- 本の紹介
- 米国統治下の琉球政府時代の証券市場や監査制度・開示制度等を、歴史的変遷と制度趣旨を本土と比較しながら紐解く。本土よりも進歩的だった制度もあったこと等が明らかに。
目次
第1章 証券・金融市場を規制するアメリカ世の法制度
1.戦後沖縄における統治機構
⑴ 米国軍民政機構の変遷
⑵ 沖縄側の民政機構の変遷
2.アメリカ統治下における法体系
⑴ 法の雑居
⑵ 琉球政府の立法成立過程
第2章 琉球政府証券取引法
1. 連合国総司令部の影響を受けた本土の証券取引法
⑴ 戦前の証券取引関連法
⑵ 本土の証券取引法
2.琉球政府1957年立法第111号「証券取引法」
⑴ 沖縄と本土の証券取引法の相異
⑵ 証券取引法の改正
⑶ 証券取引法関連諸規則
⑷ 法令ではない企業会計原則
3.本土復帰関連法の概要
⑴ 沖縄復帰2法
⑵ 沖縄振興開発3法
第3章 沖縄におけるディスクロージャー制度
1. 投資家保護を目的とするディスクロージャー制度
⑴ ディスクロージャー制度の目的
⑵ ディスクロージャー制度の概要
2. 琉球政府証券取引法ディスクロージャー制度
⑴ 有価証券届出書による届出制度
⑵ 有価証券通知書
⑶ 有価証券報告書
⑷ 公認会計士による監査制度
⑸ 開示規制に係る損害賠償責任・罰則規定
3.本土復帰後のディスクロージャー制度
⑴ 有価証券届出書と有価証券報告者が両輪
⑵ 有価証券報告書提出会社は23社と激減
⑶ 有価証券報告書提出免除事由の拡大
第4章 沖縄における公認会計士制度
1.本土の公認会計士法
⑴ 計理士制度から公認会計士制度へ
⑵ 計理士救済のための特別公認会計士試験等
2. 琉球政府1957年立法第110号「公認会計士法」
⑴ 沖縄と本土における公認会計士法の相異
⑵ 公認会計士試験の特例
3.本土より対象範囲が広い公認会計士監査
⑴ 業法に基づく公認会計士監査
⑵ 本土にない保険会社等に対する公認会計士監査
4.本土復帰に伴う公認会計士等資格の一体化
⑴ 高等弁務官に対する日米琉諮問委員会
⑵ 本土復帰に伴う措置
第5章 本土より早い銀行に対する公認会計士監査
1. 本土における銀行等に対する証券取引法監査
⑴ 公認会計士による証券取引法監査の制度化
⑵ 公認会計士監査が免除された金融機関
2. 沖縄における銀行等に対する証券取引法監査
⑴ 琉球政府証券取引法の監査対象会社
⑵ 公認会計士監査が免除された金融機関
3. 銀行法よりも厳格であった高等弁務官布令第37号
⑴ 琉球政府が銀行法改正勧告を無視
⑵ 銀行経営に大きな影響を与えた布令第37号
⑶ キャラウェイ旋風のはじまり
⑷ 琉球政府金融検査部に「鬼平」現われる
⑸ 本土より15年早い銀行に対する公認会計士監査
第6章 琉球政府証券業者行政
1.戦後最初の証券業者は金一証券
⑴ 戦前の日本法に基づく有価証券業の免許
⑵ 本土株式を取り扱うための対外投資業務の認可申請
⑶ 金一証券の営業状況
2.本土の証券業者は登録制から免許制へ
⑴ 連合国総司令部の要求に基づき登録制
⑵ 登録制から免許制へ移行
⑶ 再度登録制への移行
3.沖縄の証券業者は登録制のまま本土復帰
⑴ 沖縄の証券業者は登録制
⑵ 地場三証券会社設立
⑶ 地場三証券会社の経営成績および財政状態
⑷ 審査未了となった2つの法案
4.本土復帰に伴う地場証券会社
⑴ 大宝証券・沖縄証券の2社体制で復帰
⑵ 先送りを許した登録制から免許制への経過措置
第7章 債券市場を育てた琉球電信電話公社
1.琉球電信電話公社電信電話債券
⑴ 米国民政府の指示により設立された琉球電信電話公社
⑵ 電信電話債券
⑶ 5回にわたる琉球電信電話公社債券
⑷ 琉球政府全額出資法人にも公認会計士監査
⑸ 本土復帰に伴う電信電話債券の償還
2.本土復帰後の日本電信電話公社債券
⑴ 本土復帰後強制された加入者引受電信電話債券
⑵ 債券市場をリードした加入者引受電信電話債券
第8章 債券発行市場で引受業務を担った琉球銀行
1.米軍政府布令で設立された琉球銀行
⑴ 琉球銀行設立前の金融事情
⑵ 米軍政府使命達成のために設立された琉球銀行
2.琉球政府が免許を与えた金融機関
⑴ 相互銀行法に基づく金融機関
⑵ 銀行法に基づく金融機関
3. 金融機関に証券業務を禁止する銀証分離政策
⑴ 金融機関による証券業務は原則禁止
⑵ 金融機関に例外的に許容される証券業務
4. 琉球政府非保証債を引き受けた琉球銀行の証券業務
⑴ 琉球銀行条例における琉球銀行の証券業務
⑵ 証券取引法における琉球銀行の証券業務
⑶ 電信電話債券の引受けができなかった銀行・証券会社
5.本土復帰後の金融機関
⑴ 本土復帰に伴う金融機関の経過措置
⑵ 証券取引法における銀証分離政策のその後
第9章 機能しなかった株式発行市場
1.株式の発行形態および発行方法
⑴ 株式の発行形態
⑵ 株式の発行方法
2.株式発行形態からみた沖縄の株式発行市場
⑴ 発起設立と第三者割当が多かった株式発行市場
⑵ 共同体社会の風土が然らしめる同族的支配
⑶ 同族企業グループの形成
⑷ 本土よりも長かった商法の株式分割払込制度
3.株式保有形態からみた沖縄の株式発行市場
⑴ 有価証券報告書提出会社所有者別株式保有状況
⑵ 金融機関の政策投資
⑶ 最後の頼みは外資導入
⑷ 成長できる企業が中小企業にとどまる
第10章 株式発行市場での直接募集
1.製糖会社のさとうきび生産農家株主
⑴ 沖縄における製糖業の変遷
⑵ 中部製糖を通してみる日琉政府の製糖業政策
⑶ 久米島製糖の生産農家株主
⑷ 個人株主株式の売買方法と売買価格
⑸ 製糖会社への外資導入状況
2.民間製造企業の株式直接募集
⑴ 株式直接募集で困難極めた民間企業の創設
⑵ 地元資本を結集した琉球セメントの設立
⑶ シーツ政策による琉球海運の設立
第11章 米国民政府保有株式の売出し
1. 米国民政府保有「琉球生命保険」株式の買戻し
⑴ 琉球生命保険株式会社の設立
⑵ 米国民政府保有株式買戻しと相互会社への組織替え
2.米国民政府保有「琉球銀行」株式の売出し
⑴ 米国軍政府保有割合51%資本金の推移
⑵ 米国軍政府布令から商法上の株式会社へ移行
⑶ 米国民政府による琉球銀行株式売出しの動き
⑷ 琉球銀行株式の売出し
⑸ 日米繊維交渉の影響を受けた米国資産買取り
⑹ 資本金関連の本土復帰処理
第12章 流通市場は地元株式より本土株式
1. 本土に比べて不利な状況にあった株式流通市場
⑴ 株式流通市場の特徴
⑵ 地場会社株式の流動性
⑶ 外資に関する法律と沖縄地場証券の現地手数料
⑷ 経済原則で割り切れない模合(もあい)
2.本土復帰後まで引きずったIOS 問題
⑴ 外国受益証券ミューチュアル・ファンド
⑵ 本土復帰後の対応
第13章 わが国企業による最初の公開買付けは沖縄電力
1.沖縄の電気事業
⑴ 琉球電力公社と配電会社による発送配電分離
⑵ キャラウェイ高等弁務官の善政 電気料金値下げ
⑶ 配電分離のまま沖縄電力株式会社設立
2.沖縄電力の配電会社に対する公開買付け
⑴ 沖縄電力の各配電会社株式買集め
⑵ わが国企業による最初の公開買付け
⑶ 沖縄電力転換社債の発行と優先募入
3.沖縄電力の民営化
⑴ 民営化前の沖縄電力の財政状態
⑵ 沖縄県民優先の株式売却
⑶ 沖縄電力株式の売出し
⑷ 県内三番目 沖縄電力株式上場
- 担当編集者コメント
- 沖縄は、2022年5月15日に本土復帰50年を迎えます。
本書は、1945年に米軍が沖縄本島に上陸してから、1972年5月15日に沖縄の施政権が日本に返還されるまでの27年間を追った証券史です。
さまざまな文献を紐解きながら歴史的変遷と制度趣旨を詳細に検討し、埋もれていた事実を次々に明らかにしています。
また、巻末に12ページにわたって収録された沖縄と本土の歴史年表も見ごたえがあります!
【主な目次】
第1章 証券・金融市場を規制するアメリカ世の法制度
第2章 琉球政府証券取引法
第3章 沖縄におけるディスクロージャー制度
第4章 沖縄における公認会計士制度
第5章 本土より早い銀行に対する公認会計士監査
第6章 琉球政府証券業者行政
第7章 債券市場を育てた琉球電信電話公社
第8章 債券発行市場で引受業務を担った琉球銀行
第9章 機能しなかった株式発行市場
第10章 株式発行市場での直接募集
第11章 米国民政府保有株式の売出し
第12章 流通市場は地元株式より本土株式
第13章 わが国企業による最初の公開買付けは沖縄電力