

公認会計士の力―わが国70有余年の監査制度の分析と展望
- 本の紹介
- 70有余年にわたる日本の公認会計士監査制度をめぐるさまざまな事象を回顧し、公認会計士が「会計正義」を追求できる唯一無二の存在であることをあらためて考える。
目次
第1章 公認会計士監査は「盲腸」?
〔英国・米国の初期職業会計士監査状況〕
1 わが国における公認会計士監査制度の導入
2 監査法人 信頼の危機─「しっかりしてよ 監査法人」
3 日本列島総不況
4 会計ビッグバン
5 公認会計士監査制度50年「総括」
第2章 連結会計─企業の透明性の向上とグループ力の強化─
1 連結財務諸表の導入
2 連結経営
3 連結キャッシュ・フロー計算書
第3章 税効果会計─銀行には朗報! が,りそな銀と足利銀─
1 税効果会計
2 税効果会計の問題点─“水膨れ”
3 監査の厳格化と日本公認会計士協会の対処
4 税効果会計に係る事件
第4章 「激震」会計基準─時価評価と減損─
1 販売用不動産の時価評価
2 有価証券の時価評価
3 固定資産の減損会計─政治からのプレッシャーを跳ね除ける
第5章 労働者諸君 注目せよ! 退職給付引当金
1 退職給付引当金
2 退職給付債務の積み立て不足
3 前倒し加速
4 退職給付会計義務化─ 積み立て不足が「直撃」
5 退職給付会計処理のバラツキ
6 経済状況に左右される年金財政
第6章 克服!“会計ビッグバン”─日本の「地力」─
1 “会計ビッグバン”の影響
2 特筆すべき事項
第7章 国際会計基準─欧 vs. 米 会計戦争─
1 国際会計基準前史
2 わが国の会計基準設定主体
3 EU,米国へ「会計戦争」を仕掛ける
4 国際会計基準に対する日本の姿勢─会計外交戦略の欠如
5 EU,国際会計基準スタート,そして「同等性評価」
6 米国と欧州との主導権争い─ 会計外交の行方 岐路に立つ日本
7 トヨタ,国際会計基準に移行
第8章 「対等合併」禁止と「のれん」の償却
1 持分プーリング法の人気と乱用,そして廃止
2 わが国における展開
3 議論再燃─のれんの定期償却
4 膨らむ「のれん」と日本基準の孤立
第9章 米国の「力」─ 監査風土の理解─
1 米国における1930年代~1970年代
2 コーエン委員会報告書(1978年)とSAS No.16
3 トレッドウェイ委員会報告書とSAS No.53(1988年)
4 POBの特別報告書とSAS No.82(1997年)
5 オマリー委員会報告書とSAS No.99(2002年)
6 「創造的な刺激物」の成果と公認会計士の社会的責任
第10章 “クローズアップ”─財務諸表の虚偽表示の発見─
1 わが国の監査の基準
2 国際監査基準
第11章 監査リスク・アプローチの本質
1 米国における監査リスク・アプローチの展開
2 監査リスク・アプローチの2つの機能
3 重要性概念と重要性の基準値の決定
4 監査リスク・アプローチによる監査報告書
5 ビジネス・リスク・アプローチと重要な虚偽表示
第12章 なに? 職業的懐疑心
1 米国における展開
2 わが国の監査の基準─「職業的懐疑心」が躍る!
3 職業的懐疑心は浸透しているか?
4 国際監査基準
5 「中立的な観点」から「推定上の疑義」へ,そして「完全な疑義」へ
第13章 監査現場が危ない!─なぜ不正を発見できないのか?─
1 監査人のミッションを忘れるな!
2 準備せよ!
3 仕訳の裏に存在する経済実態を把握せよ!
4 異常点や不規則性の発見に傾注せよ!
5 “バックテスト”を駆使せよ!
6 「誤謬」を軽視するな!
7 監査チームでの“ミーティング”を活発化せよ!
8 監査に対する姿勢が後ろ向きになっていないか!
9 納得のいく監査調書の作成を!
10 マネージャーは「監査現場のリーダー」であることを自覚せよ!
第14章 監査現場が危ない!─すべての責任はパートナーにある─
1 監査チームの編成は適切か?─ 顧客は見ている
2 監査業務がベルトコンベアー式の「単なる作業」に陥っていないか?
3 監査チームでの“ブレーン・ストーミング”に指揮を執れ!
4 監査チームの査閲(レビュー)機能をいっそう強化せよ!
5 パートナーは現場に出よ!
6 パートナーは社長面談に全力を尽くせ!
7 他のチームのパートナーと議論せよ! 協働せよ!
8 「公認会計士監査の限界」を過度に強調していないか?
9 パートナーは被監査会社に関するデータベースの構築に前向きに取り組め!
10 財務諸表の「その他」には何かが潜む─ブルータス,お前もか!
第15章 “ガラガラポン”ができなかった中央青山監査法人
1 中央青山の驕おごり
2 カネボウ粉飾事件
3 みすず監査法人スタート
4 みすず監査法人解散
第16章 東芝粉飾大事件─陽はまた昇る?─
1 第三者委員会調査報告書
2 粉飾決算─高度かつ巧妙な手口
3 新日本監査法人の監査の「失敗」と金融庁による処分
4 ウェスチングハウス社破綻
5 東芝の業績
第17章 「安全港」を解放せよ!─重要性の基準値─
1 第三者委員会調査報告書のウェスチングハウス案件
2 なぜ,167百万米ドル?
3 東芝に服する新日本監査法人
第18章 監査法人にとっての潜在リスク─監査人の異動─
1 なぜ,三菱重工業は監査人を変えたのか?
2 伝統を守ることとその危機─“監査人のローテーション”
- 担当編集者コメント
- 公認会計士は「会計正義」を追求する“プロフェッショナル” である
〇千代田先生の本書への想い
わが国の公認会計士監査制度は,多くの問題を抱えながらも,そして厳しい批判に晒されながらも,着実に前進している。先人に感謝しつつ,“カンサ”ということばの響きに惑わされることなく,豊かな感性をもった若者がこの業界に関心をもち世界で活躍してくれることを大いに期待している。
そんな思いを込めて,本書は,わが国公認会計士監査制度70有余年を分析し,今後の公認会計士監査制度の展望について考察する。(まえがきより)
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財務情報の開示が現代経済社会の骨格を形成していることから,特に上場会社や大会社の発表する財務諸表は信頼できるものでなければなりません。
そして,その信頼性を付与する “プロフェッショナル” として公認会計士と監査法人が存在し,国家は公認会計士と監査法人に対してのみ財務諸表に信頼性を付与する権限を与えています。
ですので,公認会計士や監査法人が頑張らなければ,誰が国民を,誰が国家を救うことができるのか,ということになります。
千代田先生のこうした想いを形にしたのが本書です。
中には厳しい指摘もありますが,それも公認会計士への期待の表れだと思います。
『闘う公認会計士―アメリカにおける150年の軌跡』はアメリカの軌跡を追った研究書ですが,本書はその日本版ともいえます。
すべての公認会計士,そして目指す受験生に読んでいただきたい書籍です!