「闘争」としてのサービス―顧客インタラクションの研究
- 書籍品切れ中
- 本の紹介
- サービスとはお客を満足させるものと思われている。しかし、その本質は、客と提供者がお互いを試し、見極める「闘い」であると主張。サービスの概念に一石を投じた意欲作。
目次
「闘争」としてのサービス
顧客インタラクションの研究
目次
はじめに
序章 サービスの複雑さ
1 サービスの高まり
2 サービスの社会的な複雑さ
3 弁証法のアプローチ
4 実践の理論
5 言語の理論
6 本書の構成
第Ⅰ部 サービスのやりとり
第1章 鮨屋におけるやりとり
1 鮨屋とは
2 親方と客の対話の分析
3 調査対象
4 入店直後の注文
5 最初の食べ物の注文
6 客を試す
7 ルーチンの概念
8 鮨屋の緊張感
第2章 ファストフードのやりとり
1 ファストフードの概要
2 分析方法
3 ファストフードのファストフード性
第3章 イタリアンとフレンチレストランの比較
1 イタリアンとフレンチレストランの事例
2 イタリアンでの注文の伝え方
第Ⅱ部 サービスの理論
第4章 闘いとしてのサービスの価値
1 従来のサービス理解
2 闘いとしてのサービス
3 歓待における敵対と力
4 おもてなしの不可能性
5 サービスにおける敵対性
6 互酬性と経済的交換
7 文化のパフォーマティブ
8 差異化=卓越化
9 顧客満足の矛盾
10 闘いを通した相互承認
11 緊張感の中のくつろぎ
12 サービスの原動力
第5章 闘いの方法
1 礼儀作法
2 神秘性
3 見せない気遣い
4 支払いの隔離
5 サービスの読みほぐし
6 対立するものの並存
7 語られないこと
8 記号としての闘い
第Ⅲ部 サービスの実践
第6章 サービスデザイン
1 サービスデザインの背景
2 従来のサービスデザインの考え方
3 人間-脱-中心設計
4 サービスの織りなし
終章 サービスと向き合う
1 サービス科学は闘いである
2 サービス社会の流動化
参考文献
索 引
著者プロフィール
山内 裕(やまうち ゆたか)
京都大学経営管理大学院 講師
京都大学工学部情報工学科,同大学院情報学研究科社会情報学専攻修了(情報学修士),カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of
California, Los Angeles),UCLAアンダーソン経営大学院(UCLA Anderson School of Management)博士課程修了(Ph.D.
in Management)。ゼロックス(Xerox)社パロアルト研究所(Palo Alto Research Center/ PARC) 研究員を経て,現職。
専門:組織論,サービス科学,エスノメソドロジー
主な著作:
書籍『日本型クリエイティブ・サービスの時代―「おもてなし」への科学的接近』(共編著,日本評論社,2014),論文“ User knowledge
transformation through design:A historical materialism perspective,” Information
and Organization, Vol. 24, No. 4(2014年)など。
- 担当編集者コメント
- これまで、多くの方が抱いていた「サービス」の内容、概念を根本から問い直す内容です。
サービスとは、本当に「複雑」なものであることが、本書から学べます。
- 著者から
- ◆東京の鮨屋で表情を変えない親方を前に緊張しながら注文する客。
◆京都の料亭で食べ方もわからない料理を出され、動揺している客。
◆フランス料理店で理解できない名称ばかりが並ぶメニューから不安気に注文する客。
従来のサービスの理論では、これらの現象を説明できません。サービスとは一体何でしょうか?
最近では「おもてなし」という言葉がよく使われます。「おもてなし」とは、 心をつくした見返りを求めない奉仕と言われることが多いです。しかし,そうではないのです。笑顔でフレンドリーに,顧客のために顧客のニーズを充たそうとするサービスは,結果的にサービスの価値を低下させてしまいます。
サービスは客のニーズを充たすのではなく,客を否定するところから始まります。サービスは高級になるほど,いわゆる「サービス」が減少します。上記のようなサービスがまさにそれです。
サービスはとても複雑なのです。サービスについて正しいと思ったことは,実は正反対の結果となります。
本書はサービスに関する表層的な理解を乗り越え,サービスの本当の意味を理解しようとするものです。
サービスは根源的に「闘い」なのです。