『実践Q&A 予算管理のはなし』(『旬刊経理情報』2022年2月20日号)

書評

実践Q&A 予算管理のはなし旬刊経理情報』2022年2月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:土谷 悠介 氏)に『実践Q&A 予算管理のはなし』(芳野 剛史〔著〕)を掲載しました。







 会社経営者としてこの本を読んで大変勉強になった。
 また、予算管理というものは大企業や大きめの中堅企業がするもの、という認識をもっていたことが間違っていたことにも気づかされた。
 読み終えての感想は予算管理に取り組んでみよう、と一歩踏み出せそうな気がしている。
 本書では予算に対して、「現場目線」で生じる素朴な疑問に真正面から答えており、「予算ときいて何からしたらいいのか」という疑問が浮かぶような人こそ読むべきである。著者は冒頭で予算管理を「利益管理手法」と定義し、まずはその必要性を理解させてくれるところからはじまる。全体像を解説したうえで、近年の新しいマネジメント手法についても紹介し、予算管理を体系的に学ぶことができる。
 項目1つひとつがQ&A方式であるところも特徴的だと思う。
 本が苦手で通して読みきれない人にも、1つの項目ごとに答えがでるという内容はとてもやさしく感じた。
 図解されている部分もとても多い。単に文章を読むだけよりも、考え方のイメージがつきやすく、とても理解しやすい内容になっている。

 本書は、全5章で構成されている。第1章は予算管理の基本、第2章は予算編成のポイント、第3章は予算による組織マネジメント、第4章は近年の新しいマネジメント手法、第5章は注目のKPIマネジメントという構成になっている。
 第1章はまさに予算管理入門からはじまる。苦手な人でもさらっとわかりやすく予算管理の基本が学べる。企業の予算と日常的な買物を比較する例など、基本的なしくみからわかりやすく解説されている。
 第2章では、時間がかかる予算管理のどこからどのように手をつけていくのか、という内容になっている。難しそうな印象を受けるが、実は本書のとおりに考えていくだけで売上、販管費、製造原価、在庫等の予算管理ができる。
 第3章では、予算の管理サイクルや経営会議の必要性など、数字ではない部分の考え方や組織マネジメントについてわかりやすく解説されている。最後にはRPAについても解説されており、IT好きな方には大変興味を引く内容だと思う。
 第4章、ここでは予算不要論に触れている。予算管理もやり方を間違えると不正操作等につながることも書かれている。ABM、ABB、OKRなどの解説もこの章でされている。初めて聞いた言葉だったが理解しやすく解説されている。
 第5章では、KPIについて解説されている。また予算とKPIの関係についても触れられている。伝説的事例として紹介されている日産のKPIマネジメントの例もとても興味深い内容であった。

 予算についてこれまでなんとなく難しいと考えていたが、大変読みやすく解説されているのであっという間に予算管理を学べた。社内で共有し、しっかり予算管理できる組織を作っていくために何度も読み返したいと思う。

土谷 悠介(東盛運輸㈱ 代表取締役)

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