『目からウロコ! これが増減資・組織再編の計算だ!〈新訂版〉』(『旬刊経理情報』2024年8月1日号掲載書評)

書評

目からウロコ! これが増減資・組織再編の計算だ!〈新訂版〉 旬刊経理情報』2024年8月1日号の書評欄(「inほんmation」・評者:濱田 康宏 氏)に『目からウロコ! これが増減資・組織再編の計算だ!〈新訂版〉』金子 登志雄/有田 賢臣〔著〕を掲載しました。







金子登志雄先生の本に最初に触れたのは、『これが新商法だ!これが新登記だ!』だった(平成15年)。この本を最初に読んだときの衝撃は、忘れられない。

その手前で、平成13年の金庫株解禁の改正があり、額面株式の廃止が行われることで、商法(会社法)は大きく姿を変えつつあった。そのなかで、資本と株式との関係をどう考えたらいいのか、それまでの古典的な商法で学んできた人間は、皆混乱していた時期だった。そこに颯爽と登場したのが、金子先生の前掲書であり、続いて登場した『これが減資だ!合併・再編だ!』だった。

われわれがそれまで盲目的にそれしかないと思い込んでいた保守的な理解を次々と破る金子説。それは単にオリジナリティがあるというだけではなく、登記を通すという実務における絶対価値証明を伴っていたわけである。学者が何を言おうと、登記が通る、それが会社法法務の実務では絶対的価値・正義だからである。

そして、その後、商法から会社法が分離独立するにあたり、金子説はそれに対応してより純化されていったわけだが、そのなかで、いわゆる純資産の会計に特化した解説書が登場した。

異能の会計士有田賢臣先生とタッグを組んで、われわれ税理士・会計士・経理パーソンがわかる、仕訳という言語への翻訳を伴いいつつ、それにとどまらない、会社法の法務としての考え方を提示する金子先生のエッセンスも示した本、それが本書の前身である。

何度かの改訂の後、長らく改訂がされず絶版状態が続いていて、われわれ金子ファン・有田ファンは半ば諦めつつあったわけだが、ついに待望の新訂版が登場したのだ。当然ながら、改訂により、株式交付制度など、新しい制度が盛り込まれている。ファンは当然にこの改訂書を買うことだろう。

だが、私は、この本を若い会社法会計を学んでいる方々にぜひ勧めたい。それは、本書を読むことで、なぜその仕訳が出てくるのか理解できるからだ。

大手監査法人の書いた会計本を読めば、そこにはいろんなパターンが列挙されているだろう。しかし、聖書としてそのまま読んでも、われわれはその誤植にすら気がつかない。 それは、自分の頭を使って読まないからである。
貸借対照表の本質は財政状態の表示といわれる。 では、財政状態とはそもそもどういう意味か。実は、即座にその答えを言えない人は意外に多いと思う。 金子先生は、条文を根拠にしつつも、常に何故かという理屈を自分の頭で突き詰めて考え、自分の言葉で表現される。

これこそが、オリジナリティであり、われわれが目指すべき道である。 仕訳を単なるデータとして記憶しても、もはやわれわれはAIに勝てない。AIと共生していくためには、われわれは考える力、人間としてのオリジナリティを育てるしかない。 会計士・税理士・経理パーソンとしての長い人生を生きていくための武器を身につけるため、ぜひ、本書を読み、考えることの価値を学んでほしい。

濱田 康宏(税理士・公認会計士)

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