『実務解説 グループ通算制度の税効果会計―繰延税金資産の計算と回収可能性の検討』(『旬刊経理情報』2022年3月20日号)

書評

実務解説 グループ通算制度の税効果会計―繰延税金資産の計算と回収可能性の検討旬刊経理情報』2022年3月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:荒木 隆志 氏)に『実務解説 グループ通算制度の税効果会計―繰延税金資産の計算と回収可能性の検討』(足立 好幸〔著〕)を掲載しました。







 本書は、連結納税会社が税効果会計を適用する場合の解説書として実務家に広く親しまれ、版が重ねられた『連結納税の税効果会計』を、グループ通算制度の導入に合わせて全面的に改訂し、新たに「グループ通算制度の税効果会計」としてまとめられたものである。

 グループ通算制度とは、2022年4月1日以後開始事業年度から従来の連結納税制度の趣旨を引き継ぐものとして導入される制度であるが、連結申告をやめて単体申告として事務負担の軽減を図る簡素化の観点、組織再編税制などとの公平性、中立性を保つ観点などから見直しが行われている。

 連結納税制度の時代同様に、グループ通算制度の税効果会計を理解し、実務を行うのは、会計の実務家・専門家にとっても比較的ハードルが高い。前提としてグループ通算制度の損益通算や開始・加入前後で異なる繰越欠損金の取扱いなどの税金計算のしくみを理解する必要があり、かつ、地方税にはグループ通算制度の適用はないため別に取り扱う必要があるなど、比較的複雑な計算過程が要求されることが、その理由として挙げられる。

 本書では、第1部「税効果会計に係るグループ通算制度の取扱い」において、まずはグループ通算制度の税金計算のしくみおよび、第2部「単体納税制度における税効果会計」において、基本的な税効果会計の考え方を解説し、第3部「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(実務対応報告第42号)」ではグループ通算制度特有の税効果会計の適用指針を解説している。

 以上を踏まえたうえで、第4部「グループ通算制度における税効果会計」で、グループ通算制度の税効果会計の具体的な手順を、繰延税金資産の回収可能額の計算方法を中心にケーススタディを交え詳細に解説し、第5部「グループ通算制度の創設初年度に係る税効果会計」で、ケース分けして制度創設時の論点を解説し、従来連結納税に触れてこなかった読者もグループ通算制度の税効果会計実務を理解できるよう、順を追って網羅的かつ丁寧な解説が行われている。

 さらに、連結納税制度と異なる点については、その差異についての解説も行われており、従来から連結納税制度の税効果会計に触れていた読者に対しては、簡潔に理解を深められる配慮が行われている。

 また、ケーススタディに対応したグループ通算制度の繰延税金資産の回収可能額の計算シート(表計算ファイル)をダウンロードできる点は本書の特徴であり、読者が実務に臨むにあたって大いに参考になると思う。

 本書の著者は、連結納税制度導入当初から、グループ法人税制の利用による企業価値の向上に取り組み、税務・会計実務をリードしてきた第一人者である。本書も一貫して実務に配慮されており、グループ通算制度の税効果会計に係る実務家必携の書になるであろう。

荒木 隆志(トランザクション・サポート㈱ 代表取締役 公認会計士)

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