ESGリスク管理

後藤 茂之

定価(紙 版):3,080円(税込)

発行日:2023/03/03
A5判 / 240頁
ISBN:978-4-502-45571-1

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本の紹介
気候変動、人的資本などの非財務要素による企業価値の変動(ビジネスリスク)をどのように捉え、対応すべきか。不確実性の高いESG時代に必要な経営管理方法を検討する。

目次

はしがき

第1章 リスク社会の進展とリスク管理の変化
 1 経営環境の変化とリスク管理
  ⑴ 価値観の変化と企業行動の変化
  ⑵ ネットワーク社会におけるレジリエンス
 2 システム思考とレジリエンス
  ⑴ リスクとシステム思考
  ⑵ システム・ダイナミクスの知見の応用
  ⑶ 複雑なシステムの不安定性とレジリエンス
  ⑷ 経営環境へのシステム思考とレジリエンス
  ⑸ システム思考の環境・社会リスクへの活用
 3 ソーシャルリスクへの対応
  ⑴ ソーシャルリスクとシステムのレジリエンス
  ⑵ ソーシャルリスクへの管理
 4 経済学,社会学の視点を包摂したリスクへのアプローチ
   コラム 1  人工的システムへのシステム思考
   コラム 2  金融システミックリスク分析
   コラム 3  社会学から見るリスク

第2章 企業価値創造と非財務情報の開示
 1 無形資産の重要性の拡大
  ⑴ 無形資産の会計上の取扱い
  ⑵ ファイナンスにおける取扱い
  ⑶ 無形資産と投資価値
 2 非財務情報の開示
 3 価値創造ストーリーと非財務情報
  ⑴ 企業価値の考え方の変化
  ⑵ 企業活動の変化
  ⑶ 開示に関わる動向
  ⑷ 投資家の変化
 4 非財務情報とソーシャルリスク
   コラム 4  無形資産の認識と評価
   コラム 5  経済的価値と社会的価値の総合的アプローチ

第3章 環境リスクへの管理強化
 1 不確実性の拡大とリスク管理
 2 環境リスクに対する企業責任の拡大
 3 気候変動リスクの特徴とリスク管理の強化
  ⑴ 気候変動リスクの特徴
  ⑵ 気候変動リスクの分類
  ⑶ リスク管理プロセスの強化
   コラム 6  科学者とリスクマネジャーの対比
   コラム 7  技術革新による社会の変化と新たなリスクの登場

第4章 社会リスクへの管理強化
1 人材への考え方の変化と企業の戦略的対応
  ⑴ 人的資本への注目の背景
  ⑵ パーパス論議の意義と人的資本への戦略的アプローチ
 2 人的資本の評価と分析
  ⑴ 財務的分析と非財務的分析
  ⑵ プロセスに着目したアプローチ
  ⑶ 競争環境の変化と人的資本戦略の変化
 3 人的資本リスクの管理
  ⑴ 資源から資本への発想転換
  ⑵ 関連知見のレビュー
  ⑶ 気候変動対応の経験知の垂直・水平的展開
  ⑷ 人的資本リスクへのアプローチ
  ⑸ 人的資本と企業戦略
 4 シナジー効果とレジリエンス効果
  ⑴ 人的資本と企業価値の向上
  ⑵ シナジー効果の発揮
  ⑶ リスク管理とレジリエンスの向上
   コラム 8  報酬制度のガバナンス上の活用

第5章 動態的リスク管理の導入
 1 現代企業が直面するERM上の課題
 2 ESGに対応するための技術
  ⑴ システム思考による洞察力の強化
  ⑵ 洞察力を誘発するオープン型組織の醸成
  ⑶ 開示とステークホルダーとのコミュニケーションの強化
 3 不確実性を前提にした対応力の強化
  ⑴ ESGリスクへの取扱いの困難性
  ⑵ 確率論的アプローチの転換
  ⑶ 不確実性の分析に関わるデータ品質とモデルガバナンス
  ⑷ リスク心理への理解とリスク文化の醸成
 4 動態的リスク管理体系の構築の視点

第6章 ESG時代における動態的経営管理の構築
 1 経営戦略の策定と戦略のパラドックス
 2 トリガーポイントマネジメントによる俯瞰
  ⑴ 時間軸の悲劇のジレンマ
  ⑵ 変化のモニタリング
  ⑶ システム思考の導入とトリガーポイントマネジメント
 3 ESGによる企業価値変動の予測
  ⑴ ESGの取組みと企業価値との関係
  ⑵ 価値評価へのアプローチの視点
  ⑶ ESG要素の企業価値への影響に関する実証分析
  ⑷ ESGスコア活用上の留意点
 4 さらなる分析の必要性
  ⑴ 自然災害による影響の予測
  ⑵ 投資価値の変動の予測
 5 リスク社会における経営管理変革の意義と今後
  ⑴ 経営管理変革の意義
  ⑵ 統合的思考の展開
  ⑶ 共通性と固有性への対応
  ⑷ 動態的管理体系の構築
  ⑸ 多様な資本の活用
  ⑹ 開示とステークホルダーとのコミュニケーション
  ⑺ まとめ
   コラム 9  ESGスコアについて

あとがき

著者紹介

後藤 茂之(ごとう しげゆき)
[プロフィール]
専修大学大学院客員教授,中央大学大学院非常勤講師,静岡大学非常勤講師。商学実務特論,経営リスクマネジメントの講座,環境リスク・環境バイオにおける金融リスクを担当。

2015年3月まで大手損害保険会社及び保険持株会社にて,企画部長,リスク管理部長を歴任。損保•生保経営管理業務に従事。その間,日米保険交渉,合併・経営統合,海外M&A,保険ERMの構築などに参画。2015年4月より,大手監査法人にてリスクアドバイザリーサービスに従事。主として金融・保険会社に対し,経済価値ベースの管理(ERM高度化,IFRS導入),ガバナンス,リスクカルチャー,気候変動リスク,ESG要素の経営へのインテグレーションなどにかかわるサービスに従事,現在に歪る。
大阪大学経済学部卒業,コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所客員研究員(1996~1997), 中央大学大学院総合政策研究科博士課程修了。博士(総合政策),企業危機管理士。

[主な著作]
『気候変動時代の「経営管理」と「開示」』中央経済社(2022年,共同編著)
『リスク社会の企業倫理』中央経済社(2021年)
『気候変動リスクヘの実務対応』中央経済社 (2020年,編著)
『ERMは進化する-不確実性への挑戦』中央経済社(2019年)
『最新IFRS保険契約J保険毎日新聞社(2018年,第14章執筆)
『保険ERM基礎講座』保険毎日新聞社(2017年)
ERM経営研究会『保険ERMの理論と実践』金融財政事情研究会(2015年,第3章共同執筆)
Insurance ERM for New Generations, The Geneva Association, Insurance and Finance Newsletter, No.13 February 2014. P.25,26.
Building up capital buffers and recognizing judgemental risk, Asia Insurance Review, January 2013. P.76,77.
Behavioral Risk Management for Improper Risk Taking, Advaces In Management Vol.2 (4) April 2009. P.7-15.
The Bounds of Classical Risk Management and the Importance of a Behavioral Approach, Risk Management and Insurance Review, Vol.10, 2007. No.2, 267-282