『最先端の経営管理を実践する FP&Aハンドブック』(『旬刊経理情報』2024年9月20日号掲載書評)

書評

最先端の経営管理を実践する FP&Aハンドブック 旬刊経理情報』2024年9月20日号の書評欄(「inほんmation」・評者:三木 久生 氏)に『最先端の経営管理を実践する FP&Aハンドブック』石橋 善一郎〔著〕を掲載しました。







著者の石橋善一郎氏は、日本におけるFP&A推進の旗振り役として精力的に活動を行っている。これまで中央経済社より、『CFO最先端を行く経営管理』(共著、2020年)、『経理・財務・経営企画部門のためのFP&A入門』(2021年)、『CFOとFP&A』(共著、2023年)を上梓し、FP&Aの役割や存在意義を日本企業に紹介してきた。さらには日本CFO協会「FP&Aプログラム運営委員会」委員長や米国管理会計士協会(IMA)日本支部 Presidentとして、数多くの勉強会やセミナーなどを行ってきた。著者に賛同する有志の方々の尽力もあり、この数年間で、FP&A機能を実装する日本企業や、FP&Aプロフェッショナルのキャリアを歩む方は着実に増加してきている。

このような変化の兆しを踏まえて、本書はこれまでの著作の集大成にとどまらない内容となっている。CFO組織の伝統的な役割は「財務報告・財務統制」であり、財務会計・管理会計・企業財務それぞれ専門理論が展開されてきたが、今後のCFO組織は「経営管理・ビジネスパートナー」に進化すべきという考えにもとづき、「企業価値の長期的な成長を目指した経営管理」を目的としたFP&Aプロフェッショナルのための理論が提示されている。

第I部「FP&Aプロセス」は、「経営管理プロセス」と「マネジメント・コントロール・システム」、「投資意思決定プロセス」の3つのパーツで構成されており、財務会計・管理会計・企業財務を横断するFP&Aに必須の知識を網羅的に理解できるようになっている。

第Ⅱ部「FP&A組織とFP&Aプロフェッショナル」には、著者が米国の職業人団体AFP(The Association for Financial Professionals)の『FP&Aガイド』を翻訳して上梓した『FP&Aベストプラクティス大全』(2023年、CFO本部)の要旨がまとめられている。なかでもFP&A組織に求められるスキルのレベルを示すツール「FP&A組織の成熟度モデル」は、組織運営のベンチマークとして大いに活用できるものである。また、FP&Aプロフェッショナルに求められるスキルセットとマインドセットを筆者オリジナルのフレームワーク「1つのHと6つのW」でまとめるととともに、さまざまなベストプラクティスが紹介されている。

海外企業の事例のみならず、大谷翔平選手や葛飾北斎をロールモデルとして推奨するなど、マインドセットの重要性を平易に認識できる。これらはFP&Aの理論と実務を知り尽くした著者からの熱いメッセージでもあり、評者をはじめ多くのFP&Aプロフェッショナルが著者に惹きつけられてやまないゆえんである。

日本企業において経営管理組織に従事する方、FP&Aプロフェッショナルとしてのキャリアを目指す方には、ぜひ本書を手元に置いていただきたい。日々の業務における実務ハンドブックとしての活用にとどまらず、スキルセット・マインドセットを読み返すことで、組織および個人の成長の糧となるであろう。

三木 久生(日本CFO協会FP&Aプログラム運営委員)

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