『ボード・サクセッション』(2021年6月特集)

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『ボード・サクセッション』(2021年6月特集)

2021年4月6日、「コーポレートガバナンス・コード」と「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂案が公表されました。企業と投資家、さらには社会やそれらを取り巻く会計士や税理士といったプロフェッショナルにとって重要な内容が盛り込まれています。
本特集では、改訂の重要ポイントを理解するのにおすすめの書籍を紹介します。
今回は、取締役会の監督機能を高めるうえで、示唆に富む一冊をご紹介します。

Q1 本書の内容を教えてください。

帯を見てもらうのが、一番よくわかると思いますので、帯をご覧ください。
帯に書かれているとおり、1年や2年といった短期ではなく、長期的(もっというと持続的、つまり半永久的)に機能する取締役会をつくり、運営するためにはどうすればよいのか、ということを欧米の事例をとりあげながら、解説しています。
そして、「Q4 本書のポイント」の項目でも後ほど触れますが、著者は経営コンサルタントであることから、弁護士の先生がご執筆された会社法の解説書とは異なり、経営的、マネジメント的視点で、今後求められる取締役会像を解説している、ということになります。


『ボード・サクセッション』帯


Q2 本書のテーマが重要視される背景を教えてください。

本書の大きなテーマは、「コーポレート・ガバナンス」です。
ご承知の通り、コーポレート・ガバナンスは古くて新しいテーマです。議論そのものは、1990年代からありましたが、2015年のコーポレートガバナンス・コード(CGC)の議論から、上場企業を中心に、制度対応が一気に進むようになりました。
そして、つい最近(2021年4月)、公表された「コーポレート・ガバナンス・コード」等の改訂案では、取締役会のさらなる機能強化が求められました。つまり、持続的にガバナンスを発揮できるような取締役会の構築、運営が求められることになったわけです。
したがいまして、今後は、どのような観点で取締役会の機能強化を行えばよいのかについて、多くの企業が具体的に検討することになり、本書が大いに役立つと思われます。


日本におけるガバナンス整備(本書掲載の図表より)


Q3 本書はどのような人に、あるいはどのような場面で読んでいただきたいですか?

上場企業の経営陣をはじめとした会社の組織、機関を設計する方々に是非とも読んでいただきたいです。


Q4 本書のこだわり、ポイントを教えてください。

Q1でも触れましたが、本書は会社法やコーポレート・ガバナンスコードの直接的な解説書ではない、という事が最大のポイントです。
コーポレート・ガバナンスの解説書の多くは、弁護士の先生による会社法や関連法規の条文の解説であることが多いです。これらの書籍は、制度の趣旨や、守らなければならないことを理解するためには役立ちますが、それらは、会社経営としては、必要最低限のことでしかありません。
これらの制度を利用して、この先、どのように経営に活用していくのか? 監督機能が強固な取締役会はどのように設計すればよいのか? こうした取締役会が持続的に機能するためにはどのような仕組みが必要なのか? といった疑問には必ずしも有効な回答が与えられていませんでした。
本書は、ガバナンス先進国の欧米の事例を数多く取り上げており、日本に今後求められる取締役会強化の示唆を具体的に示してくれています。




Q5 読者の方へのメッセージをお願いします。

今まで日本では、「ボード・サクセッション」という用語は、「後継者育成」の意味で捉えられることが多かったのですが、2021年4月の「コーポレート・ガバナンス・コード」等の改訂案の公表以降は、「取締役会強化」の意味で広く捉えられる流れができてくると思います。
本書は、その先鞭に位置づけられる書籍だと思います。
ぜひともご一読ください。