- 本の紹介
- 真の「監査」に求められる役割とは何か、原点に立ち返って学術的に考察。大学での「監査論」の教科書として、あるべき「財務諸表監査」の理論を明瞭かつ理解しやすく記述。
目次
体系監査論
目次
第1章 監査概念(1)─「監査」の再定義─
Ⅰ 「監査」の再定義が必要な理由
Ⅱ ことばの定義と概念
Ⅲ 概念の定義
Ⅳ 類概念と種差─ 一般概念あるいは類似概念との区別─
Ⅴ 監査の類概念と種差 ……ほか
第2章 監査概念(2)─「財務諸表監査」の定義─
Ⅰ 定義と説明文の区別
Ⅱ 定義と事実との相互作用
Ⅲ 概念を代表することばとしての学術用語
Ⅳ 財務諸表監査の最広義の定義と最狭義の定義
Ⅴ 概念と概念フレームワーク ……ほか
第3章 監査の種類
Ⅰ 監査の分類─監査の二次的定義─
Ⅱ 監査の時代区分による分類
Ⅲ 情報監査と実態監査
Ⅳ 本章のまとめ
第4章 監査の必要性
Ⅰ 理論,規範および実証
Ⅱ 監査の必要性の定義
Ⅲ 監査の必要性についての規範的記述
Ⅳ 監査の必要性についての理論的説明と実証的説明
Ⅴ 社会的契約に基づく監査の必要性 ……ほか
第5章 監査機能
Ⅰ 監査機能と監査職能
Ⅱ 監査機能としての指導(批判)性と監査職能としての指導行為
Ⅲ 検証業務と保証業務
Ⅳ 投資家等に対する情報提供機能
Ⅴ 監査人に対する免責機能 ……ほか
第6章 監査の実質的依頼人
Ⅰ 企業を取り巻く利害関係者と監査の利用者
Ⅱ 利害と関心
Ⅲ 権利と義務の一般的考察
Ⅳ 監査人の各種利害関係者(社会)に対する権利・義務
─社会的契約上の権利・義務─
Ⅴ 監査人の被監査会社(経営者)に対する権利・義務
─私的契約上の権利・義務─ ……ほか
第7章 監査主体(1)
Ⅰ 「専門家」の意味
Ⅱ 監査人の専門能力
Ⅲ 信頼性の源泉としての専門能力と公正性
Ⅳ プロフェッショナルとしての指導性
Ⅴ プロフェッショナル教育における三つの柱 ……ほか
第8章 監査主体(2)─独立性の原則と利益相反─
Ⅰ 利益相反の種類
Ⅱ 監査人と経営者と各種利害関係者との間の利害の対立による
利益相反の分類
Ⅲ 利益相反の内的側面と外的側面の発生時期のズレによる分類
Ⅳ 独立性に対するさまざまな脅威
Ⅴ 形式的独立性と実質的独立性─「独立性の基準」を遵守すること
と独立性を堅持することの違い─ ……ほか
第9章 監査主体(3)─第三者としての独立性─
Ⅰ 独立性についての二つの意味
Ⅱ 監査制度の階層と独立性
Ⅲ 監査客体としての「経営者」と実質的依頼人としての「投資家」と
「第三者」としての監査人
Ⅳ 内部監査人の独立性と外部監査人の独立性
Ⅴ 私的契約上の独立性と社会的契約上の独立性 ……ほか
第10章 監査対象
Ⅰ 監査対象としての財務諸表の意義
Ⅱ 財務諸表が表示する内容─企業活動と企業状況─
Ⅲ 財務諸表の種類
Ⅳ 財務諸表の範囲
Ⅴ 財務諸表の利用者 ……ほか
第11章 監査客体
Ⅰ 監査客体と会計主体論との関係
Ⅱ 会計主体論の発展と分類
Ⅲ 私的監査における監査客体
Ⅳ 公的監査における監査客体
Ⅴ 現行の監査制度における監査客体 ……ほか
第12章 監査人の判断基準
Ⅰ 事実としての規則と規範としての規則
Ⅱ 社会的慣行としての会計原則
Ⅲ 会計原則への準拠性と適法性
Ⅳ 会計原則の水準の高さと強制力の強さ
Ⅴ 法規範の優先適用 ……ほか
第13章 監査手続(1)─違反性判断のプロセス─
Ⅰ 違反性の確定プロセス
Ⅱ 違反の特定化(外延的特定化)
Ⅲ 違反の定型化(内包的定型化)
Ⅳ 違反行為の事実認識
Ⅴ 該当性の判定 ……ほか
第14章 監査手続(2)─会計原則の解釈─
Ⅰ 違反行為の特定化および定型化として行われる会計原則の解釈
Ⅱ 「解釈」についての一般的考察
Ⅲ 会計原則解釈の性格
Ⅳ 多義性を排除する方法
Ⅴ 監査人の会計原則創造機能
─「大前提を用意する」ということの意味─ ……ほか
第15章 監査手続3)─事実認識─
Ⅰ 監査人による二つの事実認識
Ⅱ パターン認識による事実認定
Ⅲ 事実認定における二義性
Ⅳ 概念形成としての「会計原則の解釈」
Ⅴ 監査手続としての事実認定のための基本原則 ……ほか
第16章 監査手続(4)─財務諸表上の虚偽記載─
Ⅰ 虚偽記載の監査論的意義
Ⅱ 会計とフィクション(虚構)
Ⅲ 財務諸表上の表示と企業内容との間の不一致─意味論的虚偽─
Ⅳ 会計原則と会計事実の結びつけにおける矛盾─構文論的虚偽─
第17章 監査手続(5)─語用論的虚偽─
Ⅰ 語用論的虚偽の意義
Ⅱ 財務諸表の明示的意味と暗示的意味との間の不一致
Ⅲ 会計情報のコンテクストにおける虚偽性
第18章 監査手続(6)─財務諸表上の虚偽記載の許容範囲─
Ⅰ 虚偽記載に関する二つの許容基準
Ⅱ コミュニケーションの手段としての語用論的意味
Ⅲ 不正・擬制・仮説・誤謬
Ⅳ コードの一致
Ⅴ 社会的妥当性 ……ほか
第19章 監査の目的(1)─監査意見─
Ⅰ 監査目的と監査制度の目的の区別
Ⅱ 監査固有の目的
Ⅲ 会計原則への準拠性の判断
Ⅳ 個別意見の種類
Ⅴ 限定事項の三つの側面 ……ほか
第20章 監査の目的(2)─財務諸表の適正性の意味─
Ⅰ 準拠性・公正性・適正性
Ⅱ SFairness[の諸相
Ⅲ 規則遵守主義
Ⅳ 準拠性・合原則性と監査報告書
Ⅴ 本章のまとめ
第21章 監査基準
Ⅰ 監査理論と監査基準
Ⅱ 監査基準の理論基盤
Ⅲ 科学的説明と理論
Ⅳ 監査人の行動規範としての監査基準
Ⅴ 目的と手段との間のレリバンス
─ 一般に認められた監査基準となるための条件─ ……ほか
索引
初出一覧
著者プロフィール
瀧田輝己(たきたてるみ)
略歴
1972年慶應義塾大学商学部卒業
1978年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程単位取得
1993年博士(商学)(慶應義塾大学)
1996年税理士試験委員(1998年まで)
1997年日本監査研究学会理事(2000年まで)
1999年日本簿記学会理事(2002年まで)
2006年日本会計研究学会理事(2009年まで)
2009年日本会計研究学会学会賞及び太田・黒澤賞審査委員(2012年まで)
現在同志社大学商学部教授
同志社大学大学院商学研究科博士前期課程教授
同志社大学大学院商学研究科博士後期課程教授
日本簿記学会理事
日本会計研究学会評議員
公認会計士,税理士
主要業績(単著書のみ)
著書
『監査構造論』千倉書房,1990年
『監査機能論』千倉書房,1992年(日本公認会計士協会第22回学術賞受賞)
『財務諸表論[総論]』千倉書房,1995年
『財務諸表論[各論]』千倉書房,1996年
『簿記学』同文舘出版,2002年
翻訳書James C. Gaa著『会計倫理』同文舘出版,2005年
- 担当編集者コメント
- ◎こんな方に読んでほしい!
・監査の実務の現場で日々悩み,苦しむ会計士の方々に。
・いずれ企業で活躍し,監査を受ける立場になる学生の方々に。
本書には,監査の実務や,会計士試験に受かるテクニックは書いてありません。
本書にあるのは,制度や実務の変化に翻弄されない,言うなれば「監査の哲学」です。
「会計士試験の範囲に沿った本でないテキスト」ということで,最初はびっくりするかもしれませんが,読み進めるうちに著者の熱い思いがきっと伝わるはずです。