制限の申立て
2 黒塗りの推計課税文書
3 文書提出命令と記録閲覧制限
第5章 改正行政事件訴訟法の活用
第1節 行訴法改正の要点
第2節 出訴期間,管轄,裁判部
1 出訴期間
2 管 轄
3 裁判部,出直し作戦
第3節 原告適格の拡大
1 行訴法の改正
2 最近の判例:小田急最判ほか
3 杉並公害病など
第4節 義務付け訴訟
1 勘違いの義務付け訴訟否定論
2 改正行訴法の定める2類型
3 義務付け訴訟の不備
第5節 差止訴訟
1 差止訴訟の要件
2 国旗国歌訴訟予防訴訟東京地裁判決
第6節 確認訴訟
1 当事者訴訟安楽死論争
2 確認訴訟活用のメッセージ
3 確認訴訟活用事例
第7節 仮の救済こそ訴訟の死命を制す
1 当事者訴訟における仮処分,特に仮の確認など
2 仮の義務付け
3 仮の差止め ……ほか
第8節 訴訟で肝心なのは,立証責任と裁量の考え方
1 行政側の客観義務・説明義務
2 行訴法23条の2の釈明の特則の活用
3 裁量濫用を原告が立証するという発想の放棄
第9節 係争中の事態の変化,違法判断の基準時
1 原発の安全性欠如の事後的認識
2 マンション建築阻止のための土地利用規制の強化
3 パチンコ店出店紛争
第10節 事情判決
1 言い出しにくい事情判決制度
2 事情判決を有利に活用せよ
第11節 行政訴訟の印紙代は13,000円に
1 印紙代からみても割に合わない行政訴訟
2 印紙代を軽減する解釈論
第12節 印紙代はなるべく関連請求併合で
第13節 弁護士費用回収
1 国家賠償訴訟で弁護士費用回収
2 住民訴訟の場合
第6章 注目すべき実践的解決策
第1節 無茶な都市計画事業とどのように争うか
1 はじめに―無茶苦茶な都計事業
2 事業を止める訴訟の起こし方
3 本案審理 ……ほか
第2節 耐震強度の偽装,国家賠償など
1 耐震強度偽装の国家賠償
2 政府補助と支援
3 居住者の負担は? ……ほか
第3節 税金が会社を潰す―儲けがないのに巨額の税金!!
1 税金は儲けにかかる
2 幽霊ビルに巨額の税金
3 都市計画税を建物にかけることは許されるのか
第4節 民事法と公法の話題
1 民事契約も,公法理論で無効になる!!
2 工場敷地に国有地が!! ―畦道,水路の取得時効
3 竣功認可を得ていない埋立地の時効取得 ……ほか
第5節 学歴詐称,学歴逆詐称による免職
1 短大卒が高卒と偽って採用,諭旨免職
2 学歴逆詐称は許されないのか,免職相当か
第6節 職員不正採用対策
1 裁量濫用的不採用は争える
2 救済方法は?
3 本来合格するはずだとの証明は?
第7節 混合診療禁止の違憲,反対解釈の誤謬
1 混合診療禁止とは?
2 厚労省見解:特定療養費の制度が混合診療禁止の根拠
3 混合診療禁止は違憲 ……ほか
第8節 神戸空港隣接用地は安心して買えるか?
1 視界ゼロの神戸空港
2 民間売却地から飛行機が地上走行
3 あなたは無許可のエプロン,誘導路から飛行機に乗る勇気が
あるか? ……ほか
第9節 長沼町散骨禁止条例
1 散骨ビジネスに禁止条例で待った!!
2 協議義務は?
3 散骨(散灰)を禁止できるか ……ほか
第10節 保険医療機関の指定拒否
1 病院過剰地域では保険拒否
2 勧告の処分性
3 保険医療機関指定拒否の違法性
終 章 行政との交渉術
1 まず頼むのは政治家?
2 弁護士への相談の仕方
3 まず交渉を
4 交渉窓口
5 交渉経過は秘密に
6 役所の対応を変えさせるには
7 警察への告訴・告発
8 将来の行政規制を考慮して
9 裁判になったら
著者プロフィール
阿部 泰隆(あべ やすたか)
現職 中央大学総合政策学部教授。弁護士(東京弁護士会)。
法学博士(東京大学・1972年)。
略歴 1942年生れ。
1964年3月 東京大学法学部卒業。
1964年4月 東京大学法学部助手。
1967年8月 神戸大学法学部助教授。
1977年4月 神戸大学法学部教授
1993年9月〜12月 ドイツ・トリア大学客員教授(環境法)。
2000年4月 神戸大学大学院法学研究科教授。
2005年4月より現職
単著
『フランス行政訴訟論』(有斐閣,1971年),
『行政救済の実効性』(引文堂,1985年),
『行政裁量と行政救済』(三省堂,1987年),
『国家補償法』(有斐閣,1988年),
『国土開発と環境保全』(日本評論社,1989年),
『行政法の解釈』(信山社,1990年),
『行政訴訟改革論』(有斐閣,1993年),
『政策法務からの提言』(日本評論社,1993年),
『大地震の法と政策』(日本評論社,1995年),
『政策法学の基本指針』(弘文堂,1996年),
『行政の法システム上・下[新版]』(有斐閣,1997年),
『定期借家のかしこい貸し方・借り方』(信山社,2000年),
『政策法学講座』(第一法規,2003年),
『行政訴訟要件論』(弘文堂,2003年),
『行政法の解釈(2)』(信山社,2005年),
『やわらか頭の法戦略』(第一法規,2006年)ほか。
その他の著書・編共著・論文(約400)・判例評釈(約120)などは,http://www.ne.jp/asahi/aduma/bigdragon/tyosakuitiran.htmlに掲載