総合商社論―Value Chain上の事業革新と世界企業化
- 本の紹介
- 90年代末には経営危機に瀕していた総合商社が事業基盤・収益基盤の再構築に成功し、2000年代に国際的な優良会社に変貌する過程を財務データとケーススタディで解明する。
目次
総合商社論
Value Chain上の事業革新と世界企業化
目次
はじめに
第1部 総合商社を巡る論点
~高業績を続ける商社ビジネスを支える基盤~
第1章 業績好調を続ける総合商社
第2章 総合商社ビジネスを支える基盤
1 過去の商社ビジネス
1 主要経営指標
2 ビジネス・モデル ……ほか
2 現在の商社ビジネス
1 成長性・効率性・財務安全性の3点セット
2 総合事業会社 ……ほか
第3章 本論の検討課題と構成
1 総合事業会社を巡る論点
1 財務データに基づく「総合事業会社」モデル分析
2 トレーディングと事業投資に関する統一的なフレームワーク
……ほか
2 リスク・マネジメントとポートフォリオ管理を巡る論点
1 歴史的な試行錯誤の産物としての商社ビジネス・モデル
2 「 攻め」のリスク・マネジメントとポートフォリオ管理への変化
……ほか
3 商社の事業・収益基盤のグローバル分散を巡る論点
1 「世界企業」への道
2 商社ビジネス分析における世界経済構造変化への配慮の
重要性
4 本書の構成
第2部 総合商社のビジネス・モデル
第1章 「総合事業会社」モデルとその問題点
第2章 「総合事業会社」の概念
1 伝統的な総合商社ビジネス
2 現在の総合商社ビジネス
1 ビジネス・モデルの転換
2 「総合事業会社モデル」
3 検 証
1 総合商社全般の収益構造の推移
2 総合商社各社の収益構造の相違
第3章 “Value Chain Design”モデル
1 “Value Chain Design”モデル
1 三菱商事によるモデル説明
2 自動車のサプライ・チェーンにおける“Value Chain Design”
2 “Value Chain Design”モデルの射程
1 “Value Chain Design”モデルの適用条件
2 “Value Chain Design”モデルの親和的な「商流」 ……ほか
3 商社各社により普遍的な「ビジネス・モデル」
1 伊藤忠商事のカンパニーの成長戦略
2 “Value Chain Design”との共通点と相違点
4 まとめ ~「サプライ・チェーン」と商社ビジネス~
第4章 総合商社と投資会社の比較
1 商社ビジネスにおける事業投資の位置づけ
2 外国投資家の総合商社観
~なぜ外国投資家は投資会社との比較にこだわるのか~
3 投資会社に優る収益率を上げる総合商社
1 投資会社の収益率
2 総合商社のROE の推移
4 総合商社に対する投資家の冷静な評価
5 まとめ
第5章 “Value Chain Design” 私論
1 “Value Chain Design” の前提とする市場
2 新興国市場における事業展開 ……ほか
補論:総合商社と資源会社との比較
1 資源・エネルギー部門の好調
2 資源会社との相違点
1 資金調達力の劣後
2 資源開発の制約 ……ほか
3 非資源会社として健闘する総合商社
第3部 優良会社(“Excellent Company”)
第1章 バブル崩壊後のパラダイム転換
第2章 バブル期の企業経営
1 バブル期の企業経営
1 1986~1990年の企業業績
2 「含み益経営」の罠 ……ほか
2 商社経営
3 三菱商事の主要指標の推移
第3章 「バブル崩壊」後の財務体質改善と収益基盤再構築の
取り組み
1 「バブル崩壊」に伴うビジネス・モデル転換
1 企業収益・財務の急激な悪化と進行
2 「縮み志向」の経営への転換 ……ほか
2 リスク・マネジメントとポートフォリオ管理
1 個別案件対応型リスク・マネジメントの限界
2 「縮み志向」の経営時代のリスク・マネジメント
3 リスク・マネジメント事例
1 三菱商事のポートフォリオ管理
2 伊藤忠商事のポートフォリオ管理
第4章 1990年代後半の“Corporate Governance”改革
1 長期戦化した財務体質改善
2 グローバル・スタンダード経営 ……ほか
第5章 2000年代前半の「リストラ」成功と「企業統治」改革
1 海外投資家の所有比率の向上が後押しした企業統治改革
2 収益構造の再構築の前提としてのリストラ
1 不良資産償却による資産圧縮
2 具体的な財務体質の改善状況
3 企業統治への米国型経営スタイルの導入
第6章 2000年代の“Excellent Company”
1 2000年代の“Excellent Company”
2 「攻めの経営」と“Portfolio”管理の展開
1 「積極投資」時代の「ポートフォリオ管理」の課題
2 個別事例1「三菱商事におけるポートフォリオ管理」 ……ほか
第7章 結 び
第4部 グローバル経営 ~新興国台頭と「世界企業」への道~
第1章 グローバル・ビジネス
1 総合商社のグローバル・ビジネスの変質
2 長期間に及んだグローバル・ビジネスの転換 ……ほか
第2章 1990年以降の内外経済の構造転換~2000年代の総合商社
のグローバル展開を用意した経済環境の変化~
1 1990年代の世界経済の構造転換
1 ASEAN を「世界の工場」とする生産ネットワーク
2 総合商社におけるグローバルな商流・物流の構築
2 2000年代の世界経済の構造転換
1 日米欧三極から米欧中三極への世界貿易の構造転換
2 「東アジア生産ネットワーク」の変容 ……ほか
3 国内市場の停滞と新興国市場の胎動
1 長期デフレと高齢化により成長性を喪失した国内市場
2 海外市場のビジネス・チャンスの拡大 ……ほか
第3章 三菱商事の海外戦略
1 事業基盤再構築にフォーカスした「MC2003」
2 「INNOVATION 2007」
~製造業のグローバル展開と中国台頭への対応~
3 「INNOVATION 2007」期間中の変化~国内成長停滞への
懸念と「グローバル成長の取込み」への軸足シフト開始~
1 地域戦略の横串化
2 国内成長からグローバル成長への重心移動
4 「INNOVATION 2009」における主役交代
~新規産業待望からグローバル・ビジネスへ~
1 グローバル成長の取込みに向けた取り組み
2 リーマン・ショック後も維持されたグローバル成長の取込み
戦略
5 「中期経営計画2012」~健全性・効率性に配慮した積極策~
1 ポートフォリオ・マップ上の地域軸の明示
2 新規成長分野もグローバル市場の成長分野にフォーカス
……ほか
第4章 伊藤忠商事の海外戦略
1 財務・収益基盤の再構築の中での中国・北米戦略の模索
2 「Frontier-2006」
~連結純利益の50%を海外で稼ぐことを目標化~
3 「世界企業」を経営理念に打ち出した「Frontier+2008」
1 収益のグローバル分散とビジネスの現地化を目標に
2 北米・中国・アジア市場に注力しアジア大の取引拡充へ
4 海外展開を加速化させた「Frontiere 2010」
~リーマン・ショック後の海外事業を中心とした業績回復~
5 「Brand-new Deal 2012」
~新興国に限定しないグローバルな活動を目標に~
第5章 公表数値による検証
1 伊藤忠商事の海外事業状況~道半ばの世界企業化~
1 連結純利益の6割台半ばに達した海外事業損益
2 売上高・収益より見た海外事業のウェイト ……ほか
2 三菱商事の海外事業状況
~国内市場との太い結びつきに立脚する収益構造~
3 住友商事の海外事業状況
~事業間だけでなく地域間にも貫徹されたポートフォリオ管理~
1 地域リスク分散を重視した基礎収益のグローバル分散
2 6割台を維持する国内収益比率 ……ほか
第6章 各社各様の「世界企業」への道
おわりに
参考文献
著者プロフィール
【執筆者紹介】
榎本俊一(えのもと しゅんいち)
1990年,東京大学法学部卒業,米国コロンビア大学ロースクール留学(法学修士)等を経て,
2010~2011年に東北大学大学院法学研究科教授(現代日本経済・
経済政策)等を務める。