書評
『旬刊経理情報』2024年12月1日号の書評欄(「inほんmation」・評者:前川 研吾 氏)に『わかる!使える!うまくいく! 内部監査 現場の教科書』浦田 信之〔著〕を掲載しました。
『わかる!使える!うまくいく!内部監査現場の教科書』は、内部監査部門に初めて配属された新人から、実務経験を積んだプロフェッショナルまで、幅広いビジネスパーソンに有用な実践的な書籍である。著者である浦田信之氏は、監査法人や複数の上場企業で培った豊富な経験を基に、内部監査の基本的な流れから具体的な監査手続、高度な内部監査の実施方法に至るまで、体系的かつわかりやすく解説している。
本書の最大の特徴は、単なる監査理論の解説にとどまらず、実務経験に基づく具体例が豊富に盛り込まれている点だ。これにより、読者は理論だけでなく、現場で実際に使える知識や手法を習得できる。また、内部監査報告書の作成やフォローアップ手法、指摘事項が出やすい領域への対応といった、内部監査業務に直結する内容が多く含まれており、実務に大変役立つ。
近年、企業のビジネスが国境を越えて展開されるなか、言語や文化の壁を越えた内部監査の重要性がますます高まっている。日本企業の内部監査人には、今後さらに海外の公認会計士や内部監査人との連携が求められるだろう。本書では、IT、サイバーセキュリティ、コンプライアンスといった多岐にわたる分野の内部監査手法を紹介し、会計のバックグラウンドがない者でも効果的に活躍できることを示している。また、監査業務において軽視されがちなコミュニケーションスキルにも焦点を当て、内部監査が企業全体のリスクマネジメントやガバナンスにどう貢献できるかも具体的に説明している。
本書は全10章で構成され、第1章では内部監査の基礎知識を提供し、 第2章以降で具体的な内部監査プロセスを詳細に解説している。特に第5章以降では、指摘事項が出やすい領域やリスクアプローチを取り上げており、内部監査人が業務を効率的かつ効果的に進めるための手法が網羅されている。また、IIA(内部監査人協会)が提唱する理論や公認内部監査人(CIA)資格試験に関する情報もカバーしており、キャリアアップを目指す者にも有益な内容となっている。
経営者が内部監査の重要性を一層認識し始めた今日、特定の領域においては専門家との連携や外部委託を視野に入れる必要性も増している。内部監査部門のメンバーには、まず基礎的なスキルセットを身につけ、要所を押さえて関係者と連携し内部監査の実務に取り組むことが求められる。本書では、そうしたスキルを養うための知識やアプローチが惜しみなく提供されている。
本書は、内部監査に携わるすべてのビジネスパーソンにとって、業務の実務的な疑問を解消し、内部監査の役割とその重要性を再認識させる一冊である。
本書を通じて、内部監査の理論と実践を深く理解し、実務スキルを身につけることが可能だ。すべての内部監査担当者の頼れるガイドブックとして長く活用されることを期待したい。
前川 研吾(公認会計士・米国公認会計士・税理士・EMBA RSM汐留パートナーズ株式会社 代表取締役社長CEO)
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