非営利組織会計の実証分析

黒木 淳

定価(紙 版):4,400円(税込)

発行日:2018/03/06
A5判 / 268頁
ISBN:978-4-502-25651-6

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本の紹介
シグナリング・モデルを参考に、非営利組織における会計情報の自発的な会計ディスクロージャーがなぜ行われるのかについてアーカイバル・データを用いた実証分析により解明。

著者紹介

黒木 淳(くろき まこと)
[プロフィール]
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科准教授。経営学修士(大阪市立大学)。

[主な著作]
【著書】
『非営利組織会計の実証分析』(単著,中央経済社,2018年)

【論文】
Budget Ratcheting and Debtholders' Monitoring: Evidence from Private Colleges and Universities , Journal of Management Accounting Research (2021) (co-authored by Akinobu Shuto), Impact of Depreciation Information on Capital Budgeting among Local Governments: A Survey Experiment, Australian Accounting Review. (2021)

担当編集者コメント
橫浜市立大学・黒木先生の研究書です。

本書の目的は、次のとおり(カバーより)
「非営利組織における会計情報はどのような機能を有し、なぜ開示されるのか。このような疑問に答えるために、本書は、わが国の公益法人や社会福祉法人、私立大学などの非営利組織における会計基準および自発的な会計ディスクロージャーについて検討する。具体的には、情報の経済学の1つであるシグナリング・モデルを参考として、「好業績である非営利組織ほど受益者などの情報利用者に対して自発的な会計ディスクロージャーをおこなう」ことをシグナリング仮説として設定し、実証分析する。
本書のねらいは、このシグナリング仮説を検証することによって、会計ディスクロージャーの要因を分析するとともに、法人形態ごとに情報利用者が好業績であると判断している財務指標を実証的に明らかにすることである。また、法人形態ごとに社会的な課題であるそれぞれの財務指標に焦点をあて、その情報特性を探究し、情報利用者からみた有用性について示唆を提供する。」

目次も示しておきましょう。
序 章 本書の目的・意義・構成
第1部 非営利組織会計の分析枠組みの構築
第1章 非営利組織会計の機能とディスクロージャー制度
第2章 非営利組織会計を対象とした実証研究の到達点と展望
第3章 わが国非営利組織会計の分析視角―シグナリング仮説の提示
第2部 好業績シグナルとしての会計ディスクロージャーに関する実証分析
第4章 公益法人における自発的な会計ディスクロージャーとシグナリング
第5章 社会福祉法人における自発的な会計ディスクロージャーとシグナリング
第6章 私立大学における自発的な会計ディスクロージャーとシグナリング
第7章 私立大学における自発的な会計ディスクロージャーの経済的帰結
第3部 非営利組織における財務指標の有用性に関する実証分析
第8章 公益法人における公益目的事業比率の決定要因
第9章 社会福祉法人における実在内部留保の決定要因
第10章 私立大学における教育研究経費削減の予測―収支差額情報の有用性
終 章 本書の結論と今後の展望

非営利会計の研究の大半は規範的なもので、実証的な研究はほとんど見られませんでした。これは、データの収集に多大な時間と労力が必要なことや理論が混沌としていることなどが一因だと思いますが、本書はその点を克服した日本ではじめての本格的な実証研究の成果だと思います。
本書は博論をベースにしたものですが、この研究期間で、この成果を出されたことを考えると、非常にパワーを感じる研究書ですね。

目次からもわかるように、研究者のみならず、公益法人、社会福祉法人、私立大学の経営者、これらの利用者、さらに会計基準設定主体にも有益な示唆を与える内容になっています。

本書がどのように評価されるかとともに、まだ30ちょっとで本書をまとめられた黒木先生が、今後どのように研究を展開されるか、大変楽しみです。

注目の若手研究者の研究書、ぜひぜひご覧ください!

(追記)
本書ですが、非営利法人研究学会の学会賞を受賞しました(2019.09)。