- 本の紹介
- 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って税務計算はなされるが、近年、法人税法独自の解釈が示される判例が出てきている。この間の問題を取り上げ検討する。
目次
税務会計と租税判例
目次
序章 判例研究の分析視点と評価方法
1 はじめに
2 研究の目的
3 契機となった判例紹介
4 先行研究
5 研究事例紹介:判例研究の方向性
―ビックカメラ事件を題材にして
6 おわりに
第1章 エスブイシー事件
(最高裁第三小法廷平成6年9月16日決定)
1 はじめに
2 所得税法における必要経費と法人税法における損金の相違点
3 違法所得の益金性
4 違法支出の損金性
5 エスブイシー事件にみる脱税経費の損金性
6 公正処理基準に税法的価値判断を組み込むことの是非
7 おわりに
第2章 所有権移転外ファイナンスリース事件
(福岡地裁平成11年12月21日判決)
1 問題の所在
2 事実の概要と裁判所の判断
3 所有権移転外ファイナンスリース取引の取扱い
4 判決の視点
5 法人税法22条4項の趣旨
6 おわりに
第3章 プリペイドカード事件
(名古屋地裁平成13年7月16日判決)
1 はじめに
2 プリペイドカード事件
3 公正処理基準該当性
4 おわりに
第4章 興銀事件
(最高裁第二小法廷平成16年12月24日判決)
1 はじめに
2 事実の概要
3 争点および当事者の主張
4 判決要旨
5 過去の判例の動向
6 貸倒れに関する公正処理基準の解釈
7 公正処理基準該当性の検討
8 おわりに
第5章 中部電力事件
(東京地裁平成19年1月31日判決)
―法人税法第22条4項と有姿除却
1 はじめに
2 法人税法の趣旨目的
3 法人税法上の公正処理基準
4 会社法上の公正処理基準
5 固定資産の除却
6 東京地裁平成19年1月31日判決への当てはめ
7 おわりに
第6章 オリックス銀行事件
(東京高裁平成26年8月29日判決)
―住宅ローン債権の流動化取引に係る劣後受益権の会計処理
1 はじめに
2 事実の概要
3 判 旨
4 検 討
5 おわりに
第7章 弁護士報酬の着手金の収入計上時期
(最高裁第三小法廷平成21年4月28日決定)
―所得税法における権利確定主義の検討
1 はじめに
2 所得税法36条の解釈と権利確定主義の関係
3 裁判例の検討
4 所得税法における収入金額の認識についての検討
5 おわりに
第8章 弁護士会役員交際費事件
― 所得税法上の家事関連費における必要経費との区分要件
(合理性と客観性を中心として)
1 はじめに
2 整備答申における所得税法の理念と収益および費用の基本的
理解
3 家事費と家事関連費
4 必要経費の判断に客観性要件を用いた家事関連費に関する
判例裁決事例
5 弁護士会役員交際費事件にみる家事関連費における必要
経費性の判断
6 おわりに
第9章 法人所得課税と減価償却⑴
―日本郵船株式会社を中心として
1 はじめに
2 日本郵船株式会社創設期からの船舶減価引除金の取扱い
3 明治35年頃までの企業会計および商法における減価償却の
取扱い
4 おわりに
第10章 法人所得課税と減価償却⑵
―日本郵船株式会社を中心として
1 はじめに
2 明治35年頃までの法人所得課税における減価償却の取扱い
3 日本郵船株式会社対東京税務監督局長
「所得金額決定不服ノ訴」事件
4 おわりに
総括 税務会計研究の再検討
1 はじめに
2 税務会計における所得の定義
3 判例分析の視点と評価方法
4 企業利益と法人所得
5 税務会計の特殊な位置づけ
6 税務会計の特徴
著者プロフィール
末永 英男(すえなが ひでお)
博士(経済学・九州大学)
1950年4月長崎県生まれ。
1979年 西南学院大学大学院商学研究科博士後期課程満期退学。
西日本短期大学講師・助教授,麻生福岡短期大学助教授・教授,近畿大学教授,熊本学園大学教授を経て,
2009年 熊本学園大学大学院会計専門職研究科教授。
(研究業績)
『税務会計研究の基礎』(単著,九州大学出版会,1994年)
『法人税法会計論』(単著,中央経済社,初版1998年,第8版2016年)
『連結経営と組織再編』(編著,税務経理協会,2002年)
『租税特別措置の総合分析』(編著,中央経済社,2012年)
「最高裁判決『長崎年金二重課税事件』」(『税務弘報』第58巻第11号,2010年)
「寄附金税制の現状と問題点」(『税研』第26巻第6号,2011年)
「会計基準と公正処理基準の乖離」(『税経通信』第70巻第7号,2015年)
「租税判例にみる企業会計に対する無理解」(『税研』第31巻第4号,2015年)
「会計学の視点からみた租税法律主義と租税公平主義」(『税研』第34巻第1号,2018年)