『逐条放談 消費税のインボイスQ&A』(『旬刊経理情報』2022年2月10日号)

書評

逐条放談 消費税のインボイスQ&A旬刊経理情報』2022年2月10日号の書評欄(「inほんmation」・評者:藤曲 武美 氏)に『逐条放談 消費税のインボイスQ&A』(熊王 征秀・渡辺 章〔著〕)を掲載しました。







2023年10月1日に消費税の適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス方式)が導入される。本書は、国税庁が公表した「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和3年7月改訂)」についての、主に実務家向けの解説書である。

税理士であるお二人の著者が、実際に行った対談をベースにして全部で問あるQ&Aに対して検討した議論を書籍化したものである。本書のタイトルが「対談」ではなく、「放談」とされているように、本書の特徴は、各Q&Aに対して両著者が思うままを遠慮せずに、語っているのが大きな特徴である。また、両著者の対話のテンポが非常によい。お互いをよく承知している間柄であることもあって、気兼ねがなく、ストレートに言いたいことを言い合っている感じが伝わってくるのもよい。

外税方式の表示を捉えて「こういう愚策は、転嫁対策特別措置法と一緒に寿命が切れ、総額表示が復活して当然なのです」、インボイス制度の導入理由とされる「複数税率に対応するため」についても、「私は詭弁だと思っています。......あくまでも、インボイスを導入することが一番の目標だったのだろうと思います」。このように、歯に衣きせぬストレートな表現が随所に出てくるのは、読んでいる者にとっては、小気味よくかつ面白いところである。

また、実務家向けの書であることから、随所に実務上で留意すべき点が端的に指摘されているのも本書の特徴である。

「気を付けないと怖いですね」、「訴訟率ナンバー1、ナンバー2のトラブル事例ですね」、「間違いの多いトップ、ベストスリーである」など実務家が間違えやすい箇所をわかりやすく、かつインパクトのあるフレーズをもって伝えるように留意されている点は、実務家が読む税の専門書としては、ありがたい点である。

もちろん、お二人の著者は消費税については、業界でも最も精通している専門家である。本書でも消費税におけるインボイスの重要性が、随所で語られていて、消費税のしくみの基本が、読んでいくうちに自然と理解できるようになっている。また、インボイスの導入にあたって一番の問題とされている事務負担の増大や免税事業者の対応についても、「免税事業者はどう動くか」との一章を設けて、「改正簡易課税制度」を提案している点は、実務家ならではの注目に値する提案である。

そして、お二人の著者が口をそろえて強調されているのは、「インボイス制度は準備が100%」、「早めに準備すること、すなわち早めに動くことが重要」であるということである。インボイス制度導入の最前線に立つ実務家としては、あらためて肝に銘じておくべきことである。

税金の専門書は、どちらかというと細かな要件や条件などを読み逃すまいと、眉間にしわを寄せて読むという感じのものが多いと思う。しかし、この本書は、税金の専門書でありながら、著者たちの面白いトークが随所にみられて、飽きずに読むことができる本である。インボイス制度の導入に関係する方たちは、ぜひ手に取られて一読されることをお勧めする。

藤曲 武美(税理士)

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