『1日15分で習得 契約類型別英単語1100』(『旬刊経理情報』2024年3月20日号掲載書評)

書評

1日15分で習得契約類型別英単語1100 旬刊経理情報』2024年3月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:近藤 健太郎 氏)に『1日15分で習得 契約類型別英単語1100』(本郷 貴裕〔著〕)を掲載しました。







英文契約に取り組むにあたって、初学者が直面する壁はいくつかあるが、そのなかでも顕著に困難なものが英単語である。厄介なことに、これまで英語を得意としてきた人であっても、すぐに英文契約に馴染むことができるかというと必ずしもそうではない。

なぜなら、英文契約に用いられる英単語は英文契約特有なものが多いからである。単純にこれまで触れてこなかった専門的で難解な英単語もあれば、単語自体は一般的にみる単語でも、英文契約のなかで他の単語と相対的に用いられることで、通常と異なった意味を成す英単語も存在する。

こういった経緯から、英文契約に取り組んだことがある方であれば、目線こそ文字の上を滑っているが、情報が脳まで届いていないという経験を誰しもがしたことがあるはずだ。

このような英文契約に取り組んで歴の浅い法務担当者に向けてお勧めしたいのが本書である。本書では英文契約に使用される英単語が契約類型別にまとめられているとともに、同義語・類義語・反義語の英単語が体系的に配置されているため、英文契約を読むために必要な英単語を順序よく、効率的にインプットすることができる。また、英文契約は一文が長いうえに、構造自体が複雑になっていることが多いが、単語の例文が非常にコンパクトにまとまっていることも読者の理解を助けてくれる。

加えて、単語の単純な意味を知っているだけでは業務を行ううえで十分とはいえない単語について、詳細な解説が付されていることも本書の特徴として挙げられる。これは英文契約に限った話ではないが、単語の意味がわかるということと、その単語の使い方がわかるということには大きな乖離がある。

当然、実務上においては、その英単語が何故その文脈で使われているのか、ひいてはそこで使用されていることによって取引にどのような影響を及ぼすのかを知っておく必要がある。単語自体の和訳よりも単語自体の解釈に意義がある単語は英文契約において一定数存在し、そのような単語について、本書では簡潔に、かつ英文初学者でもわかるように解説がなされている。

このように、全体の構成が体系的に分かりやすくまとめられていながら、明快な例文、実務的な補足情報といった細部にまで工夫が施されているため、英文契約にある程度理解が及んだ後であっても、常に手元に置いておくことで継続的に英文契約レビューの助けとなることも期待できる。

著者の本郷氏は、新卒で入社した重電メーカーでいきなり海外案件の契約案件を担当する部署に配属され、挫折しかけた苦い経験を持つが、今ではその経験をもとに英文契約の講師も務めている。そのような「できなかった経験」をもとに作られた本書は、英文契約が読めないところからスタートする人の視点に忠実に寄り添うように作られているため、英文初学者はもちろん、英文契約に関わるすべての人が必携すべき一冊となっている。

近藤 健太郎(三井化学株式会社 総務・法務部)

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