

熊本学園大学付属産業経営研究所 研究叢書62/会計基礎概念の研究
- 本の紹介
- 会計基準を理解するには、なぜその方法が要求または容認されているのか、理由ないし根拠まで理解していることが必要である。本書はその基本的会計思考を考察する研究書。
目次
序 章 財務会計の基礎概念と会計基準の論点
Ⅰ はじめに
Ⅱ 現行会計制度における財務諸表
Ⅳ 小括―基礎概念の重要性
第1章 業績報告と利益観
Ⅰ はじめに
Ⅱ 利益観の分類
Ⅲ 収益費用利益観と資産負債利益観
Ⅳ 利益観の混乱
Ⅴ 会計目標
Ⅵ 利益の性格―「成果」対「結果」
Ⅶ 2つの意思決定有用性会計
Ⅷ 資本直入項目の出現
Ⅸ 利益計算と経営者の意図の排除
Ⅹ おわりに-損益計算書から業績報告書へ
Reflection
第2章 包括利益概念と利益観
Ⅰ はじめに
Ⅱ 資産負債利益観と収益費用利益観
Ⅲ 包括利益とその他の利益概念
Ⅳ 『その他の包括利益』の位置づけ
Ⅴ おわりに
Reflection
第3章 純利益と包括利益―日本版財務会計概念フレームワークによせて
Ⅰ はじめに
II 「討議資料」における純利益と包括利益
Ⅲ 「討議資料」における純利益と包括利益に関する論点
Ⅳ おわりに
Reflection
第4章 FASBによる収益費用利益観・資産負債利益観と損益法・財産法
Ⅰ はじめに
Ⅱ 資産負債利益観および収益費用利益観の意味
Ⅲ 損益法および財産法概念の意味
IV おわりに
Reflection
第5章 会計利益と課税所得に関する基本思考
Ⅰ はじめに
Ⅱ 会計利益に関する基本思考
Ⅲ 課税所得に関する基本思考
Ⅳ おわりに
Reflection
第6章 負債の時価評価と利益観
Ⅰ はじめに―分析視点
Ⅱ 利息法と利益観
Ⅲ 公正価値法と利益観
Ⅳ おわりに
Reflection
第7章 収益認識の基本的考え方―「実現」と「履行義務の充足」に関連して
Ⅰ はじめに
Ⅱ 収益認識に関する「実現」の考え方
Ⅲ 企業会計基準29号 における収益認識の基本原則と「義務の履行」
Ⅴ おわりに
Reflection
第8章 企業会計上の費用概念
Ⅰ はじめに―問題の所在
Ⅱ 費用・損失の定義と範囲
Ⅲ 費用の範囲に関する会計制度上の論点
Ⅳ 費用概念に関する会計理論上の論点
Ⅴ おわりに―費用概念の性質
Reflection
第9章 会計上の認識範囲の拡大―未履行契約を題材にして
Ⅰ はじめに
Ⅱ 会計上の認識の意味
Ⅲ リース会計における認識範囲の拡大
Ⅳ デリバティブ会計における認識範囲の拡大
Ⅴ 会計上の認識とゼロ認識
Ⅵ おわりに
Reflection
第10章 減価償却の方法
Ⅰ はじめに
Ⅱ 会計法規における減価償却とその方法
Ⅲ 時間を基準とする減価償却方法
Ⅳ 利用高を基準とする減価償却方法
Ⅴ 減価償却に類似する費用配分方法
Ⅵ 減価償却の適用単位―個別償却と総合償却
Ⅶ 特殊な資産の減価償却方法
Ⅷ 税務上の減価償却
Ⅸ 減価償却方法の選択
Ⅹ おわりに
Reflection
第11章 回収可能価額に基づく減損会計
Ⅰ はじめに
Ⅱ IAS第36号「資産の減損」の概要
Ⅲ FRS第11号の概要
Ⅳ おわりに
Reflection
第12章 負債の測定と割引現在価値計算の本質
Ⅰ はじめに―問題提起
Ⅱ 負債の測定属性の意味
Ⅲ 負債の測定属性の選択
Ⅳ おわりに
Reflection
第13章 少数株主持分の性格―会計主体との関連を中心にして
Ⅰ はじめに
Ⅱ 個別会計主体の諸概念
Ⅲ 連結会計主体の諸概念と個別会計主体
Ⅳ 連結会計主体と少数株主持分
Ⅴ おわりに
Reflection
第14章 企業結合会計における公正価値
Ⅰ はじめに
Ⅱ 部分時価評価法と全面時価評価法
Ⅲ 公正価値の意味
Ⅳ おわりに-日本の連結会計への含意
Reflection
- 担当編集者コメント
- 「なぜその方法で適正な期間損益の計算ができるのか?」、「その方法で企業の経済実態を適切に表示できる根拠はなにか?」を考察
会計基準を理解するためには、そこで定められた会計処理や表示の方法や開示される内容を知っているだけでは不十分です。つまり、現行の会計制度で要求される仕訳や計算ができるだけでは、会計基準を理解したことにはなりません。
会計基準を理解することは、なぜその方法が要求または容認されているのか、その理由ないし根拠までをも理解していることが必要です。つまり、会計基準の基礎にある考え方、基本的会計思考の理解が不可欠であり、それには基礎概念の的確な理解が必要なのです。
本書は、長年会計基礎概念に関する研究を積み重ねてこられた著者の佐藤信彦先生が過去に著書や雑誌に執筆した論考をそのまま収録して、最後に現時点での考察であるReflectionを付す構成により考察しています。
かなり以前の論文も掲載していますが、読むと不思議と古さを感じさせないと思います。
それは、基礎概念をめぐる論点と議論の奥深さをしめすものかもしれません。
研究者・大学院生はもちろんですが、実務家の方々にも会計基準を真に理解して、使いこなすためにぜひ読んでいただきたい内容です!