IASBの基準開発メカニズム―「組織存続の論理」からの究明
- 本の紹介
- 公共政策の一環である会計基準の開発に際し、なぜ基準設定機関は多様な基準開発行動をとるのであろうか。IASBを20年間にわたって詳細に分析し、そのメカニズムを解明。
目次
序 章 本書のねらい
第Ⅰ部 問題設定と研究の視点
第1章 IASBの基準開発行動
第2章 会計規制研究の潮流
第3章 会計基準設定機関の基準開発行動モデル
第Ⅱ部 環境要因と戦略要素の分析
第4章 IASBの設立と展開
第5章 IASBの基準開発環境の認識と戦略策定に対する計量テキスト分析
第6章 組織分析に向けて:社会ネットワーク分析の適用
第Ⅲ部 組織編成の分析
第7章 追い風型基準開発行動:2001年-2005年の活動
第8章 追い風型基準開発行動:2006年-2010年の活動
第9章 妥協型基準開発行動:2011年-2015年の活動
第10章 捕囚型基準開発行動:2016年-2020年の活動
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終 章 本研究の要約とIASBの基準開発行動
- 担当編集者コメント
- 会計基準の開発にあたって、当初、基準設定機関は、財務諸表の利用者に有用な基準開発を試みるものの、そうした質や量が充実した財務諸表を作成するには、作成者の負担が増加する傾向にあります。そのため、作成者はそうした基準の開発に反対します。
会計基準の開発に際して、こうした財務諸表作成者との対立が生じる状況において、基準設定機関はどのような行動をとるでしょうか。
本書によると、利用者・作成者双方が納得するような妥協的な基準開発を行うこともあれば、作成者におもねるような基準開発を行うことも、また作成者の反対を押し切って利用者に有用な基準開発を行うこともあるようです。
このように基準設定機関が「多様な」会計基準の開発行動をとるのはなぜでしょうか。
筆者はこの問いを明らかにするために、IFRSの基準開発等を行うIASB(国際会計基準審議会)の20年間における基準開発行動を詳細に検証しています。
組織を存続させるためにIASBはどう行動を変えてきたのか、本書はそのメカニズムの解明を試みた研究書です。
会計学や会計実務に携わる方はもちろん、法律などの制度設計に携わる方にもおすすめです。