退職給付制度再編における企業行動―会計基準が与えた影響の総合的分析
- 本の紹介
- 2001年3月期に退職給付会計基準が適用されたことが、日本の企業経営にどのような影響を与えたかを分析。法制度の異なるアメリカとの企業行動の比較などを踏まえ理論的・実証的に研究。
目次
退職給付制度再編における企業行動
― 会計基準が与えた影響の総合的分析
目次
まえがき
序 章 退職給付会計基準と退職給付制度の関係
1 本書の問題意識と目的
2 年金会計研究と退職給付会計研究
3 本書でのアプローチとその特徴
第1部 退職給付会計基準と退職給付制度の特性
第1章 退職給付と退職給付制度の概観
1 退職給付と退職給付制度
2 退職給付の概念
(1) 退職給付の多様性と共通点
(2) 各国の退職給付制度
(3) 企業年金の定義 ……ほか
3 日本の退職給付制度
(1) 退職給付制度の概観
(2) 適格退職年金
(3) 厚生年金基金 ……ほか
4 日本の退職給付と退職給付制度の特徴
第2章 退職給付会計基準の特徴
1 退職給付会計基準とは何か
2 退職給付会計基準適用前の会計実務
3 退職給付会計の基本的な考え方
(1) 退職給付会計基準の認識対象
(2) 賃金後払説
(3) 統一的な会計処理 ……ほか
4 退職給付会計基準で用いられる測定概念
(1) 保険数理の手法
(2) 予測給付債務(PBO)
(3) 退職給付費用の処理に関する考え方と各期の発生額の
見積もり
5 退職給付債務と年金資産
(1) 退職給付債務の算定手順
(2) 年金資産とその評価方法
(3) 退職給付引当金の算定手順
6 退職給付費用の会計処
(1) 数理計算上の差異と過去勤務債務
(2) 退職給付費用の算定
7 例外的な取扱いと経過措置
(1) 複数事業主制度に係る計算手法
(2) 簡便法
(3) 新基準適用時の特例 ……ほか
8 退職給付会計基準の特徴
第3章 会計基準の設定過程に関する日米比較
1 SFAS第87号・退職給付会計基準の議題設定過程・設定過程
2 SFAS第87号の議題設定過程と設定過程
(1) 問題提起(1964−1974)
(2) 問題拡大(1974)
(3) 議論の入口(1975−1981) ……ほか
3 退職給付会計基準の議題設定過程と設定過程
(1) 問題提起(1988−1993)
(2) 問題拡大(1994−1995)
(3) 議論の入口(1996−1997) ……ほか
4 日米の議題設定過程の違い
5 日米の設定過程の違い
6 日米の会計基準設定の背景に関する相違
第4章 給付債務の法的な構成要素に関する考察
1 給付債務と法律
2 法的債務の区分
(1) 法的な強制力と債務
(2) 確定債務と条件付債務
3 給付債務の共通点
4 アメリカの退職給付に関する法律
(1) 受給権に関する法律
(2) 受給権未確定部分に関する法律
(3) 積立基準に関する法律
5 日本の法律
(1) 退職一時金制度(労働基準法における退職手当)
(2) 適格退職年金
(3) 厚生年金基金 ……ほか
6 日米の法律による給付債務の構成要素の違い
(1) 受給権に関する法律の比較
(2) 受給権未確定部分に関する法律の比較
(3) 積立基準に関する法律の比較 ……ほか
7 給付債務の多様性
第5章 給付債務の経済的評価
1 給付債務に関する評価方法と会計基準
2 経済的犠牲の測定
3 給付債務の経済的な概念
(1) ABOとPBOの違い
(2) エリサ法における最低積立基準とABO
4 暗黙契約と年金会計基準
(1) 給付債務の測定と会計上の問題
(2) 暗黙契約の理論
(3) 暗黙契約を前提とした会計上の問題の解消
5 旧SFAS第87号における折衷的アプローチ
(1) 旧SFAS第87号における負債計上
(2) 折衷的アプローチに対する評価
(3) 折衷的アプローチの影響
6 SFAS第158号とその位置付け
第2部 退職給付制度の再編とその要因
第6章 退職給付制度に関する理論的考察と実証研究
1 退職給付制度の多様性と共通の目的
2 退職給付制度の状況
3 退職給付制度運営の要素
(1) 退職給付制度の成熟度
(2) 退職給付制度の財政
(3) 退職給付制度の性質
4 リサーチ・デザイン
(1) 仮説設定
(2) サンプル
(3) 代理変数 ……ほか
5 分析上の課題
6 成熟化と退職給付制度
第7章 退職給付会計基準による実質的裁量行動
1 退職給付会計基準公表による裁量行動の変化
2 情報インダクタンス
3 退職給付会計基準公表前の会計的裁量行動
4 退職給付会計基準公表後の裁量行動
5 実質的裁量行動の活発化
第8章 会計基準変更時差異の償却年数に関する意思決定要因
1 退職給付会計基準適用時の影響
2 会計基準変更時差異に関する見解
3 会計基準変更時差異の増大
(1) 会計基準変更時差異の算定
(2) 債務の増大
4 先行研究
(1) アメリカと日本における先行研究
(2) 日本の先行研究の問題点
5 仮説の設定
(1) 会計基準変更時差異の発生額
(2) 会計基準変更時差異に関する制度ごとの差
(3) 企業業績との関係 ……ほか
6 サンプル選択とリサーチ・デザイン
(1) サンプルと統計手法
(2) 代理変数
(3) 償却年数 ……ほか
7 結果と考察
8 償却年数の意思決定要因
第9章 代行返上に関する意思決定要因
1 退職給付制度の変更と企業行動
2 厚生年金基金と代行部分
(1) 厚生年金基金の仕組み
(2) 厚生年金保険法による代行部分の積立水準
3 代行部分に関する評価の差異と代行返上の活発化
(1) 退職給付会計基準による代行部分の評価
(2) 代行返上の活発化
4 退職給付制度の変更に関する意思決定要因の研究
5 代行返上に関する財政的要因
(1) 企業業績に関する要因
(2) 債務契約仮説
6 サンプル選択とリサーチ・デザイン
(1) サンプル選択とリサーチ・デザイン
(2) 代理変数
7 結果とその検討
8 仮説2と3に関する検証
9 代行返上に関する意思決定要因
第10章 代行返上と成熟化との関係
1 代行返上と成熟化
2 厚生年金基金と確定給付企業年金
3 暗黙契約とその不履行
4 先行研究
5 仮説設定
(1) 厚生年金基金の成熟度
(2) 意思決定要因としての成熟度
6 リサーチ・デザイン
(1) サンプル選択
(2) 代理変数
7 検定結果と結果の考察
8 暗黙契約の不履行に関する意思決定
9 本章の課題と意義
終 章 退職給付会計基準が与えた経済的な影響
1 得られた知見
2 これまでの要約
3 得られた示唆
4 今後の課題
〈参考文献〉
〈索 引〉
著者プロフィール
上野 雄史(うえの たけふみ)
1977年9月 大阪府豊中市生まれ
2000年3月 関西学院大学商学部卒業
2002年3月 関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了(修士(商学))
2007年9月 関西学院大学大学院商学研究科博士課程後期課程修了(博士(商学))
現 在 静岡県立大学経営情報学部経営情報学科助教
【主要業績】
「退職給付会計基準による実体的裁量行動」『商學論究』第52巻第2号(関西学院大学),2004年11月,85―99頁。
「代行返上に関する企業の財政的要因の実証分析」『年報経営分析学会報』第23号(日本経営分析学会),2007年3月,69―76頁。
「退職給付債務の確定性に関する考察」『会計・監査ジャーナル』(日本公認会計士協会編/第一法規)第19巻第11号,2007年11月,96―102頁。
「代行返上と成熟化との関係に関する研究−暗黙契約の理論の視点から−」『保険学雑誌』(日本保険学会)2007年12月,31―58頁。