『類型別 不正・不祥事への初動対応』(『旬刊経理情報』2023年4月1日号掲載書評)

書評

類型別 不正・不祥事への初動対応
旬刊経理情報』2023年4月1日号 の書評欄(「inほんmation」・評者: 守田 達也 氏)に『類型別 不正・不祥事への初動対応 』( 山内 洋嗣・ 山田 徹〔編著〕 )を掲載しました。







本書はコンプライアンス・危機管理領域において弊社も常々頼りにさせていただいている山内洋嗣先生ら強力な弁護士の先生方の知見と各企業の第一線で活躍されている方々の経験が結集されたコンプライアンス担当者向け良書である。

自身の能力開発を志すコンプライアンス担当者の方だけでなく、組織内のコンプライアンス対応力の土台固めに課題感を持つコンプライアンス責任者の方にもご活用をお勧めしたい一冊である。

本書はさまざまなコンプライアンス問題の対処に苦心する実務家にとっても押さえておくべき基本およびポイントがわかりやすく、かつ無駄がなく整理されている。会計不正などの不正・不祥事の類型別の解説に加えて、「4つの心得」(「序章」記載)と「不正・不祥事への初動で大事にするべき4つの力」(「あとがきに代えて」記載)も必読である。

弊社は総合商社として、世界各地でさまざまな事業を運営しており多様な不正・不祥事案件に直面することが多いが、本書はしがきでの問題提起の例に漏れず、弊社グループにおいてもコンプライアンス業務対応力の底上げ、特に適切な初動対応のための土台固めは1つの大きな課題である。そのため、ノウハウ伝達のための連絡会やマニュアル作成などさまざまな策を講じていた弊社のコンプライアンスチームにとっては、本書はまさに渡りに船であった。

私は本書を手に取り、弊社グループのコンプライアンス担当者にとっての「オフィシャルテキスト」とするべく、すぐに弊社のコンプライアンスチームのメンバー全員へ配布した。コンプライアンスチームのメンバーからは、「社内のマニュアルと本書を照らしてブラッシュアップできた」、「4つの力のうちの『「次の展開」・「次の一手」を見立てる力』を意識し案件管理に応用した」など本書をおのおの活かしているとの報告を受け、早速の効果に驚いているところでもある。

繰り返しになるが、コンプライアンスを職務としてこれから経験を積み重ねていきたい方には是非この本を手に取っていただき、実務で悩みに直面した際にはヒントを得ていただきたい。各所に余すところなく詰め込まれたノウハウのみならず、随所からにじみ出るプロフェッショナルとしての考え方や矜持に触れ、襟を正すことができる。

本書を活用すれば、より多くの担当者のコンプライアンス対応能力を底上げできるのではないか。ひいては、ともに不正・不祥事のない誠実な社会を作り上げていく仲間を、会社内にとどまらず社会にも増やすことができるのではないか。コンプライアンスに携わる者として、そんな期待を抱かせてくれるほど活用の幅が広い本でもある。

最後に、本書の出版にあたって日本を代表する著者の方々が限られた時間を割いてその有する広範な専門知識や豊富な経験を社会の共有財産としていただいたご尽力に、心より感謝申し上げたい。

守田 達也( 双日㈱ 執行役員CCO兼法務、内部統制統括担当本部長)

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