ニュートン力学で考える企業会計

田村 威文

定価(紙 版):5,060円(税込)

発行日:2025/07/01
A5判 / 216頁
ISBN:978-4-502-54241-1

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本の紹介
企業の会計行動・会計基準・会計制度などの会計事象は、これまでどう変化してきたか、現在どのような状況にあるか、今後どう変化する可能性があるかを力学的な手法で考察。

目次

序章 本書のあらまし
0.1 各章の概要
0.2 本書の特徴

第1部 力と運動
第1章 力学と企業会計

1.1 力学の基本概念
1.2 企業会計の力学的アプローチ

第2章 利益マネジメント(その1)
2.1 債務契約と利益マネジメント
2.2 会計的裁量行動と実体的裁量行動
2.3 利益マネジメントのコスト
2.4 利益増加型と利益減少型
2.5 利益平準化
2.6 会計規制と利益マネジメント

第3章 利益マネジメント(その2)
3.1 政治的干渉と利益マネジメント
3.2 利益マネジメントのタイミング
3.3 複数期間における利益マネジメント

第4章 会計制度と会計実務
4.1 制度と実務の関係
4.2 外的要因による変動(基本モデル)
4.3 外的要因による変動(応用モデル)
4.4 内的要因による変動(基本モデル)
4.5 内的要因による変動(応用モデル)

第5章 会計基準の改定と会計数値の変化
5.1 会計数値変化の構成要素
5.2 会計事象の数学的表現

第6章 会計と税務の関係
6.1 会計と税務の制度的な結びつき
6.2 逆基準性

第2部 剛体の力学と振動論
第7章 会計基準の調和化

7.1 調和化の概要
7.2 剛体の力学
7.3 力学的設定
7.4 会計的解釈

第8章 会計基準の時間に伴う変化
8.1 単振動
8.2 ばねでつながれた2物体
8.3 連成振動
8.4 減衰振動と過減衰

第9章 監査人と企業の関係
9.1 物体の質量
9.2 力の向き
9.3 力を加える位置
9.4 複数物体間の断面の角度

第3部 座標系と座標変換
第10章 会計の座標系と税務の座標系(その1)

10.1 会計と税務の座標系
10.2 税務の座標系の特徴
10.3 会計と税務に直面する企業の行動

第11章 会計の座標系と税務の座標系(その2)
11.1 直交座標と斜交座標
11.2 企業行動の表現
11.3 会計利益・課税所得の表現
11.4 「静的な理解」と「動的な理解」

第12章 静止座標系と移動座標系
12.1 座標変換のパターン
12.2 座標変換と会計基準
12.3 慣性力
12.4 税務の座標系の特徴

第4部 発展的内容
第13章 会計基準の改定で変わるものと変わらないもの

13.1 座標変換と幾何学的実体
13.2 保存量
13.3 基準改定と複式簿記
13.4 座標変換のインパクト

第14章 税務会計研究と数学的概念
14.1 多次元空間
14.2 双対関係

第15章 解析力学にもとづく税務会計の考察
15.1 ハミルトン形式の概要
15.2 会計モデル
15.3 税務モデル

著者紹介

田村 威文(たむら たけふみ)
[プロフィール]
1965年 兵庫県生まれ
1988年 大阪大学経済学部卒業
1991年 公認会計士登録
1993年 大阪大学大学院経済学研究科博士後期課程中退
同年 大阪国際大学経営情報学部助手
専任講師・助教授を経て
2002年 中央大学経済学部助教授
2004年 中央大学経済学部教授(現在に至る)

[主な著作]
『わが国における会計と税務の関係』(単著,清文社,2006年)
『ゲーム理論で考える企業会計-会計操作・会計規制・会計制度』(単著,中央経済社,2011年,日本会計研究学会太田・黒澤賞)
『イントロダクション財務会計』(共著,同文舘出版,1995年)(三訂版,2002年)
『イントロダクション国際会計』(共著,同文舘出版,2000年)
『会計学の手法-実証・分析・実験によるアプローチ』(共著,中央経済社,2015年)(第2版,2021年)
『税務会計研究ハンドブック-EBPMのための理論・実証分析序説』(共編著,同文舘出版,2024年)

担当編集者コメント
物理学としての「力学」の視点から会計事象の実態を解明する研究

〇本書のねらい

企業の会計行動・会計基準・会計制度などの会計事象は、これまで、どのように変化してきたのか。現在、会計事象はどのような状況になっているのか。今後、会計事象はどのように変化する可能性があるのか。このように、会計事象の実態を解明することは、会計研究の主たる課題です。本書は、物体の動きをニュートン(Isaac Newton、1642~1727、英国の科学者)の運動3法則にもとづいて考察するという力学的な手法を用いて、会計事象の状態およびその変化について考察しています。

〇本書の特徴
① 本書は「まず力学の議論を行い、その後で、会計事象を力学に照らして解釈する」という流れで記述しています。力学の議論においては、簡単なモデルを設定し、それを用いて力学上の論点の説明を行っています 。
② 本書は理解を容易にするため、図を多用しています。
③ 第3部では「座標系」「座標変換」という点に注目して議論を行っています。座標系は、物体の状態や動きをどのように表現するかということを決めるものであり、力学において重視される概念です。
④ 本書では企業会計の分野として、財務会計・税務会計・監査の内容を扱っています。なかでも、税務会計を多くの章でとりあげています。
⑤ 本書は通読するのではなく、関心がある章、あるいは読みやすそうな章だけを読んでいただければ幸いです。

経済社会の営みである企業会計と自然科学に属する力学の関係性を考察することで、会計学研究のフロンティアに挑んだ意欲作です。
会計に興味・関心のある方のみならず、理系の皆様にも物理学からみた会計の面白さをぜひ実感してください!