特集バックナンバー
学会、経済関連団体より、2021年4月から10月に表彰された書籍3点をご紹介。担当編集者に書籍の内容や企画背景、受賞した賞について尋ねてみました。読書の秋に、最高水準の"知"の息吹を感じてみませんか。
今回は、ファミリービジネス学会 ファミリービジネス学会賞(2021年) 著書の部受賞書籍を紹介します。
Q1 本書の内容を教えてください。
本書は、「ファミリービジネス」のガバナンス(企業統治)をテーマとした書籍です。
「ファミリービジネス」ときくと、ゴッドファーザーを代表とするマフィアのビジネスをイメージする方も多いかもしれませんが、本書で扱うファミリービジネスはそうではありません。(笑)
ファミリービジネスとは、「同族経営」「同族企業」の意味です。日本企業の多くは、ファミリービジネスです。
「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」などと聞くと、遅れた会社のようにも見られる傾向がありますが、最近の研究結果では、非ファミリービジネスと比べてファミリービジネスの方が業績面でも優れていることが分かってきています。
老舗企業と呼ばれる100年以上続いている企業のほとんどがファミリービジネスですし、トヨタをはじめ、すぐれた大企業もファミリービジネスであることが多いです。
〔図〕 パラレル・プランニング・プロセス(PPP)・モデルの5つのステップ
(出所) 本書より掲載
そして、ファミリービジネスには、一般的なコーポレート・ガバナンスとは異なる統治方法(ファミリーガバナンス)も必要だといわれています。
本書は、こうしたファミリーガバナンスをテーマとして、理論面と実務面の両方をわかりやすく解説した書籍です。
Q2 ファミリービジネス学会賞の特徴を教えてください。
Q1で説明した「ファミリービジネス」(=同族経営)にかかわる研究者や経営を実践している実務家の研究と交流の場、および日本からの発信の場として設立された学会である「ファミリービジネス学会」が年一度授与する賞です。
「ファミリービジネスに係わる学問の向上発展に資するため、本学会会員の研究を奨励し、優れた業績を顕彰することを目的とする。」とされています。
Q3 本書のどのような点が評価されたと思いますか?
2つあると思います。1つめは、ファミリービジネス特有のガバナンスである「ファミリーガバナンス」を正面から取り扱った事です。ファミリーガバナンスに関する研究は、まだ少ないので、この分野におけるパイオニアとして高く評価されたのだと思います。
2つめは、詳細な事例が掲載されている事です。特に事業承継に関する実務的なスキームも解説されているところも高く評価されたのだと思います。
〔図〕 ビジネスニーズとファミリー期待のバランスをとる5つのC
(出所) 本書より掲載
Q4 読者へのメッセージをお願いします。
本書は、学者、コンサル、信託銀行によるコラボから生まれた作品といっても過言ではありません。
オーナー企業にとって、「後継者育成」「事業承継」は、最大の関心事であり、この問題に、理論面・実務面で豊富な示唆を本書は与えてくれています。
学会賞も受賞した本書の高品質な内容を是非ともご一読いただきたいと思います。
- 『ファミリーガバナンス―スムーズな事業承継を実現するために』
階戸 照雄 編著
加藤 孝治 編著
三井住友信託銀行株式会社 著
デロイト トーマツ税理士法人 著
定価:2,695円(税込)
発行日:2020/06/03
A5判 / 204頁
ISBN:978-4-502-34471-8