日本における経営理念の歴史的変遷―経営理念からパーパスまで

野林 晴彦

定価(紙 版):3,300円(税込)

発行日:2024/03/18
A5判 / 260頁
ISBN:978-4-502-48831-3

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本の紹介
前半で、経営理念という言葉の誕生から一般への普及までの歴史を確認し、後半で、3つの概念のうち「企業組織の経営理念」の現在までの歴史的変遷を振り返り概念を整理する。

目次

第Ⅰ部  経営理念という言葉の誕生から一般への普及まで
第1章 「理念」という言葉の誕生と普及:明治・大正時代
第1節 理念という言葉の誕生:ドイツ哲学の「イデー」の翻訳語として
第2節 理念という言葉の本来の意味
第3節 理念という言葉の普及:日本におけるドイツ哲学の受容と展開とともに
第4節 戦時体制下での「理念」という言葉の流行とその背景

第2章 「経営理念」という言葉の始まり:昭和初期~第二次世界大戦中
第1節 経営理念という言葉の誕生:最初の意味
第2節 経営理念の始まり:第二次世界大戦中
第3節 経営理念が経営書の「一章」に:中西勉(1943)『新訂 経営必携』

第3章 経営理念という言葉の普及と一般化:「新しい経営理念」ブーム
第1節 終戦直後の経営理念:川上嘉市『事業と經營』
第2節 経済同友会「経営者の社会的責任の自覚と実践」決議(1956年)
第3節 「企業の社会的責任」の理解と普及を促した日本生産性本部海外視察団
第4節 社会的責任論の一般への広まり:ドラッカー・ブーム
第5節 「同友会の利潤宣言」:1965年経済同友会「新しい経営理念」提言

第4章 実業界における「新しい経営理念」ブームの影響
第1節 「経営者の哲学,経営者理念としての経営理念」《概念2》への注目
第2節 「企業組織の経営理念」《概念3》制定の動き

第5章 「新しい経営理念」ブームへの学界の対応
第1節 「新しい経営理念」の重要性について言及する研究
第2節 日本の経営理念を確立するべきとする研究
第3節 それまで研究されてきたテーマを経営理念とする研究
第4節 経営理念の経営学上での位置づけを明確にしようとする研究

第6章 経済思想・経営思想としての経営理念《概念1》
第1節 家業維持の理念(江戸時代)
第2節 実業の思想(明治初期~中期)
第3節 経営ナショナリズム(明治初期~中期)
第4節 経営家族主義(明治末期~大正)
第5節 経済統制下における経営理念(戦時中)
第6節 新しい経営理念(1950・60年代)

第7章 経営者の哲学,経営者理念としての経営理念《概念2》
第1節 経営者個人の哲学・思想の源泉は何か
第2節 経営者の宗教的背景:儒教・仏教/キリスト教
第3節 経営者の過去体験

第8章 「新しい経営理念」ブームによる3つの経営理念概念
第1節 経営理念3つの概念
第2節 「経済思想・経営思想の経営理念」《概念1》の終焉とその理由
第3節 経営理念概念のパラダイム変換:経済同友会決議

第Ⅱ部 「企業組織の経営理念」《概念3》の歴史的変遷
第9章 経営理念の成文化と公表:経営理念機能論の台頭
第1節 社是社訓から経営理念へ:経営理念のテキスト化
第2節 経営理念「テキスト化」の理由とその機能
第3節 テキスト化によって生じた「経営理念機能論」
第4節 「企業組織の経営理念」2つの視座:「経営理念本質論」と「経営理念機能論」

第10章 経営理念の構造論:経営理念内容の継承・変更のパターン
第1節 経営理念の構造と名称
第2節 経営理念内容の継承・変更パターン
第3節 経営理念に影響を与える要因

第11章 「企業組織の経営理念」《概念3》がどのように変わっていったのか
第1節 1950年代~70年代「企業の社会的責任」概念の追加
第2節 1980年代~90年代「戦略概念の導入:戦略の上位概念としての経営理念」
第3節 1990年代~2010年代「ミッション・ビジョン・バリューの導入」
第4節 2000年代~2010年代「社会性(CSR・サステナビリティ)のさらなる強調」
第5節 2020年代以降「パーパス(存在意義)の導入」
第6節 経営理念への影響(要因と歴史的変遷)

第12章 企業組織の経営理念:トヨタ自動車の事例
第1節 創業期:豊田佐吉と豊田綱領の制定(1935年)
第2節 トヨタ基本理念の制定(1992年)と改定(1997年)
第3節 トヨタ行動指針の策定(1998年)と改定(2006年)
第4節 トヨタウェイ2001の制定(2001年)
第5節 CSR方針の制定(2005年)と改定(2008年)
第6節 トヨタグローバルビジョンの制定(2011年)
第7節 トヨタフィロソフィーの制定(2020年)
第8節 トヨタウェイ2020の制定(2021年)
第9節 サステナビリティ基本方針の制定(2021年)
第10節 「トヨタ自動車の広義の経営理念」のまとめ
第11節 トヨタ自動車の経営理念:歴史的変遷のまとめ
第12節 経営理念に影響を与える要因の相互関係性

第13章 「企業組織の経営理念」研究
第1節 1990年代までに多く研究されてきたテーマ
第2節 経営理念の浸透
第3節 新たな研究テーマ:経営人類学による経営理念研究

第14章 経営理念の概念整理:総括
第1節 日本における経営理念概念の歴史的変遷と概念整理
第2節 経営理念が広範であいまいな概念となった理由

著者紹介

野林 晴彦(のばやし はるひこ)
[プロフィール]
慶應義塾大学大学院修了(MBA),滋賀大学大学院修了(博士,経営学)
製薬会社で26年勤務の後,九州国際大学経済学部,北陸学院大学短期大学部勤務を経て2022年より金沢星稜大学経済学部経営学科教授
主な雑誌論文として「理念浸透における理念内容と浸透策,浸透度,成果:企業組織を対象としたマクロレベルの実証研究」(経営戦略研究,2015年),「日本における経営理念概念の変遷と機能変化」(経営哲学,2019年),「『経営理念』という言葉の原義に関する一考察:「理念」という言葉の誕生・普及から,『経営理念』の始まりまで」(経営倫理学会誌,2022年),「『表象としての経営理念』に関する理論的検討」(経営哲学,2023年)など