会計のヒストリー80

野口 昌良
清水 泰洋
中村 恒彦
本間 正人
北浦 貴士

定価(紙 版):2,860円(税込)

発行日:2020/03/23
B5判 / 200頁
ISBN:978-4-502-33671-3

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本の紹介
簿記・財務会計・管理会計・監査の80テーマをもとに、会計の歴史のダイナミズムを楽しむこと、また歴史を通じて会計の知識を深く掘り下げることが出来るテキスト。

目次

第1部 簿記・財務会計

1 簿記・会計の起源:勘定の生成

2 複式簿記の起源:帳簿組織の生成

3 15世紀に至るまでの簿記の生成

4 ネーデルランドの簿記書と東インド会社

5 イギリスへの複式簿記の伝播と展開

6 簿記から会計へ

7 日本への簿記の伝播

(コラム1)日本の簿記書

8 製本簿からコンピュータへ

(コラム2)XBRL GL

9 商法会計制度の展開(17世紀~)

10 20世紀初頭の会計

11 企業会計原則

(コラム3)Instruction

12 国際会計基準の生成

13 国際会計基準の歴史:比較可能性プロジェクトとコア・スタンダード

14 国際財務報告基準の台頭

15 概念フレームワーク

16 連結財務諸表

(コラム4)わが国における連結財務諸表制度の確立

(コラム5)非営利組織会計の歴史的展開

17 キャッシュ・フロー計算書

18 株主資本等変動計算書導入の歴史的背景

19 資産負債アプローチと収益費用アプローチ

20 包括利益計算書導入の歴史的背景

21 資産評価(基準)

22 収益認識

23 商品勘定の歴史

24 減価償却

(コラム6)日本における減価償却

25 減損会計

26 リース会計

27 のれん

28 研究開発費

29 税効果会計

30 純資産

31 株主資本

32 自己株式

33 ストックオプション

(コラム7)農業簿記



第2部 管理会計

34 アメリカ管理会計史

35 業績評価におけるコントロールチャート

36 ドイツにおける原価計算の歴史的展開

37 日本における管理会計実務(1920~50年代)

38 「原価計算基準」はいかにして制定されたか

(コラム8)命を懸けた会計学者達

39 CSRと会計の歴史的展開

40 直接原価計算の誕生と展開・発展

41 標準原価計算の誕生と展開

42 設備投資意思決定の誕生から展開、発展について

43 品質原価計算

44 原価企画

(コラム9)造船業の原価企画

45 ABC(ABM、ABBを含む)

46 研究開発費管理

47 ライフサイクルコスティングの誕生と展開

(コラム10)ドイツのプロセス原価計算

48 業績管理会計の生成と発展

49 アメーバ経営の生成と発展

50 環境管理会計

51 マテリアルフローコスト会計

52 バランスト・スコアカード

53 インタンジブルズ

(コラム11)北米の鉄道会社における経営分析



第3部 監 査

54 スコットランドにおける会計プロフェッションと会計士監査制度

(コラム12)戦前日本における英国勅許会計士と電力外債

55 会計士監査制度の歴史

56 日本の会計士制度

(コラム13)日本の計理士制度の形成

57 公認会計士法

58 監査基準

59 監査法人制度

60 監査人の職業的懐疑心(監査人の責任)

61 リスク・アプローチ

62 監査手続―実証手続・分析的手続・その他各種手続

63 継続企業の前提に関する監査

64 継続企業の前提に関わる監査―津島毛糸紡績株式会社の1961年12月期の監査報告書に注目して

65 不正リスク対応

66 監査意見

67 内部統制監査

著者紹介

野口 昌良(のぐち まさよし)
[プロフィール]
東京都立大学大学院経営学研究科教授 PhD (Wales) Universuty of Wales Cardiff

清水 泰洋(しみず やすひろ)
[プロフィール]
神戸大学大学院経営学研究科教授 博士(経営学)神戸大学

[主な著作]
『アメリカの暖簾会計-理論・制度・実務』中央経済社、2003年

中村 恒彦(なかむら つねひこ)
[プロフィール]
桃山学院大学大学院経営学研究科教授 博士(経営学)神戸大学

[主な著作]
『会計学のイデオロギー分析』森山書店、2016年

本間 正人(ほんま まさと)
[プロフィール]
海上自衛隊下総航空基地隊 博士(経済学)埼玉大学

北浦 貴士(きたうら たかし)
[プロフィール]
明治学院大学経済学部准教授 博士(経済学)東京大学

[主な著作]
『企業統治と会計行動―電力会社における利害調整メカニズムの歴史的展開』東京大学出版会、2014年

担当編集者コメント
◆本書のねらい
本書のねらいは大きく2つあります。1つは、会計に対する「なぜ」という素朴な疑問に答えることです。「簿記ほど学ばれずして嫌われる学問はない」と述べた会計史研究者がいます。これは簿記検定を思い浮かべてみればわかります。一定の水準に達するまでは、仕訳のルールや制度の条文などを丸暗記したほうが点数をとりやすく、短期間で試験に合格しやすい。しかし、この学習法では、簿記に素朴な疑問をもつような人たちが簿記嫌いになってしまい、仕訳や制度の歴史的経緯を後回しにする人たちが会計専門家になってしまいます。そこで、本書は、会計好きの人たちが現在の仕組みがどのようにできあがってきたかということを歴史から学ぶことをねらいにしています。

もう1つは、歴史(日本史・世界史とも)に関心を寄せる人たちに応えたいからです。たとえば、「武士の家計簿」「「忠臣蔵」の決算書」などにみられるように、歴史研究者が江戸時代の勘定書を研究した成果を新書として発行し、それらから映画作品が作られて話題になっています。すなわち、歴史好きな人たちは「会計」に強い関心を寄せています。ただし、彼らが「会計学」に関心があるかどうかは別問題です。なぜなら、会計学といえば、資格や制度の話ばかりで物語(ストーリー)がありません。そこで、本書は、歴史好きな人たちが、歴史のエピソードを通じて会計技術・記帳方法・技法に関心をもってもらうことをねらいにしています。

◆本書の読み方
本書のねらいは、会計好きと歴史好きの相互交流を促進することにありますので、2つの読み方ができるよう工夫しました。

1つは、歴史のダイナミズムを楽しむことです。たとえば、日本では江戸時代の武士が家計簿をつけていたころ、オランダ東インド会社の長崎商館ではすでに本支店会計を備えた複式簿記が採用されていた、イギリスではスコットランドの会計士が銀行の倒産にともなう破産業務の仕事をこなすことから専門家として成立していたなどです。実は、歴史上の大きな出来事と、会計技術・記帳方法・技法の歴史とは無関係ではないのです。一見、無関係にみえる事象が実は密接に結びついている様子を発見してゆくことは学びの喜びになることでしょう。

もう1つは、会計の歴史を通して会計技術・記帳方法・技法に関する知識を深く掘り下げることです。たとえば、減価償却と取替法と減損といった、固定資産を費用にすることなのに、制度や計算の仕組みが少し異なる場合があります。減価償却と取替法と減損の違いは、それぞれの歴史的経緯を紐解いてみれば理解がより深まるでしょう。減価償却と取替法は、19世紀のイギリス鉄道会社に関連していますが、減損は1970年代アメリカの石油危機に関連して始まっていることがわかるでしょう。このように、仕訳のルールや制度の条文を丸覚えするだけではわからない事情を歴史的経緯から学ぶことができます。