- 本の紹介
- 再上場したJAL、LCCの今後、関空・伊丹の経営統合、羽田の国際線枠拡大など、日本の航空政策改革を訴え続けてきた著者が最新の航空業界をとりまく環境変化を徹底検証。
目次
航空幻想―日本の空は変わったか <第2版>
目次
はしがき
序章 航空幻想
1 飛行機はなぜ飛ぶか
2 航空幻想からの解放を
3 航空の魅力は規制・保護を正当化しない
第1章 LCCは「格安航空会社」か?
1 LCCの急成長
2 LCCと「格安航空会社」はどう違う?
3 LCCの先輩たち
3・1 サプリメント・キャリア
3・2 プログラムド・チャーター ……ほか
4 LCCはなぜ安い?
4・1 第一世代格安定期の低コストモデルの強化
4・2 新たな工夫
5 既存大手航空会社の反撃
―フル・サービスとネットワークを生かした経営戦略
5・1 LCCの「コマ切れサービス」vs 既存大手の「フル・サービス」
5・2 ネットワークを生かした既存大手の3大主要戦略 ……ほか
6 LCCを優先すべきという幻想
6・1 使うかどうかは利用者が決めること
6・2 専用ターミナルは合理的か ……ほか
第2章 「2012年LCC元年」の幻想̶なぜ育たない日本のLCC
1 いまだ「第一世代格安定期」のアジアのLCC
2 LCCになりきれない日本の「新規航空会社」
2・1 スカイマークは挑戦者の役割を果たしたが
2・2 時代遅れだった低コストモデル ……ほか
3 JAL、ANAのLCC子会社成功の条件は?
第3章 幻想から目覚めたか日本航空̶破綻から再上場までの道
1 航空幻想を反映した視聴率の高さ
2 再建策の概要
3 再建策の評価
3・1 なぜダウンサイジングなのか?
3・2 機材の老朽化は問題か? ……ほか
4 破綻再生手法の評価
5 JAL/JAS統合の失敗
5・1 無理があったリストラ前の吸収
5・2 羽田発着枠獲得の代償 ……ほか
6 遠因は航空政策にあり
7 政治と国民も幻想を捨てよ
7・1 航空会社の数や路線は市場が決めるべきもの
7・2 国民の声に耳を傾けるな ……ほか
第4章 進展したか日本の規制緩和
1 航空輸送市場における規制緩和の経緯
1・1 規制時代
1・2 規制緩和の背景 ……ほか
2 いまだ残る競争抑制規制と裁量行政―航空法は改正されたが
2・1 残る需給調整規制
2・2 必要のない規制を求める航空会社 ……ほか
3 「大きければ強い」という「不当廉売」の幻想
3・1 新規参入優先策の問題点
3・2 不当廉売?から運賃競争が始まった
―日本航空のサンドウィッチ運賃 ……ほか
4 アライアンスと独禁法適用除外の問題―政策的視点から
4・1 アライアンス間競争とアライアンス内競争
4・2 日米航空協定改訂と独禁法適用除外
5 オープンスカイの幻想
―国際航空におけるさらなる自由化の必要性
5・1 アジア・ゲートウェイ構想と成長戦略会議の提言
5・2 概念的自由化から実質的自由化へ ……ほか
第5章 空港整備・運営に関する幻想と誤解
1 狭い日本に100もの空港は多すぎる?
1・1 空港は多すぎないし日本は狭くない
1・2 「必要な空港」における「不要な投資」が問題
2 日本の空港の使用料は高い?
2・1 着陸料は高いが使用料は高くない
2・2 空港使用料を自由にできないことが問題 ……ほか
3 本質的な問題は空港整備制度にあり
3・1 元凶は全国プール制の社会資本整備制度
3・2 特別会計の解体と空港・航空管制の民営化が必要
……ほか
4 日本の空港は大部分が赤字?
4・1 こう計算すれば黒字になる
4・2 離島空港も民営化できる
第6章 「空港民営化」が日本の空を変える?
1 空港民営化の尖兵―英国およびオーストラリアの空港民営化
2 管制も民営化の時代
3 静岡や茨城にも希望はある
4 なぜ民営化か
4・1 期待される効果
4・2 商業主義の徹底とマーケティングの重視 ……ほか
5 空港制度改革と整合的な民営化を
5・1 全国プール制の解体と地方への財源配分方式の改革
5・2 上場か個別売却か
6 運営と整備は一体化を
―経営権の売却では不十分な関空・伊丹の民営化
7 商業施設と航空施設の一体経営も必要
8 関空・伊丹の統合は大間違い
―同一都市圏内複数空港は競争させよ
8・1 大都市圏複数空港は個別売却を
8・2 大都市二次空港の活路 ……ほか
9 徹底した経営の自由度と独立性の確保が必要
9・1 思い切った自由化を
9・2 「外資は悪」という幻想
10 民営化に関するいくつかの誤解
10・1 赤字でも民営化は可能
10・2 「まったく規制しない民営化」はありえない ……ほか
第7章 「ハブ空港」と羽田国際化の幻想
1 ハブ競争でインチョンに負ける?
1・1 ハブ競争の基本は立派な空港ではなく地元需要の大きさ
1・2 首都圏の地元需要への対応が先 ……ほか
2 羽田国際化だけで十分か?
2・1 足りない首都圏空港容量
2・2 「概念的国際化」は実現したが ……ほか
3 羽田が国際化すると成田がダメになる?
4 関西空港もハブになれる―身の丈ハブの提唱
第8章 発着枠の配分の合理化
1 発着枠の配分に市場メカニズムを
2 裁量性の高い現行の発着枠配分方式
3 競争入札制のメリット
4 競争入札にすると金持ち企業が有利になる?
5 ピーク課金に関する誤解
6 東京上空通過による羽田の容量拡大を
第9章 「公共性」の幻想
1 「公共性」とは何か?
1・1 公共性とは「市場の失敗」
1・2 「大事」だから「公共性が高い」ではない
2 意味を失った競争抑制規制
2・1 半世紀前は通用した幼稚産業保護論
2・2 大きくない規模の経済性 ……ほか
3 不採算地方路線の維持はなぜ必要?
3・1 「交通権」の大間違い
3・2 地方部の人々の状況は大都市の人々よりも悪いか?
……ほか
4 地域開発効果という幻想
4・1 交通の価格を下げて地域開発を行うのは正しいか
4・2 外部効果の扱いは慎重に ……ほか
5 安全幻想
5・1 技術革新に対応した見直しが必要
5・2 競争を抑制しても安全は維持できない ……ほか
6 騒音対策も見直すべき時期
6・1 騒音の費用は当該空港の利用者が負担すべきもの
6・2 騒音と経済性のトレードオフ
参考文献
著者プロフィール
中条 潮(ちゅうじょう・うしお)
慶應義塾大学商学研究科博士課程修了後,同大学商学部助教授を経て1992年より慶應義塾大学商学部教授。
1984年−86年英国オクスフォ−ド大学客員研究員。
専門領域は公共政策,社会問題の経済学。とりわけ交通政策のエキスパート。米誌で“Deregulation Warrior”と紹介され,みずからもスカイマーク航空の設立に参加した改革論者。
行政改革委員会規制緩和小委員会,行政改革会議委員,行政刷新会議規制改革分科会委員,国土交通省成長戦略会議委員などを歴任。
著書
『規制破壊』(東洋経済新報社),
『航空新時代』(ちくま新書),
訳書
グラハム『空港経営』(中央経済社)ほか,
編著も『新・黒船の世紀』(NTT出版)など多数。