『定型業務を効率化する実践RPAガイドブック』(『旬刊経理情報』2022年8月20日・9月1日号掲載書評)

書評

定型業務を効率化する実践RPAガイドブック
旬刊経理情報』2022年8月20日・9月1日号の書評欄(「inほんmation」・評者: 住友 幸司 氏)に『定型業務を効率化する実践RPAガイドブック 』( 芳野 剛史〔著〕 )を掲載しました。







RPAは、パソコンで行うデスクワークをロボットが人間に代わって作業するソフトウェアのことだ。すでに大手企業では半数近い会社が何らかの形でRPAを利用しており、現在は中小企業へも徐々に浸透しつつあるという。

本書は、著者が約6年間にわたりコンサルティングファーム等でRPAに携わってきた経験をもとに、その集大成としてRPAによる業務効率化のノウハウを1冊にまとめたものだ。

RPAで最初に疑問に思うことは「どのような業務に使えるのであろう」という点だ。定型業務といっても数多くあるし、具体的な事例がないとイメージがわかない。その点、本書は「RPA活用例集」として36種類もの具体的な活用例を示しており、経理業務、人事業務、営業業務など、業務別の活用例を実際の事例にもとづいて説明している。ここを読むだけでも自社への活用イメージが掴めるはずである。

RPAの活用方法は非常に多岐にわたり、業界によっても使われ方は千差万別であるが、本書によるとRPAが提供している本質的な機能はシンプルで、基本的な適用パターンは4つしかないという。具体的には、①転記、②資料作成、③メール連絡、④Web連携の4つに集約され、この基本機能を押さえることが自社への活用方法を見出す近道だという。ここは理解しておきたい部分だ。

本書の特徴は、業務の効率化を成功させるためのポイントを簡潔に整理しているところだ。たとえば、第3章では「改善案検討における7つのセオリー」、第5章では「プロジェクトを成功に導く8つのポイント」としてまとめている。面白いところは、プロジェクトが頓挫するにはパターンがあるとし、無関心な人、多忙で後回しにする人、社内のパワーゲームに翻弄する人など、典型的な阻害要因を挙げ、対応策を論じている部分だ。このような心の機微を理解することも活動には必要なのであろう。いずれにしても、これら業務効率化のポイントはRPA導入に関わるメンバー全員が共通認識として理解しておけば、改善がスムーズに進むのではないだろうか。

もう1つ特徴的な点は、運用体制や継続的改善について詳しく解説しているところだ。RPA本の多くは設計や構築が中心となるが、業務改善という観点では導入しておしまいではなく、むしろ導入してからが実際に効果を刈り取る「本番」となる。導入後の体制や改善活動について落とし穴や問題点、解決手段を詳述しているところは非常に示唆に富んでいる。ほうっておくと改善活動が自然消滅したり、徐々にRPAが使われなくなったりすることもあるため、導入後の推進体制やプログラムは重要となるであろう。

また、本書はシステムベンダーの立場ではなく、現場の実務者の立場に立って書かれており、RPAについて知りたい人、導入を迷っている人や、これから本格的に展開しようとしている人には、ぜひ読んでほしい一冊である。

住友 幸司(NTTコムウェア㈱NTTIT戦略事業本部 ビジネスパートナー部 コンサルティング部門 専任部長)

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