書評
『旬刊経理情報』2024年7月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:角田 伸広 氏)に『しくみ図解/国際税務のポイント』作田 陽介〔著〕)を掲載しました。
国際税務は、企業の税務担当者だけでなく、事業に関わる多くの方々にとって、避けて通ることのできない重要な問題となっているが、税務に関する基礎知識がない場合、専門用語の難解さのためハードルが高く、効率よく理解していくことが困難となっていた。この課題を解決するため、初めて国際税務に接する人に向けて、国際税務の基本をわかりやすく解説したのが本書だ。
著者の作田陽介氏は、国際税務の専門家であるとともに、多くの実務に携わり、企業の直面する課題を熟知しているため、国際税務について、理解の困難なポイントや理解の助けになるポイントを十分に把握している。これらのポイントを12の章に分けて、国際税務のしくみを図解し、最新のBEPSの議論や国際税務の主要論点を簡潔かつ網羅的にカバーし、わかりやすく解説しているのである。
初めて税務担当となった方々を始めとして、事業部で海外進出を検討したり、海外子会社との共同プロジェクトに関わる立場になったりした場合に、接することになる国際税務のキーワードが77項目紹介されており、それらをマスターすれば、社内での国際税務に関する議論を漏らさず理解することができるだろう。
また、国際税務の関係する具体的な場面を想定し、内国法人が海外に進出する場合や海外勤務者がいる場合の注意点に加え、外国法人または非居住者に費用を支払った場合の源泉徴収の注意点を簡潔に説明している。
さらに、国際税務における主要論点である外国子会社配当益金不算入制度、外国税額控除、タックスヘイブン対策税制、移転価格税制や租税条約に関して、基本的なしくみを図解し、重要なポイントを漏らさず正確に解説しており、理解に役立つ。
本書は、著者の日頃からのクライアントファーストの姿勢が、読者ファーストとして引き継がれ、国際税務に初めて接することになる読者の立場になり、どのような図を使って解説することが最も効果的な理解につながるのかを徹底して検討したうえで作成されている。
国際税務の図解は、多くの場合、財務省主税局が税制調査会で説明するためにポンチ絵を作成し、それを踏襲した形で、多くの専門書が類似のものを作成しているが、本書は、読者ファーストの視点から、著者が独自に作成したものが多く、『すらすら図解 国際税務のしくみ』の執筆で培われたノウハウを発展させ、読者の理解を助けるためにわかりやすい独自の図解が行われているのが大きな特徴といえる。
そのため、実践的に活用できる77のキーワードに加え、国際税務の各場面におけるポイントを図解により理解しておけば、社内でのさまざまな場面で国際税務に接する時に、即戦力となる。また、見開き2ページですぐに論点を理解できるため、実務において必携の書物になると考えられる。
本書が多くの方々の手元に置かれ、国際税務の理解が深まり、企業の国際的な活躍の場面において、税務担当者だけでなく、事業に関わる多くの方々の議論のレベルアップにつながり、企業の国際競争力のさらなる発展に寄与することを期待している。
角田 伸広(EY税理士法人 特別顧問)
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