- 本の紹介
- 近時の法人税法の書籍では、歴史的な記述が少ない。しかし、計算構造の基礎概念及び原則の歴史を理解することで、研究・実務の幅は格段に拡がる。本書はその歴史を詳述。
目次
税務会計基礎概念史
目次
はしがき
第1章 税務会計史の変遷
1 基礎概念等の歴史的分析の意義
2 明治20年の所得税創設以降の主要な出来事
3 法人税制沿革の概要 …他
第2章 法人課税と配当課税
1 法人税創設時の法人課税と配当課税の関係
2 大正9年の税制改正
3 大正15年の税制改正 …他
第3章 確定決算主義(その1)
1 法人税法における確定決算主義に関する規定
2 確定決算主義の「広義説」と「狭義説」
3 確定決算主義の沿革 …他
第4章 確定決算主義(その2)
1 確定決算主義に関する現状維持派と廃止・改正派
2 確定決算主義廃止論に与する意見と確定決算計上基準の存否
3 外的要因論とした国際会計基準と確定決算主義の関係 …他
第5章 収益計上基準(その1)―権利確定主義,実現主義
1 明治32年の法人税の条文
2 権利確定主義の定着時期
3 所得概念としての純資産増加説 …他
第6章 収益計上基準(その2)―無償取引,公正処理基準
1 法人税法第22条における益金に関する規定の意義
2 法人税法第22条第2項の収益となる取引
3 無償・低廉取引の課税に関するチェックポイント …他
第7章 収益計上基準(その3)―特殊販売等・資本等取引
1 特殊販売・請負工事に関する規定
2 割賦販売の処理に関する沿革
3 委託販売,試用販売,予約販売に係る法人税法の適用関係 …他
第8章 受取配当・益金不算入制度・みなし配当・評価損益
1 昭和25年の税制改正(シャウプ税制)における配当所得に係る
改正
2 受取配当の益金不算入制度の変遷
3 平成21年度導入の外国子会社配当益金不算入制度の背景と
概要 …他
第9章 棚卸資産・有価証券・減価償却・繰延資産
1 棚卸資産
2 有価証券
3 減価償却 …他
第10章 債務確定基準・引当金準備金・給与・寄附金
1 債務確定基準の意義
2 法人税法における債務未確定の例として別段の定めとなる引当金
の沿革
3 貸倒引当金の沿革 …他
第11章 交際費等・貸倒損失
1 交際費等の規定が本法規定でない理由
2 交際費等の規定の変遷
3 証券会社の損失補填と交際費等課税 …他
第12章 圧縮記帳・欠損金の繰越・同族会社の行為計算否認
1 圧縮記帳の沿革
2 圧縮記帳に対する企業会計側からの批判
3 欠損金の繰越の沿革 …他
第13章組織再編税制(その1)―概論
1 組織再編税制の今後の進展予測
2 平成13年度税制改正により整備された組織再編税制の背景
3 法人組織の税務 …他
第14章 組織再編税制(その2)
―事業譲渡・株式交換・株式移転
1 事業譲渡に関する税務
2 株式交換・株式移転に関する税務
第15章 組織再編税制(その3)―企業買収
1 会社法における動向
2 M&Aの概要
3 平成19年度税制改正
第16章 組織再編税制(その4)―組織再編税制の沿革
1 現在の組織再編税制
2 組織再編税制に係る訴訟として注目された事案
3 組織再編税制の改正に流れる考え方における変化の有無 …他
第17章 組織再編税制(その5)―合併の税務
1 合併に関する会社法の規定
2 企業組織再編税制
3 組織再編成の税務 …他
第18章 組織再編税制(その6)―分割の税務
1 旧商法における会社分割法制
2 会社分割に関する会社法の規定
3 企業組織再編に係る分割税制
第19章 組織再編税制(その7)
―クロスボーダー現物出資・事前照会・文書回答手続
1 事前照会の事例
2 法令の変遷
3 クロスボーダー現物出資課税のポイント …他
第20章 留保金課税
1 法人の内部留保の実態
2 経営の観点からの留保金課税批判論
3 外国法人との比較に基づく批判 …他
第21章 税額計算(所得税額控除・外国税額控除)
1 税額控除の種類
2 所得税額控除の沿革
3 外国税額控除と損金算入の選択 …他
第22章 法人の設立から破産までの税務(その1)
1 法人設立から解散等に係る税務
2 設立に関する税務
3 期末資本金1億円以下の法人等が中小法人として区分される
税法上の特例措置 …他
第23章 法人の設立から破産までの税務(その2)
1 組織変更に関する税務
2 持株会社に関する税務
3 民事再生に関する税務 …他
補 章 グループ通算制度
1 連結納税制度の見直し
2 連結納税制度・グループ法人制度・グループ通算制度の比較
3 グループ通算制度からの離脱 …他
索 引
著者プロフィール
〈著 者 〉
矢 内 一 好
- 担当編集者コメント
- 〇本書の趣旨
近年の法人税法に関する書籍においては、歴史的記述が少なくなっています。法人税の実務という観点からすると、条文の背景となる歴史的な沿革は、条文解釈に劣後することが理由のようです。また、出版物の場合、頁数の制約等から削除となることもあります。
実務という面からすぐに役立つ法人税実務が優先する事情は理解できますが、法人税の基礎的な研究も必要と思われます。このすぐに役立たない「税法基礎分野」に歴史研究。歴史研究には、税務会計に対する理解の幅を拡げるという効能があるように思えます。
そこで本書は、法人税における課税所得及び税額の計算を対象とする税務会計の領域において、その計算構造の基礎となる概念及び原則について、その沿革と問題点について検討しています。
〇Contents
第1章 税務会計史の変遷
第2章 法人課税と配当課税
第3章 確定決算主義(その1)
第4章 確定決算主義(その2)
第5章 収益計上基準(その1)権利確定主義、実現主義
第6章 収益計上基準(その2)-無償取引、公正処理基準
第7章 収益計上基準(その3)-特殊販売等・資本等取引
第8章 受取配当・益金不算入制度・みなし配当・評価損益
第9章 棚卸資産・有価証券・減価償却・繰延資産
第10章 債務確定基準・引当金準備金・給与・寄附金
第11章 交際費等・貸倒損失
第12章 圧縮記帳・欠損金の繰越・同族会社の行為計算否認
第13章 組織再編税制(その1)-概論
第14章 組織再編税制(その2)-事業譲渡・株式交換・株式移転
第15章 組織再編税制(その3)-企業買収
第16章 組織再編税制(その4)-組織再編税制の沿革
第17章 組織再編税制(その5)-合併の税務
第18章 組織再編税制(その6)-分割の税務
第19章 組織再編税制(その7)-クロスボーダー現物出資・事前照会・文書回答手続
第20章 留保金課税
第21章 税額計算(所得税額控除・外国税額控除)
第22章 法人の設立から破産までの税務(その1)
第23章 法人の設立から破産までの税務(その2)
補 章 グループ通算制度
税理士、公認会計士、会計事務所職員、国税関係職員の方々はもちろんのこと、大学院で修士論文を執筆する際も非常に参考になると思われます。
なお、姉妹書の以下もあわせてお読みください
『日本・国際税務発展史』
矢内一好(著) <A5判・300頁>
『日本・税務会計形成史-法人税・企業会計・商法の関連性』
矢内一好(著) <A5判・248頁>