税制と経済学―その言説に根拠はあるのか

林 正義

定価(紙 版):2,860円(税込)

発行日:2024/07/29
A5判 / 208頁
ISBN:978-4-502-48911-2

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本の紹介
「高い労働所得税は勤労意欲を削ぐ」といった税制にかかわる一見もっともらしい言説が、根拠を持つものであるのかを、経済学的な研究をレビューしながら検討する。

目次

第1章 「年収の壁」と配偶者控除―配偶者控除は就業調整を引き起こすのか―
1.1 配偶者控除バッシング
1.2 既婚女性の年収分布
1.3 制度の確認
1.4 何が100万円での集群を発生させているのか
1.5 配偶者控除による就業調整の規模
1.6 結局,何が問題なのか

第2章 課税と労働供給―労働所得税は勤労意欲を削ぐのか―
2.1 税制と活力
2.2 税率と労働供給の反応
2.3 課税所得を用いた評価
2.4 最高税率引上げと税収
2.5 最高税率の上昇は高所得者の流出を招くのか
2.6 低所得者への課税と給付

第3章 課税と再分配―税は格差の縮小に貢献できるのか―
3.1 税制の再分配効果は減少しているのか
3.2 課税による再分配を阻むもの
3.3 資産の世代間伝達
3.4 資産関連課税

第4章 企業課税と経済活力―企業減税は経済成長を促進するのか―
4.1 企業税制と民間投資
4.2 譲渡所得課税と事業活動
4.3 相続税と事業承継

第5章 消費税と今後の税制―軽減税率は役に立っているのか―
5.1 消費税のしくみ
5.2 軽減税率(複数税率)を巡って
5.3 消費課税と所得課税
5.4 消費課税と社会保険料

終章 「きちんと考える」ということ

著者紹介

林 正義(はやし まさよし)
[プロフィール]
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。
青山学院大学国際政治経済学部卒業。クイーンズ大学(カナダ) Ph.D(経済学)。明治学院大学講師・助教授,財務省財務総合政策研究所総括主任研究官,一橋大学准教授,東京大学准教授等を経て2014年より現職。日本財政学会代表理事(会長相当職)(2020年10月~2023年10月),政府税制調査会特別委員(2013年6月~2023年6月),その他政府審議会・委員会委員や複数の学会役員等を歴任。現在は,財務省財務総合政策研究所特別研究官,日本学術振興会学術システム研究センター主任研究員(社会科学専門調査班)等を務める。

[主な著作]
『財政学をつかむ(第3版)』(共著,有斐閤,2024年)
『課税と給付の経済分析(フィナンシャルレピュー第151号)』(責任編集財務省財務総合政策研究所,2023年)
Public Finance in Japan: A virtual special issue of Japan and the World Economy(共編,Elsevier,2022年)
『地方債の経済分析』(共編,有斐閣, 2018年)
『公共経済学』(共著,有斐閣,2010年)
『生活保護の経済分析』(共著,東京大学出版会,2008年,第51回日経・経済図書文化賞受賞)