消費文化理論から見るブランドと社会

吉村 純一 編著

定価(紙 版):2,750円(税込)

発行日:2024/03/12
A5判 / 208頁
ISBN:978-4-502-49321-8

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本の紹介
その時々の消費パターンを読み込むことで消費者行動を分析する、消費文化理論を基に、企業のブランド戦略の実際などを事例に取り上げ、消費とマーケティングの関係を解明。

目次

プロローグ 消費文化理論がめざすところ
1 社会潮流を考えてみよう
2 消費パターンと快楽的消費という転換点
3 消費文化理論の4つの研究領域
4 カルチュラル・ブランディングとは何か?
5 本書を理解するためのキーワード
6 本書の構成

第1部 消費文化と消費者アイデンティティ

第1章 コミュニケーション資本主義における 消費パターン
1 消費文化理論が問いかけるもの
2 コミュニケーション資本主義
2.1 コミュニケーション資本主義の概念
2.2 コミュニケーション資本主義の特徴
2.3 個人化された「参加型」メディア
2.4 欲望から欲動への移行
2.5 相互受動性
3 〈GAFA〉と主体・生・自由
3.1 安全装置としての〈GAFA〉
3.2 基準の規律的発動
3.3 基準と規準
3.4 ライフスタイルの適正化
4 コミュニケーション資本主義に支配的な消費パターン

第2章 クリエイティブ・クラスと都市の市場文化
1 情報都市の市場文化
2 都市間競争と情報産業の重要性の高まり
2.1都市の内部編成と空間的競争
2.2 サービスの拡大と流通消費都市
2.3都市流通クラスターと情報産業
3 クリエイティブ・クラスと都市間競争
3.1クリエイティブ経済の都市比較
3.2クリエイティブ・クラスの移動と集積
4 都市の市場文化
4.1 市場文化
4.2ビジネスとプライベートの融合
4.3多様性・寛容性の市場文化
5 分析
5.1 分析の枠組み
5.2 ITスタートアップ・コミュニティの市場文化
6.情報都市の市場文化への対応

第3章  ノマド消費とブランド:MacBookとStarbucks
1 ノマドのアイデンティティを探る
2 ノマドはどう語られてきたのか
2.1ヨーロッパにおけるノマド論
2.2消費文化理論によるエリートノマドの調査
3 わが国におけるノマド現象
3.1 2010年代のノマド言説
3.2ノマド・オブジェとしてのMacBook
3.3 都市のサードプレイス、Starbucks
4 ノマドとの対話
4.1 調査設計
4.2 ノマドへのインタビュー
5 消費パターン・市場文化・消費者アイデンティティ

第2部 カルチュラル・ブランディングのケーススタディ

第4章 カルチュラル・ブランディングという新視角:ユニクロのブランド・イメージの変化
1 はじめに
2 カルチュラル・ブランディングという考え方
2.1 これまでのブランド・マネジメント研究の視点
2.2 新しいブランド研究の視点
2.3 カルチュラル・ブランディングとは
3.ユニクロブランドの事例
3.1 ブランド・イメージの変化
3.2 マネジリアルなブランド・マネジメントからの視角
3.3 カルチュラル・ブランディングからの視角
4.事例の構造
5.CCT研究としての貢献と限界

第5章 広告クリエイティブと炎上:資生堂INTEGRATE
1 ジェンダー表現と消費者の解釈戦略
1.1 繰り返されるジェンダー表現をめぐる炎上
1.2 ジェンダー表現をめぐる炎上分析の視角
2 広告表現におけるジェンダー
2.1 男性支配の再生産構造
2.2 広告に表されるジェンダー
3 ブランド戦略と物語
3.1 エモーショナル・ブランディングと物語
3.2 カルチュラル・ブランディングと物語
4 資生堂INTEGRATEの事例分析
4.1 物語導入以前 2015年版の解読
4.2 物語導入以降 2016年版の解読
5 カルチュラル・ブランディングの不在
5.1 時代の転換とジェンダー
5.2 テレビコマーシャルとカルチュラル・ブランディングの視点
6 インプリケーション

第6章 消費文化としての「処分」:メルカリ
1 「処分」の多様化
2 フリマアプリ市場の成長
2.1 メルカリの仕組み
2.2 メルカリの戦略
3 モノを処分する基準
3.1 断捨離
3.2 片づけの魔法(こんまり)
3.3 ミニマリスト
3.4 ミニマリストとメルカリ
4 「処分」がもたらすもの
4.1 シェアリングエコノミーの発展
4.2 煩悩(欲望)からの脱却
4.3 「賢い」消費ゲームの延長
4.4 モノが飽和した時代の私的消費
5 「処分」をめぐる今後の課題

第3部 消費文化視点によるマーケティング研究の新展開

第7章 CCTと多国籍企業の市場戦略
1 消費文化と多国籍企業
2.国際マーケティング論における文化の位置付け
3.文化構築主体としての多国籍企業
3.1 新たな文化理解の探求
3.2 構築主義に基づく文化概念
3.3 文化的意味をめぐる闘争
4.CCTからの照射
4.1 CCTの研究領域
4.2 グローバルな文脈における消費文化
5.多国籍企業研究におけるCCTの意義と今後の研究課題
5.1 多国籍企業の市場戦略におけるCCTの意義
5.2 今後の課題

第8章 インターネット時代の消費文化と消費者情報システム
1. インターネット時代のスマートな消費文化
2. 独占段階における情報流通の変化と消費者情報システムの自立化論
2.1 商業の社会性とマーケティングの私性の矛盾
2.2 独占段階における情報流通の変化
2.3 消費者情報システムの自立化論
3. インターネット時代の消費者理解と商業監視の進展
3.1 インターネットの発展と消費者参加
3.2 「他者性抜きの消費」のデフォルト化
3.3 消費環境の液状化と「選んでいる人」としての消費者
3.4 商業監視が形成する「消費のトレッドミル」
4. 公共的な消費者情報システムの可能性

エピローグ

著者紹介

吉村 純一(よしむら じゅんいち)
[プロフィール]
駒澤大学経済学部教授。福岡大学大学院博士後期満期退学、博士(商学)。熊本学園大学商学部教授、ロードアイランド大学経営学部客員研究員などを経て現職。専門はマーケティング論、流通経済論。近年は、消費文化理論や都市のマーケティングの研究を行っている。

[主な著作]
『消費文化理論から見るブランドと社会』(2024年、編著、中央経済社)
『流通経済の動態と理論展開』(2017年、共編著、同文館出版)
『インターネットは流通と社会をどう変えたか』(2016年、共編著、中央経済社)
『地域再生の流通研究: 商業集積間競争とまちづくりの視点』(2008年、共編著、中央経済社)

著者から
 私たちは高度に発達した情報社会の果実を利用できる日常生活を送っています。しかし他方で,格差社会の進行が誰の目にも明らかであるように,人々の暮らしは断片化し,多様化の度合いを増しています。
 消費文化理論は,現代社会に特有の消費のあり方を解明するための研究の枠組みです。消費とマーケティングの間のコミュニケーションを含む相互関係を視野に入れながら,断片化し多様化する消費者の実像に迫り,その時代に特有の消費パターンを明らかにします。急速に変化する時代のマーケティングを理解するためには,消費文化を総合的に解明することが必要になります。この困難な目標に向かって探究を続けているのが消費文化理論です。
 本書では,カルチュラル・ブランディングという手法を用いて,社会潮流に合わせて転換するブランド戦略の分析も多角的に展開しています。ブランドと消費文化の相互関係に光を当てることで,現代社会のリアリティに迫ります。