日本企業の利益マネジメント―実体的裁量行動の実証分析
- 本の紹介
- 事業活動を通じた利益調整行動の実施状況・経済的帰結・要因について、決算短信制度、メインバンク制によるガバナンスシステム等日本企業特有の事情を踏まえ実証的に解明。
目次
第1章 本書の目的と構成
第1節 本書の背景と目的
第2節 本書の特徴と意義
第3節 本書の構成
第2章 先行研究の整理
第1節 本章の目的と構成
第2節 実体的裁量行動の実施状況
2.1 営業活動の操作
2.2 投資活動の操作
2.3 財務活動の操作
第3節 実体的裁量行動の経済的帰結
3.1 将来業績に与える影響
3.2 証券価格に与える影響
3.3 その他の経済的帰結
第4節 実体的裁量行動の要因
4.1 契約
4.2 証券市場からのプレッシャー
4.3 コーポレート・ガバナンス
4.4 その他の要因
第5節 会計的裁量行動との関係
5.1 会計制度の改革と実体的裁量行動
5.2 実体的裁量行動と会計的裁量行動の相互関係
第6節 本章の要約と課題
第3章 利益ベンチマークの達成と実体的裁量行動
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 利益マネジメントが疑われる企業の特定
3.2 実体的裁量行動の測定
3.3 仮説の検証方法
3.4 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 利益分布と標準化差異の検定
4.2 実体的裁量行動の測定モデルの推定結果
4.3 基本統計量
4.4 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
5.1 実体的裁量行動の合成尺度を用いた検証
5.2 複数の利益ベンチマークの同時達成に関する検証
第6節 本章の要約と課題
第4章 連続増益の達成と実体的裁量行動
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 利益変化の分布の作成
3.2 実体的裁量行動の測定
3.3 仮説の検証方法
3.4 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 利益変化の分布
4.2 基本統計量
4.3 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
第6節 本章の要約と課題
第5章 実体的裁量行動が将来業績に与える影響
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 実体的裁量行動の測定
3.2 仮説の検証方法
3.3 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 会計上のフレキシビリティに関する予備的検証
4.2 基本統計量
4.3 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
5.1 実体的裁量行動の代理変数に関する頑健性テスト
5.2 会計上のフレキシビリティの代理変数に関する頑健性テスト
5.3 利益ベンチマーク達成の代理変数に関する頑健性テスト
第6節 本章の要約と課題
第6章 経営者予想利益の達成に対する株式市場の評価と実体的裁量行動
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 会計的裁量行動の測定
3.2 実体的裁量行動の測定
3.3 仮説の検証方法
3.4 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 基本統計量
4.2 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
5.1 JUSTMISSとJUSTMEETを比較した検証
5.2 REVとSURPを正負で比較した検証
第6節 本章の要約と課題
第7章 実体的裁量行動の要因分析
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
2.1 契約に関する要因
2.2 証券市場に関する要因
2.3 コーポレート・ガバナンスに関する要因
2.4 会計的裁量行動とのトレード・オフに関する要因
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 実体的裁量行動の測定
3.2 仮説の検証方法
3.3 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 基本統計量
4.2 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
第6節 本章の要約と課題
第8章 経営者交代と実体的裁量行動
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 実体的裁量行動の測定
3.2 仮説の検証方法
3.3 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 経営者交代に関する基礎データ
4.2 基本統計量
4.3 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
5.1 経営者交代のタイプに関する頑健性テスト
5.2 新任経営者の出身に関する頑健性テスト
5.3 会計的裁量行動に関する検証
第6節 本章の要約と課題
第9章 証券発行と実体的裁量行動
第1節 本章の目的と構成
第2節 仮説の設定
2.1 公募増資と実体的裁量行動
2.2 普通社債の発行と実体的裁量行動
2.3 転換社債の発行と実体的裁量行動
第3節 リサーチ・デザイン
3.1 実体的裁量行動の測定
3.2 仮説の検証方法
3.3 サンプルとデータ
第4節 分析結果
4.1 証券発行に関する基礎データ
4.2 基本統計量
4.3 仮説の検証結果
第5節 追加的検証
5.1 複数タイプの証券発行と実体的裁量行動
5.2 会計的裁量行動に関する検証
第6節 本章の要約と課題
第10章 結論と課題
第1節 本書の発見事項
第2節 本書の結論
第3節 本書の貢献
第4節 今後の課題
参考文献
索引
- 担当編集者コメント
- ◆本書の趣旨
経営者が会計基準の規定の範囲内で利益を調整する行動は「利益マネジメント」と呼ばれ,その手段は(1)会計上の操作を通じて利益を調整する会計的裁量行動と(2)事業活動の操作を通じて利益を調整する実体的裁量行動に区別できます。
これまでの日本の利益マネジメント研究の多くが会計的裁量行動に焦点を当てていますが,利益マネジメントの全体像を理解するためには,会計的裁量行動だけでなく,実体的裁量行動も解明する必要があります。
本書は,日本企業の実体的裁量行動について,以下の観点から実証分析を行い,体系的に解明することを目的としています。
① 実施状況―実体的裁量行動は実施されているか?
② 経済的帰結―実体的裁量行動は企業にどのような経済的影響を及ぼすか?
③ 要因―実体的裁量行動はどのような要因に影響を受けるか?
近年,多くの企業で実体的裁量行動が行われているといわれる中,本書は貴重な研究成果を提示しているといえます。
経営者,経理・財務担当の方,公認会計士・税理士,会計制度に関わる方々にぜひご覧いただきたい研究書です。
*本書は、以下の賞を受賞しました。
・第65回(2022年度)日経・経済図書文化賞
・2022年日本会計研究学会太田黒澤賞
・2022年日本管理会計学会文献賞