- 本の紹介
- 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは?法人税法と会計学をつなぐ法人税法22条4項をひもとき、本質を探る。知識の整理、体系的な理解に役立つ最良の教科書。
目次
プログレッシブ税務会計論Ⅲ─公正処理基準─
目次
第1章 法人税法22条4項における公正処理基準
1 法人税の計算構造
1 概 説
2 計算基準の外部化と租税法律主義
3 法人税法22条4項
4 公正処理基準と租税法の観点
2 法人税法22条4項にいう「会計処理の基準」とは
1 訓示的規定と基本的規定
2 公正処理基準の内容
3 複数の公正処理基準の存在
3 確認的規定からの変容
1 法人税法22条4項と旧商法32条2項
2 法人税法22条2項との関係
3 法人税法22条4項の今日的意義
4 小 括
4 「慣習」と「慣行」
1 事実たる慣習と法人税法22条4項
2 「慣習」と「慣行」
3 慣行形成の影響
5 商法・会社法における会計処理と法人税法
1 商法上の「一般に公正妥当と認められる会計の慣行」の不安定性
2 「会計基準」と「会計慣行」
3 通達による補完作業
4 ま と め
第2章 公正処理基準該当性の判断アプローチ
1 公正処理基準とは
1 概 説
2 2つのアプローチ
2 裁判例の検証―慣行該当性アプローチ―
1 東京地裁平成17年5月19日判決
2 福岡地裁平成11年12月21日判決
3 その他の裁判例
3 裁判例の検証―基準内容アプローチ―
1 最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決
2 東京高裁平成14年3月14日判決
3 東京高裁平成19年9月19日判決
4 東京高裁平成25年7月19日判決
4 トライアングル体制の崩壊論と公正処理基準
1 法人税法・商法・企業会計の調和から乖離へ
2 トライアングル体制崩壊論の影響
5 2つのアプローチの組合せ
1 形式基準と実質基準
2 二重の基準のテスト
3 ま と め
第3章 法人税法22条4項と慣習
1 慣習と慣習法
2 慣習法の法源性
1 慣習法とは何か
2 「事実たる慣習」と「慣習法としての慣習」
3 租税法律関係における慣習法の法源性
1 租税慣習法は租税法における法源性を有するか
2 学説と裁判例
3 検 討
4 法人税法22条4項と「事実たる慣習」
5 一応の整理
4 事実たる慣習と慣習法―民事法学における有力説の台頭―
5 租税法律主義との関係
1 強行法規と慣習―租税法への影響を考える前提として―
2 租税法への影響
3 慣習法の成立要件と消極的態度
6 まとめ―私見としての試見
第4章 法人税法22条にいう「別段の定め」
1 概 説
2 法人税法における「別段の定め」
1 法人税法22条2項および3項にいう「別段の定め」と公正処理基準
2 「別段の定め」の意義
3 「別段の定め」の範囲
1 寄附金課税の例
2 交際費等課税の例
4 租税特別措置法と法人税法との関係
1 租税特別措置の性質
2 租税特別措置の拡大
3 租税特別措置に対する裁判所や学説の姿勢
4 租税特別措置法の規定の解釈
5 租税特別措置法と法人税法22条にいう「別段の定め」との関係
1 租税特別措置法と公正処理基準
2 ま と め
第5章 中小企業会計と法人税法22条4項
1 概 説
2 法人税法22条4項にいう公正処理基準
3 中小企業における会計基準
1 中小企業の会計
2 平成14年商法改正以後の動向
3 中小企業会計指針
4 「『中小企業の会計に関する研究会』中間報告書」
5 「中小企業の会計に関する基本要領」
4 大企業会計の変容の影響
1 収益認識基準の対象と中小企業会計
2 返品調整引当金の廃止への影響
3 長期割賦販売等に係る収益・費用の認識への影響
第6章 「収益認識に関する会計基準」と法人税法
1 概 説
2 収益認識基準の位置付け・背景
1 収益認識基準の位置付け
2 収益認識基準の開発に向けた検討の背景
3 検討にあたっての基本的な方針
3 会計処理
1 基本となる原則
2 収益の認識基準
4 法人税法との径庭
1 問題関心
2 権利確定主義
3 管理支配基準
4 無条件請求権説
5 引渡基準の採用
5 5つのステップ
1 基本となる原則に関する設例
2 契約の識別
3 「契約の識別」にみる法的観察
4 契約の概念
5 変動対価
6 引渡基準
6 平成30年度税制改正
1 法人税法22条の2の新設
2 法人税法22条の2の射程範囲
7 会計と法人税法の決別と調和
1 変動対価の取扱いにおける会計と法人税法との決別
2 収益認識基準は公正処理基準たり得るか
3 収益認識基準を公正処理基準とする途を閉ざした法人税法22条
4項の「別段の定め」
4 収益認識基準との決別の反射効―返品調整引当金の廃止
5 平成30年度税制改正に係る問題点
8 法人税法22条の2の「別段の定め」
1 法人税法22条の2の「別段の定め」が示すもの
2 法人税法22条の2第3項
3 法人税法22条の2の「目的物」
4 権利確定主義との関係
5 長期割賦販売等に係る認識基準
9 収益認識基準と法人税基本通達
1 国税庁のアナウンス
2 収益計上単位
3 収益の減額
4 変動対価
5 収益の計上時期
10 「別段の定め」祭り
1 二重のルートからの「別段の定め」に対する疑問
2 「別段の定め」概念の多用と課税要件明確主義
11 ま と め
著者プロフィール
酒井 克彦(さかい かつひこ)
1963年2月東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士(中央大学)。中央大学商学部教授。㈳アコード租税総合研究所(At-I)所長。㈳ファルクラム代表理事。
著書に,『レクチャー租税法解釈入門』(弘文堂・2015年),『租税正義と国税通則法総則』(信山社・2018年〔共編〕),『キャッチアップ改正相続法と税務』(2019年),『キャッチアップ外国人労働者の税務』(2019年),『キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(2018年),『新しい加算税の実務』(2016年),『附帯税の理論と実務』(2010年)(以上,ぎょうせい),『通達のチェックポイント―相続税・贈与税裁判事例精選20―』(2019年),『同―所得税裁判事例精選20―』(2018年),『同―法人
税裁判事例精選20―』(2017年),『アクセス税務通達の読み方』(2016年)(以上,第一法規),『「正当な理由」をめぐる認定判断と税務解釈』(2015年),『「相当性」をめぐる認定判断と税務解釈』
(2013年)(以上,清文社),『ステップアップ租税法と私法』(2019年),『クローズアップ事業承継税制』(2019年),『クローズアップ保険税務』(2017年),『クローズアップ租税行政法〔第2版〕』(2016年),『クローズアップ課税要件事実論〔第₄版改訂増補版〕』(2017年),『スタートアップ租税法〔第3版〕』(2015年),『所得税法の論点研究』(2011年),『ブラッシュアップ租税法』(2011年),『ステップアップ租税法』(2010年),『フォローアップ租税法』(2010年)(以上,財経詳報社),『裁判例からみる所得税法』(2016年),『裁判例からみる法人税法〔2訂版〕』(2017年),『裁判例らみる相続税・贈与税〔3訂版〕』(2013年〔共著〕),『行政事件訴訟法と租税争訟』(2010年)(以上,大蔵財務協会),『プログレッシブ税務会計論Ⅰ〔第2版〕』(2018年)『プログレッシブ税務会
計論Ⅱ〔第2版〕』(2018年)(以上,中央経済社)などがある。その他,論文多数。
- 担当編集者コメント
- 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは?
法人税法と企業会計をつなぐ法人税法22条4項をひもとき、本質を探る。
知識の整理、体系的な理解に役立つ最良の教科書。
法人税法は、法人所得の金額の計算において、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」(「公正処理基準」)に
従った処理を要請し、いわゆる企業会計準拠主義を採用しています。こうした姿勢は、確定決算主義や損金経理処理
あるいは平成30年度税制改正で採用された収益経理処理にも表れていますが、しばしば法人税法上の事例においては、
公正処理基準該当性を巡って訴訟が提起されるなどしており、同基準の意義を巡る議論がこれまで長い間続けられています。
また、近時は、国際会計基準の影響を受けた国内会計基準が法人税法にいかなるインパクトを与えるかという点からも、
公正処理基準に関心が寄せられているところです。
本書では、姉妹書である『プログレッシブ税務会計論I』『II』と同様に「企業会計準拠主義とは何か?」という視点のもと、
法人税法の根底に流れる企業会計準拠主義の基礎的な部分を取り上げながら、その本質を探っています。
●本書の構成●
第1章 法人税法22条4項における公正処理基準
第2章 公正処理基準該当性の判断アプローチ
第3章 法人税法22条4項と慣習
第4章 法人税法22条にいう「別段の定め」
第5章 中小企業会計と法人税法22条4項
第6章 「収益認識に関する会計基準」と法人税法
本書では、知識の整理や体系的な理解に役立つように、「☞」において用語や概念について丁寧に解説し、
「☑」において判例・学説等の考え方をわかりやすくまとめています。