- 本の紹介
- 会計学のような実学性の強い分野にあって、プロフェッションの役割とは区別されるアカデミズムの本来的役割は何か。本書では、その役割を基礎論的研究に求めて論究。
- 担当編集者コメント
- 駒澤大学・石川純治先生の研究書です。
本書の読者へのメッセージは次の通りです。
「会計学のような実学性の強い分野にあって、プロフェッションの役割とは区別されるアカデミズムの本来の役割ないし任務(存在意義)は何か。本書が意図するテーマはここに根ざしており、収めた論考はそれぞれの文脈、意味合いでこの共通テーマにかかわっている。本書では、その意義と役割を特に基礎論的研究に求め(基礎学問としての会計学)、それを3つのパートでもって構成している。
今日、会計の実証研究、応用研究が一層発展・拡大の傾向にあり、「基礎学問につながる会計学」は必ずしも重視されない。しかし、今日の会計制度の一大変革期にあっては、その変革が何処から来ているかを真に「理解」することが極めて重要になる。そこから現実に起こっている会計問題を見通すことが、本当に理解するということにつながる。したがって、今日はむしろその理解につながる「基礎学問としての会計学」があらためて問われている。」
そして、本書の目次は次の通り。
<目次>
第Ⅰ部 現代会計の基礎研究
第1章 概念フレームワークの立脚点―4つの基礎論的視点から
第2章 社会科学としての時価会計―金融商品会計の経済的基礎
第3章 「金融・開示・取引法」優位の現代会計―経済・会計・法の総体的視点
第4章 現代会計のハイブリッド構造とその矛盾―変容の基礎にあるもの
第5章 OCI現象と現代会計―古典的2大学説の現代性
第6章(補章) 現代会計の基礎論的視点―公開と計算、そして会計資本
第Ⅱ部 歴史と構造
第7章 構造と歴史―会計史研究の一視点
第8章 資金計算書発展の歴史と構造―歴史と理論の接合
第9章 複式簿記の歴史分析と構造分析―複式簿記とは何でありうるか
第Ⅱ部補章 構造と歴史・主体
第Ⅲ部 会計研究の方法
第10章 会計研究のあり方―プロフェッションとアカデミズム
第11章 学問としての整合性分析-会計基準の整合性分析の方法をめぐって
第12章 慣習、文化、言語、そして会計―比較制度分析と会計制度
第13章 構造としての会計科学―方法としての構造主義
要約すると、第Ⅰ部では、伝統的会計から大きく変容している現代会計の基礎に何が横たわっているか、その基礎論的解明を行い、第Ⅱ部では、構造分析と歴史分析はどうつながるか、特に論理的相対と史的相対の2つの相対化、そして全体史の視点の重要性を示し、第Ⅲ部では、会計学のような実学性の強い分野において、その「学問性」をどこに求めるか、アカデミズム本来の役割と意義を提示しています。
既存の研究と比較して相当深く考察されていること、また石川先生としての会計研究のあり方を示しており、すべての会計研究者に必読の書籍だと思います。
特に、研究の方向性を模索している中堅・若手の先生方、院生には得るものが大きいのではないでしょうか。
再読される、また長く読み継がれる研究書になってほしいですね。
ぜひご覧ください!